夜中に目が覚める「中途覚醒」の原因と治し方を解説

最終更新日:2023.10.31

夜中に目が覚める「中途覚醒」の原因と治し方を解説

朝まで一度も目覚めずに熟睡できる夜が、週に何回ありますか?

不眠症状の中でも特に多いのが、夜中に寝ている途中で目覚めてしまう「中途覚醒」です。中途覚醒があると、いくら睡眠時間を長くとっても疲れがとれなかったり、日中に強い眠気を感じたりします。

今回は、中途覚醒の原因と治し方、健康への影響について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながらお伝えします。

「夜中に何度も目が覚める」「眠りが浅くて熟睡感を得られない」「目覚めがスッキリしない」という人は、満足感が高い睡眠を得るためにも参考にしてくださいね。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

この記事の執筆者

睡眠栄養指導士

小田 健史

健康食品の開発や販促に12年以上携わる中で、ストレスや不安感から睡眠不足に悩まされ続けた自身の睡眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士 中級」の資格を取得。
自らの知識と経験を基に機能性表示食品「睡眠体験」を開発するとともに、多くの悩める方々へ睡眠栄養指導士として睡眠の改善に関する情報を随時発信中!

<資格>
一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
 睡眠栄養指導士® 中級
 パーソナル睡眠アドバイザー®
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
 健康管理士 一般指導員

「中途覚醒」とは一体どのような状態?

「中途覚醒」は不眠症の症状の一つで、

・眠りが浅く睡眠の途中で何度も目が覚める

・一度目が覚めるとなかなか寝付けず、寝付けても眠りが浅い

のが特徴です。

不眠症の症状には、ほかに「入眠障害」(寝つきが悪い)、「早朝覚醒」(早朝に目が覚めて二度寝ができない)、「熟眠障害」(眠りが浅く、熟睡感が得られない)がありますが、特に多いのが中途覚醒です。その事実は「令和3年度 健康実態調査結果の報告」からも分かります。

睡眠時間のとれている度合い

また、質問サイトにも中途覚醒に悩む人からの相談が数多く寄せられていました。

一週間ほど前から中途覚醒が続いてます。

寝てから3時間弱で起きてしまい、少し時間を開けてもう一度寝る感じです。

※Yahoo!知恵袋より一部引用

最近中途覚醒をしてしまうのですが原因ってなんですか?

眠りについてから2.3時間後に1回起き、そこから2時間毎に目が覚めたりします。

※Yahoo!知恵袋より一部引用

夜中に目が覚めることは誰にでもありますが、週に3回以上寝ている途中に覚醒したり、日中に異常な眠気を感じるなど不調を感じたりするようであれば、中途覚醒による不眠症が慢性化している可能性が高いかもしれません。

中途覚醒はなぜ起こる?夜中に目が覚める原因

中途覚醒はなぜ起こる?夜中に目が覚める原因

中途覚醒が起こる原因には色々ありますが、特に大きな要因となるのがストレスです。

その理由は、ストレスがたまることで「セロトニン」というホルモンが不足することにあります。

私たちの身体は、自律神経によって自分の意思とは関係なくさまざまな機能が調整されています。自律神経には、日中の活動的な時に働く「交感神経」と、夕方からのリラックスした時間に働き始める「副交感神経」があります。この交感神経と副交感神経がスムーズに切り替わるように手助けをするのが、セロトニンなのです。

セロトニンが不足すると、夜になっても交感神経が優位な興奮状態が続くため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって寝ている途中で目覚めたりします。また、セロトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の原料でもありますが、セロトニンが不足しているとメラトニンの分泌量も減って熟睡できなくなるのです。

セロトニンを増やし、睡眠の質を高める方法とは? >>詳しく見る

ストレスによって中途覚醒が起こる原因は、セロトニン不足だけではありません。それは“ストレスホルモン”とも呼ばれる「コルチゾール」の過剰分泌です。

コルチゾールは血糖値や血圧の調整、代謝促進などに作用し、睡眠時には分泌が抑制され、目覚める直前に多く分泌されます。しかしストレスがたまっていると、睡眠中もコルチゾールの分泌が止まらず、身体は常にストレスと戦っている状態で休まる暇がありません。

コルチゾールの過剰分泌によって睡眠不足が続くだけでなく、慢性化すると脳の海馬が委縮する恐れも。海馬が委縮すると、物忘れが激しくなったり、うつ状態になったりといった症状が表れます。

ストレス以外に中途覚醒を起こさせる原因

ストレス以外に中途覚醒を起こさせる原因

加齢

加齢とともに就寝時間が早くなり、睡眠のリズムが乱れる傾向に。昼寝が長くなったり、運動不足が続いたりすると眠りが浅くなります。カナダのトロント大学などの研究により、中途覚醒の平均時間は年齢が10歳上がるごとに9.7分増加し、20代で30分前後、40代で50分前後、60代で70分前後となることが分かりました(※1)。

また、加齢による頻尿も夜中に目が覚める原因の1つです。寝ている途中でトイレのために目が覚める「夜間頻尿」は40代の人の約4割、50代で約6割、70代以上では約9割の人に発生し、加齢とともに割合が高くなります。さらに60代男性の約4割、女性の約3割、70代男性の約6割、女性の約5割、80歳以上では男性の約8割、女性の約7割が夜中に2回以上排尿のために目が覚めていることが分かりました(※2)。

生活リズムの乱れ

20代、30代といった若い場合も起床時間がまちまちで朝日を浴びない、食事の時間がバラバラなど、不規則な生活を続けるとセロトニンの分泌量が低下し中途覚醒を引き起こす原因となります。

就寝前の喫煙(ニコチン摂取)

タバコによるニコチンの摂取によって睡眠効果が低下することや、不眠症の症状が表れることが研究で明らかになっています(※3)。

寝る前のお酒

アルコールを摂取すると寝つきが良くなりますが、毎晩飲み続けていると耐性がついて寝つきが悪くなり、眠りが浅くなって目覚めも悪くなります。悪夢を見ることが多くなり、中途覚醒が増えます(※4)。

睡眠時無呼吸症候群

寝ている間に無呼吸になることで睡眠が浅くなったり、何度も目が覚めて睡眠時間が断続的になったりします。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

脚にムズムズとした感覚や虫が這うような感覚が出現し、「脚を動かしたい」という感覚に襲われます。夕方から夜間にかけて悪化することが多いため、寝つきが悪くなるだけでなく、眠れたとしても浅い睡眠となります。

睡眠環境が悪い

睡眠をとる部屋が暑すぎる・寒すぎる、湿度が高すぎる・乾燥しているなど睡眠に適していない環境で寝ると、中途覚醒しやすくなります。また、明るすぎる部屋や外からの音が聞こえやすい部屋も睡眠には適していません。

※1 出典:Mark I Boulos, Trevor Jairam, Tetyana Kendzerska, James Im, Anastasia Mekhael, Brian J Murray. Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis April 2019 The Lancet Respiratory Medicine.

※2 出典:本間之夫, 柿崎秀宏, 後藤百万, 武井実根雄, 山西友典, 林邦彦, 排尿に関する疫学的研究 日本排尿機能学会誌 14 (2), 266-277, 2003

※3 出典:Jaehne A, Loessl B, Bárkai Z, Riemann D, Hornyak M. Effects of nicotine on sleep during consumption, withdrawal and replacement therapy. Sleep Med Rev. 2009 Oct;13(5):363-77. doi: 10.1016/j.smrv.2008.12.003. Epub 2009 Apr 2. PMID: 19345124.

※4 出典:アルコール依存症に関連する睡眠障害/精神経誌 (2010) 112巻8号

不規則になりがちな毎日でも、睡眠の質を高めて深い眠りにつく方法 >>詳しく見る

中途覚醒の治し方

中途覚醒の治し方

睡眠の質を低下させる中途覚醒を治すために、効果が期待できる5つの方法をご紹介します。

起床・就寝の時間を一定にする。可能なら、朝食・昼食・夕食の時間も同じ時間に

規則正しい生活を送ることで、セロトニンの分泌量が増加して良質な眠りをもたらします。

睡眠時間の長さにこだわらない

寝る時に「今日は〇時間、必ず寝よう」と決めてしまうと、それがプレッシャーとなり入眠しにくくなります。大切なのは、長さよりも質だということを忘れずに。

寝床ではスマホを見ない・触らない

スマートフォンの画面から発せられるブルーライトは、脳に「今は日中だ」と勘違いさせてメラトニンの分泌を止めてしまいます。また、スマホから得た情報によって脳が興奮し、寝つきを悪くする原因に。就寝の2時間前を目安に、スマホから離れましょう。

ストレスを解消する

ストレスの蓄積と睡眠不足の悪循環を断つために、まずはストレス解消を。一定のスピードで歩くウオーキングは、セロトニンの分泌を促すのでおすすめです。また、リラックス効果が高いラベンダーなどのアロマオイルを焚くのも良いでしょう。

夜中のトイレの回数を増やさないようにする

脱水症状にならないために水分補給は重要ですが、寝る前に多く摂りすぎないようにしましょう。特に夜間のアルコールやカフェインの摂取は睡眠の質を低下させるだけでなく、利尿作用により寝ている途中で目が覚める原因となります。また、起きているうちに下半身に溜まった水分を排出するため、夕方以降に散歩などの軽い運動を行ったり、クッションなどで足を高くした状態で横になるのも効果的とされています。

腸内環境を整える

腸内環境を改善することで、ストレス負荷による不安や抑うつ症状が緩和されることが研究によって明らかにされています(※)。

※出典:精神的ストレスによる腸管上皮の糖鎖パターンの変化 「脳・腸・腸内細菌相関」のメカニズムの解明に向けて/化学と生物 Vol.57, No.8, 2019

睡眠で大切なのは長さよりも“質”

睡眠で大切なのは長さよりも“質”

ここまで、夜中に寝ている途中で目が覚める中途覚醒の原因と健康への悪影響、治し方について解説してきました。

たとえ長時間時間眠った(寝床にいた)としても、中途覚醒を繰り返していると睡眠による効果はあまり得られません。逆に睡眠時間自体は短かったとしても、その中で脳を休ませて成長ホルモンを分泌する「ノンレム睡眠」と、身体を休ませて脳は活動する「レム睡眠」が規則正しく交互に繰り返されていれば、質が高い睡眠となるのです。

夜中に何度も目が覚めると、深いノンレム睡眠の量が減り浅いノンレム睡眠が増えることで熟睡感が得られなかったり、十分な疲労回復ができなかったりします。生活習慣病につながる可能性もあるため、中途覚醒が多い場合は医療機関への相談をおすすめします。

中途覚醒で悩んでいる人は、今回ご紹介した治す方法を試して、朝までぐっすり眠れる日を増やしてくださいね。

睡眠の質を高め、深いノンレム睡眠をしっかりとる方法 >>詳しく見る

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