最終更新日:2023.12.18
「寝不足だと太りやすくなる」そんな話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。また、睡眠不足が続くと異様に食欲が増して、ラーメンやハンバーガー、スナック菓子などを食べ過ぎてしまうことがありませんか?
質問サイトでも、睡眠不足と肥満の関係に関する疑問が数多く寄せられています。
「睡眠不足は太りやすい!」って、友達に言われたのですが本当ですか?
※Yahoo!知恵袋より一部引用
私自身も、12月は忙しく眠れない日が続き少し太ったような気がしたので本当なのか知りたいです。
ウワサもしくは都市伝説? 寝不足の人は太るって本当ですか???
※Yahoo!知恵袋より一部引用
十分に睡眠を取らないとダイエットには良くないって聞いたことあるんですが、なんだか腑に落ちません…。寝不足だとカロリー使うから、痩せそうな気がするんですけど。
今回は睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、睡眠不足と肥満の関係についてお伝えしたいと思います。
ダイエットにも役立つ情報ですので、体型管理をしたいと思っている人はぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
睡眠不足になると、本当に太るのでしょうか?そんな疑問の答えとなりそうな調査結果をご紹介します。
まずは、アメリカのコロンビア大学の研究チームによる報告です。約1万8000人を対象に行った調査によると、平均睡眠時間が4時間以下の人は7時間の人に比べて73%、5時間の人は50%、6時間の人は23%肥満になる確率が高くなることが分かりました。
睡眠不足によって太るのは、大人だけではありません。小学4年生を対象に睡眠時間と肥満の関係性を調べたところ、肥満でない子どものグループのうち睡眠時間が9時間未満の子が28.0%だったのに対して、肥満の子どものグループでは34.9%が9時間未満しか睡眠をとっていませんでした(※1)。
米国睡眠医学会が推奨する6歳~12歳の睡眠時間は9~12時間であるため、9時間未満しか眠ってない子どもは睡眠不足の状態であると言えるでしょう。
これらの例を見ても、睡眠時間が短いことと太ることには深い関係性があることがうかがえます。
なぜ寝不足だと太るのか、次はそのメカニズムについてお伝えしたいと思います。
※1:落合裕隆, et al. "ライフスタイルと小児肥満." 昭和医学会雑誌 70.6 (2010): 452-457.
睡眠不足で太る理由の一つとして考えられるのが、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れることによるものです。
食欲に関連するホルモンには、食欲抑制作用がある「レプチン」と、食欲増加作用がある「グレリン」があります。睡眠時間が不足すると、レプチンの分泌量は減少。逆に、グレリンの分泌量は多くなります。すると食欲が増してエネルギー摂取量が増加し、太りやすくなるのです。
しかも、睡眠不足によってグレリンの分泌量が増加した場合、高脂質・高カロリーな食べ物への欲求が高まると言われています。それを証明するかのような調査結果をご紹介します。
また、睡眠不足になると副腎皮質ホルモン「コルチゾール」も分泌過剰に。コルチゾールは「抗ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレスを感じた際に分泌されてストレスから身体を守ったり、脂肪を分解したり、炎症を抑制するなどの重要な役割を果たしています。
しかし、コルチゾールが過剰分泌されると、食欲が異様に増加したり、肩甲骨回りや鎖骨上部などに脂肪がつきやすくなったり、皮膚の色素沈着などの症状を引き起こす「クッシング症候群」にかかる可能性が高くなります。
コルチゾールの過剰分泌は、成長ホルモンの分泌低下を引き起こす原因にも。成長ホルモンの分泌量が減ると、脂肪の分解能力が低下して体脂肪をため込みやすくなることが分かっています(※1)。
さらに、睡眠不足によって腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう/腸内フローラ)を適切な状態にコンロトールしている抗菌ペプチド「αディフェンシン」の分泌量が低下して腸内細菌叢が破綻し、短鎖脂肪酸を減少させることが、北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則教授らのグループによって解明されました(※2)。
短鎖脂肪酸には、肝臓や筋肉で代謝されてエネルギー源となったり、コレステロール合成を抑制したり、カルシウムや鉄分などのミネラル分の吸収を促進するなどの作用があります(※3)。また、エネルギーバランスを一定に保つ役割があり、食べすぎなどによってエネルギーが過剰になった場合にはエネルギー消費を高めて肥満を抑制します(※4)。
そのため、短鎖脂肪酸が減少すると太りやすくなると考えられるでしょう。
※1:柳瀬敏彦, 野見山崇, and 田邉真紀人. "1. 内分泌疾患に続発する肥満症." 日本内科学会雑誌 104.4 (2015): 690-696.
※2:中村公則, 菊池摩仁, and 綾部時芳. "抗菌ペプチド α ディフェンシンによる腸内細菌叢の制御." 腸内細菌学雑誌 33.3 (2019): 129-135.
※3:原博. "プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果." 腸内細菌学雑誌 16.1 (2002): 35-42.
※4:木村郁夫, 畑野泰子, and 長谷川沙恵. "食事由来腸内細菌代謝産物, 短鎖脂肪酸と宿主代謝制御." 脂質栄養学 24.1 (2015): 33-40.
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
今回は、睡眠不足と肥満の関係についてお伝えしました。
睡眠時間が短いと太りやすくなるのは、ホルモンバランスの崩れやの腸内環境の乱れなど、様々な要因が絡み合った結果と言えそうです。
肥満は睡眠障害の一つである「睡眠時無呼吸症候群」の発症要因であり、睡眠時無呼吸症候群になることで睡眠の質が低下して太りやすくなるという悪循環に陥ります。
睡眠時足が短い、睡眠の質が低下していると感じていて、体重の増加が気になっている人は、睡眠の質を上げる生活習慣を実践してみませんか。
質が高い睡眠をとる方法は、下記の記事で詳しくご紹介しています。今日からでもすぐに始められる方法ばかりですので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
睡眠の質を上げる方法|朝までぐっすり寝るための生活習慣 >>詳しく見る