最終更新日:2024.1.16
朝起きた時に「ぐっすり眠れた」と熟眠感を得られていますか?睡眠時間が足りない、睡眠の質が低下していると感じている人は、糖尿病に注意が必要かもしれません。
一見、何の関係もないように思える「糖尿病」と「睡眠不足」。しかし、実は深い関わりがあることが分かっています。
今回は、日本の国民病ともいわれている「糖尿病」の発症原因である高血糖と、睡眠の関係性について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
糖尿病は、血液中の糖の濃度を一定範囲内におさめる、インスリンというホルモンの一種が十分に働かなくなることで発症する病気です。インスリンが働かなくなると、血液中に糖が溢れ、血糖値が高い状態(高血糖)が続くことになります。
高血糖が続くと、体内のさまざまな部分で代謝異常や血管の異常などが起こり、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全、網膜症、神経障害といった合併症を引き起こします(※1)。
糖尿病が発症する原因には遺伝的要因と環境的要因があり、特に環境的な要因が発症リスクを高めるのが「2型糖尿病」です。2型糖尿病の患者は年々増加し、日本ではその疑いがある人は成人の6人に1人、約1870万人にのぼっています(※2)。
2型糖尿病のおもな発症原因は、偏った食生活や運動不足、肥満、そして不眠をはじめとした睡眠障害です。
※1:葛谷健, et al. "糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告." 糖尿病 42.5 (1999): 385-404.
糖尿病になりやすい人の特徴
それでは、不眠をはじめとした睡眠障害と糖尿病の関連性について、具体的な例を見ていきましょう。まずは、睡眠障害の一つである「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と糖尿病の関係についてです。
国際糖尿病連合は、睡眠時無呼吸症候群が糖尿病の発症リスクになることを示しています。
日本での調査では、4398人の中高年者(40~69歳)を対象にした平均3年間の追跡調査によって、睡眠時無呼吸症候群の患者はそうでなかった群の1.69倍の糖尿病発症リスクであったことが報告されました(※1)。
また、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒などの不眠症状がある人は、ない人に比べて糖尿病の発症リスクが高いことが明らかになっています。症状別に見ると、入眠困難型で1.5倍、中途覚醒・早朝覚醒で2倍発症率が高いことが示されました(※2)。
逆に、糖尿病によって睡眠障害が引き起こされる場合も少なくありません。2型糖尿病患者309人を対象にアンケート調査を実施したところ、53%が何らかの睡眠障害を抱えているという結果が出ました(※3)。
その一方で、睡眠時間を6週間にわたり毎日1時間増やすことや、週末の連続3晩にわたって10時間睡眠を確保することで、糖代謝が改善すると考えられています(※4)。
※1:山本直宗, 大塚邦明, and 金光宇. "不眠と糖尿病." ファルマシア 47.7 (2011): 631-635.
※2:三島和夫. "生活習慣病の治療と予防における睡眠医療のあり方." 医学のあゆみ 236.1 (2011): 5-10.
※3:赤尾綾子, et al. "2型糖尿病患者の睡眠・排尿・末梢神経障害に関する実態調査—アンケート調査により浮かび上がった特徴—." 糖尿病 51.11 (2008): 1025-1030.
※4:後藤伸子. "糖代謝における睡眠の重要性." 慶應保健研究 37.1 (2019): 023-028.
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糖尿病の発症に関係する血糖値は、食事によって摂取した糖質が消化・吸収されてブドウ糖になり、血液中に取り込まれることで上昇します。血糖値が上がると、膵臓がインスリンを分泌。インスリンの働きによって血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれて、エネルギーとして利用されます。
インスリンが分泌されていても、その働きが悪い(効きが悪い)ことを「インスリン抵抗性」と呼びます。
インスリン抵抗性は、健康な人がたった一晩だけ睡眠時間を8時間から4時間に短縮するだけで引き起こされることが分かっています。2週間にわたって睡眠時間を8.5時間から5.5時間に減らした場合も、同様にインスリン抵抗性が惹起されました(※1)。
血糖値を正常な範囲内に保つためのブドウ糖の処理能力のことを「耐糖能」と言いますが、寝不足や浅い睡眠などの不眠や、睡眠時無呼吸症候群をはじめとした睡眠障害によって耐糖能が悪化することが、様々な研究によって明らかにされています(※2)。
血糖値を上げるのは、睡眠時間の不足だけではありません。
たとえ睡眠時間は確保していても、睡眠の質が低下して深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が減少して浅い眠りであるレム睡眠が増えると、急性に耐糖能機能とインスリン感受性が低下するという指摘もあります(※3)。
糖尿病発症の可能性を下げるためにも、血糖値を正常な範囲内におさめることが大切です。そのためには、睡眠時間の確保や睡眠の質の向上は重要な因子であると言えるでしょう。
※1,2:後藤伸子. "糖代謝における睡眠の重要性." 慶應保健研究 37.1 (2019): 023-028.
※3:刑部彰一, et al. "VI. 糖尿病における睡眠障害の臨床." 日本内科学会雑誌 110.4 (2021): 753-760.
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今回は、睡眠時間や睡眠の質が、血糖値の上昇や糖尿病の発症リスクに影響を与えることをお伝えしました。
短時間睡眠や質が悪い眠りは、糖尿病だけでなくうつ病や高血圧、免疫力低下、慢性疲労など様々な悪影響を及ぼします。
睡眠不足や夜中に目が覚めることが多いなど、眠りの質が悪くなったと感じている人は、生活習慣を見直し睡眠に良い食べ物を積極的に摂ることをおすすめします。