最終更新日:2023.09.08
寝室を共にしているパートナーや家族、あるいは一緒に旅行した友人などから、いびきを指摘されたことはありませんか?もしかすると、自分のいびきがうるさくて夜中に目を覚ましたことがある人もいるかもしれません。
もしくは、パートナーのいびきのせいで安眠できず、ストレス感じている人もいるのではないでしょうか。
いびきは決して珍しいものではありません。しかし、いびきの陰には命に関わる重篤な病気のサインが隠れている場合があります。
今回は、いびきの原因やいびきをかきやすい人の特徴、即効でいびきを改善できる方法などを、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながらお届けしたいと思います。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
そもそも「いびき」とは何でしょうか?いびきをかくメカニズムについて解説します。
仰向けで寝ると、睡眠中の筋弛緩で舌や軟口蓋が喉へと沈みこみ、上気道の一部が狭まった状態になります。その状態で呼吸をすると、舌の根元の部分で振動するような音や狭窄音が発生。その音こそが、いびきの正体なのです(※1)。
いびきには、飲酒や疲労で口呼吸が多くなったことが原因で生じる一時性のものと、毎晩のように起こる習慣性のものがあり、習慣性のいびきは様々な病気との関連性が疑われます(※2)。
日本人の習慣性いびきの有病率は男性人口の21%、女性人口の6.1%で、1600万人程度と推定されています(※3)。
※1,2:原浩貴. "いびきと睡眠時無呼吸症候群―いびきの周波数解析の臨床的意義―." 山口医学 53.6 (2004): 265-267.
※3:池松亮子. "耳鼻咽喉科におけるいびきカウンセリングの必要性." 耳鼻と臨床 49.4Supplement2 (2003): S103-S107.
習慣性のいびきでまず疑われるのは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
眠っている間に、10秒以上続く無呼吸(低呼吸)が1時間あたり5回以上、7時間の睡眠中に30回以上発生する場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます(※1)。
睡眠時無呼吸症候群には大きく分けて2タイプあり、1つは脳の呼吸中枢が異常を起こして発生する中枢型。もう1つは喉の奥が閉じて発生する閉塞型で、患者の多くは閉塞型です(※2)。
睡眠時無呼吸症候群は自分では気付きにくい病気で、寝室を共にするパートナーや家族に指摘されて判明する場合が少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群の発症率をみると、アメリカでは成人男性の4%、成人女性の2%が罹患していると言われています。一方、日本での発症率は人口の2%程度です。
睡眠時無呼吸症候群の発症には肥満が深く関係していると言われていますが、日本はアメリカのように重度な肥満の人はそれほど多くありません。
それにもかかわらず、発症率が特に低いわけではない理由は、日本人は下あごが小さく後退している傾向が強いこと、軽度の肥満でも高血圧や糖尿病を発症しやすいことが関連していると考えられています(※3)。
※1,2,3:芳川洋. "睡眠時無呼吸症候群て何?." 順天堂医学 53.2 (2007): 269-271.
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いびきをかきやすい人には、共通した特徴があります。それは、睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴とも共通しています。習慣的にいびきをかく人は、睡眠時無呼吸症候群の予備軍であるとも言えるでしょう。
肥満は、いびきの大きな要因です。首の周りに脂肪がつくことで気道が狭まり、いびきをかきやすくなります。
下あごが小さく後退している人は、仰向けで寝た時に舌の根元が喉の奥に下がりやすくなります。そのため、いびきをかきやすくなるのです。
アレルギー性鼻炎の人は鼻呼吸がしにくく、口呼吸になりがちです。口呼吸になると気道が狭くなっていびきをかく原因になります。
閉経後の女性は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の重症度が増すことが分かっています。その理由として考えられるのが、呼吸中枢への刺激作用や上気道筋肉を開く作用がある女性ホルモン「プロゲステロン」の減少です(※1)。
加齢により、気道は狭くなります。また、舌や口回りの筋力が低下するため、喉の奥へ舌が落ちやすくなっていびきをかきやすくなります。
甲状腺機能が低下していると、舌や気道にむくみが生じていびきをかきやすくなります。甲状腺機能低下症の合併症として、睡眠時無呼吸症候群が引き起こされる場合も少なくありません。
アルコールには筋弛緩作用があるため、舌によって気道をふさがれる可能性が上昇。また、口呼吸になりやすくなるため、いびきをかきやすくなります。
スウェーデンで30歳~69歳の男性3201人を対象に10年間の追跡調査を行い、10年後に生存していた2975人に対して睡眠障害に関するアンケートをした結果、60歳未満の男性のいびきには喫煙が主に関係していることが明らかになりました(※2)。
※1:古川智一, and 須藤信行. "イビキ・閉塞性睡眠時無呼吸による健康障害について." (2012): 1-11.
いびきをかくのは、大人だけではありません。子どもでも、いびきをかくことがあります。子どものいびきの場合、主な原因として考えられるのは、口蓋扁桃肥大やアデノイド肥大、鼻茸、鼻アレルギー、高度肥満などの鼻呼吸障害や上気道狭窄を引き起こす疾患によるものです(※1)。
子どものいびきが増える年齢は、扁桃が肥大する時期と同じ4~6歳頃。いびきだけでなく、寝汗の量が増えたり、朝起きられなかったり、夜中に何度も目覚める、昼寝の時間が長くなる、夜尿症といった症状もみられます(※2)。
子どものいびきは、手術によってアデノイド切除や口蓋扁桃摘出することで、高い治療効果が期待できます(※3)。
※1,2,3:宮崎総一郎, et al. "小児の睡眠呼吸障害: いびき, 無呼吸." 口腔・咽頭科 17.2 (2005): 169-176.
いびきを習慣的にかく人は、何らかの睡眠呼吸障害を発症している可能性があります。また、睡眠呼吸障害によって低酸素や無酸素のストレスがかかることで心拍数が増え、血圧が上昇。毎晩のように血圧上昇が起こることで、身体機能に様々な悪影響が表れるのです(※1)。
睡眠時無呼吸症候群の人は、寝ている途中で何度も目が覚めたり、トイレに立つ回数が多くなったり、目覚めた時に頭痛があります。中等以上の患者になると、一晩のうちに何度も無呼吸と覚醒を繰り返すため、さらに眠りが浅くなって日中に過度な眠気を感じやすくなるのです。また、重篤化すると心筋梗塞や脳梗塞を併発する危険性も低くはありません(※2)。
※1:芳川洋. "睡眠時無呼吸症候群て何?." 順天堂医学 53.2 (2007): 269-271.
いびきは、眠りの質を悪くして健康に悪影響を与えるだけでなく、同じ部屋で寝る人の安眠を妨げてしまう可能性も。次は、いびきを即効で治すための改善方法をご紹介します。いびきが気になっている人、パートナーのいびきが気になっている人は、ぜひ実践してみてくださいね。
いびきの改善方法
※:池松亮子. "耳鼻咽喉科におけるいびきカウンセリングの必要性." 耳鼻と臨床 49.4Supplement2 (2003): S103-S107.
即効で改善できるものではないもの、いびきを治す方法として
といった方法も有効です。
特に、肥満はいびきだけでなく様々な生活習慣病を引き起こす大きな要因です。健康に影響を及ぼしているようであれば、ダイエットすることも考えてみましょう。
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今回は、いびきの原因やいびきをかきやすい人の特徴や改善策などをお伝えしました。
いびきは睡眠の質を低下させる大きな原因です。良質な眠りを得るためにも、ご紹介した改善法を実践してみてくださいね。
いびきが習慣化していて、今回ご紹介した改善策を実践しても治らない場合は、何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。心配な人は、早めに医療機関を受診しましょう。