朝早く目が覚める「早朝覚醒」の原因と治し方

最終更新日:2023.08.10

朝早く目が覚める「早朝覚醒」の原因と治し方

「目覚ましをセットした時間よりも2時間以上早く起きてしまう」「朝方目が覚めて、二度寝できない」。それは、もしかしたら「早朝覚醒」かもしれません。

早朝覚醒は不眠症の症状の一つ。起きようと思っている時間よりも早く目覚める日が続くと、睡眠不足で疲れがとれなかったり、日中に強い眠気を感じることが増えたりして、仕事効率の低下や生活の質の低下を招く可能性も…。

今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、早朝覚醒の原因や治し方を解説したいと思います。

朝早く目覚めすぎて睡眠に満足感が得られていない人や不安を感じている人は、ぜひ最後まで読んで早朝覚醒を改善する参考にしてくださいね。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

この記事の執筆者

睡眠栄養指導士

小田 健史

健康食品の開発や販促に12年以上携わる中で、ストレスや不安感から睡眠不足に悩まされ続けた自身の睡眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士 中級」の資格を取得。
自らの知識と経験を基に機能性表示食品「睡眠体験」を開発するとともに、多くの悩める方々へ睡眠栄養指導士として睡眠の改善に関する情報を随時発信中!

<資格>
一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
 睡眠栄養指導士® 中級
 パーソナル睡眠アドバイザー®
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
 健康管理士 一般指導員

早朝覚醒とは?その症状は?

早朝覚醒とは?その症状は?

「早朝覚醒」は不眠症の症状の一つで、予定している時刻よりも2時間以上早く目が覚め、その後再び寝られない状態のことをいいます。

朝早く目覚めることで睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすることで、日中に強い眠気を感じることや倦怠感を感じることが増え、日常生活に支障をきたす人も少なくありません。

  • 不眠症の症状

    • 早朝覚醒…早朝に目が覚めて二度寝ができない
    • 入眠障害…寝つきが悪い
    • 中途覚醒…眠りが浅く途中で何度も目が覚める
    • 熟眠障害…眠りが浅く、熟睡感が得られない
    • これらの症状が3カ月以上続いている場合は「慢性不眠症」、3カ月未満の場合は「短期不眠症」と診断されます。
      不眠症は腰痛や頭痛、高血圧、心疾患、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍などの発症リスクを高めることが分かっています(※)。
    • ※出典:日本における睡眠障害の頻度と健康影響/保健医療科学 2012 Vol.61 No.1 p.3-10

眠りのメカニズムを解説!

眠りのメカニズムを解説!

早朝覚醒の原因と予防法をお伝えする前に、まずは眠りのメカニズムについて説明します。

睡眠について知ることで、早朝覚醒だけでなく他の不眠症の症状に対しても有効な対策がとれるでしょう。

レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠には深さが異なる2種類があり、浅い眠りが「レム睡眠」、深い眠りが「ノンレム睡眠」です。睡眠中は、約90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠が交替で訪れ、日中の疲労回復や脳への記憶固定、情報整理などを行っています。

入眠後、最初に訪れる約90分間のノンレム睡眠の深さが睡眠全体の質を左右するとも言われ、この間に成長ホルモンが分泌されたり、免疫機能が増強されたりして身体が健康的な状態へと整えられます。

それに対して「レム睡眠」は、身体をリラックスさせて疲労を回復させつつ、脳では記憶の整理や固定が行われています。就寝してから目覚めるまで、深いノンレム睡眠から浅いノンレム睡眠、レム睡眠と交替を繰り返しながら覚醒へと至るのです。

レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル

眠りの質を高めて自律神経を整える「セロトニン」

眠りの質を高めるためには、“睡眠ホルモン”「メラトニン」の分泌が欠かせません。メラトニンは“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」から生成されるホルモンであるため、セロトニンの分泌量が少ないとメラトニンの分泌量も低下します。

セロトニンが分泌されるのは日中で、朝日を浴びてから生成がスタート。その約15時間後からメラトニンを生成し始めます。メラトニンの分泌量が多ければ、その夜の眠りは質が高いものとなるのです。

また、セロトニンにはもう一つ大事な役割があります。それは、自律神経を整えることです。

私たちの身体は、自律神経によって自分の意思とは関係なくあらゆる機能が調整されています。自律神経には、日中の活動的な時に働く「交感神経」と、夕方からのリラックスした時間に働き始める「副交感神経」の2つがあり、この2つの自律神経が切り替わることで眠気を感じたり、朝になると活動的になったりするのです。セロトニンには、交感神経と副交感神経をスムーズに切り替える手助けをする作用があります。

セロトニンが不足すると、自律神経の切り替えがうまくいかずに、夜になっても交感神経が優位な興奮状態が続くため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって早朝覚醒しやすくなったりします。

セロトニンを増やし、睡眠の質を高める方法とは? >>詳しく見る

なぜ早朝覚醒が起こるの?その原因とは

なぜ早朝覚醒が起こるの?その原因とは

早朝覚醒の背景には、年齢や生活習慣が深く関わっています。まずは、世代別に早朝覚醒の原因をみていきましょう。

世代ごとで考えられる早朝覚醒の原因

10代~20代頃

早朝覚醒をはじめとした睡眠障害は、高齢になるほど多くなるのが一般的でした。しかし、近年では小学生の子どもを含む若い世代でも、スマホの普及に伴うインターネット依存者が増加し、睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が低下したりする人が増えています(※1)。

全国の中学校・高校から無作為に抽出した約10万人を対象にした調査では、不眠症有病率は19.3%、短時間睡眠は30.1%、睡眠の質の悪さは37.3%にのぼりました。夜型化傾向は小学校高学年から徐々に進み、十分な睡眠時間がとれなくなることが指摘されています(※2)。

若い世代における早朝覚醒の原因として、こうした夜型化による体内時計の乱れが大きな影響を与えていると言えるでしょう。

※1:若者のインターネット依存/Jpn J Psychosom Med 55:1343-1352,2015

※2:大塚雄一郎. "ライフステージ別の睡眠疫学." ファルマシア 58.8 (2022): 763-767.

30代~50代後半頃

睡眠の長さや質は加齢とともに変化しますが、30代以降は性別によっても睡眠の内容に違いがあることが分かってます。

20代から40代の男女を対象にした調査で、20代では男女の徐波睡眠(深い眠り)の割合は同じであったのに比べて、30代では男性の徐波睡眠が減少。一方、30代の女性では変化は見られませんでした(※1)。しかし、睡眠時間で比較すると40代~60代女性の睡眠時間は男性よりも短く、さらに更年期女性の42~57%が不眠を訴えているとの報告もあります(※2)。

日本産科婦人科学会では、閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間を更年期としています。個人差が大きいものの、40歳代前半から50歳代後半の女性が更年期にあたると考えられ、この時期の女性は女性ホルモンの変動によって睡眠効率が低下し、不眠症状に悩まされる人も多いでしょう。

また、中高年の睡眠の質を低下させる要因に「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。睡眠時無呼吸症候群の有病率は、30代女性で5%弱、男性は10%程度。50歳代になると、女性は10%弱で男性は10~20%にのぼっています(※3)。「睡眠時無呼吸症候群にかかるのは肥満気味の人」というイメージがあるかもしれませんが、日本人の睡眠時無呼吸症候群患者の多くは、標準体重もしくは軽度肥満であることが確認されています(※4)。

※1:香坂雅子. "女性の睡眠と健康." J. Natl. Inst. Public Health 64.1 (2015): 34.

※2:渋井佳代. "女性の睡眠とホルモン." バイオメカニズム学会誌 29.4 (2005): 205-209.

※3:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020/睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編

※4:田村尚亮, and 高橋和久. "睡眠時無呼吸症候群 呼吸器内科の立場から." 順天堂医学 51.3 (2005): 311-321.

60代以上

日本人の一般成人を対象とした調査で、不眠を訴える割合が60歳以上では29.5%にのぼりました。また、睡眠効率も若年者では90%を超えるのに対して、65歳以上では80%以下にまで低下していたことが明らかになっています。

70歳代になると平均睡眠時間が7時間程度に減少しますが、就寝時間は早くなる傾向があり、その結果として起きたまま寝床で過ごす時間が増加。眠れないまま寝床にいることで焦りを感じ、不眠が悪化する人が多いことが分かっています(※1)。

また、ホルモン分泌や睡眠、食事などを調節する体内時計は、加齢とともに前倒しで進むようになります。その影響によって睡眠のリズムが乱れ、日中の居眠り時間が増加する代わりに夜の睡眠時間が減少。そこへ加齢に伴う頻尿や服用している薬の副作用が加わり、睡眠の質が低下して早朝覚醒を引き起こします。

※1:三島和夫. "高齢者の睡眠と睡眠障害." 保健医療科学 64 (2015): 27-32.

早朝覚醒を引き起こす生活習慣

早朝覚醒を引き起こす生活習慣

次にご紹介するのは、全世代に共通する早朝覚醒を引き起こす主な原因です。

①平日と休日の起床・就寝時間が2時間以上ずれている

平日と休日の起床時間が2時間以上変動すると「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれる時差が起こり、体内時計を狂わせて就寝時間になっても眠れなくなります。

一度ソーシャルジェットラグが生じると、その後しばらくは体内のリズムがずれたままとなり、不眠症を悪化させて早朝覚醒する要因となります。

②起床後、すぐにカーテンを開けない

セロトニンは太陽光を浴びてから約15時間後にメラトニン分泌を始めるため、朝日を浴びないとメラトニンが十分に分泌されず、眠りの質が低下。それに伴って、早朝覚醒しやすくなります。

③食事の時間が不規則

セロトニンをたくさん分泌して自律神経を整えるためには、規則正しい生活を送ることが大切です。食事の時間が不規則だと、就寝時間になっても交感神経が優位なままで寝つきが悪くなり、早朝覚醒につながります。

④夜にカフェインが入った飲み物を摂ることが多い

コーヒーなどの飲み物に含まれるカフェインは、身体中に分散して交感神経を刺激し、身体を興奮状態にします。そのため、寝る前にカフェイン入りの飲み物を摂取すると、入眠しにくくなってノンレム睡眠とレム睡眠の規則性が失われ、早朝覚醒を引き起こす可能性が高くなります。

⑤寝る前にお酒を飲んでいる

アルコールを飲むと寝つきが良くなるように感じられますが、眠り自体は浅くなって早朝覚醒するようになります。さらに、毎晩お酒を飲んで寝ることでアルコールに対する耐性がつき、日に日に酒量が増えてアルコール依存症になる恐れも。

⑥入浴時は熱いお湯に浸かっている

熱いお湯に浸かると交感神経が昂り、脳が覚醒して眠りにくくなります。寝つきが悪くなると睡眠全体の質が低下するため、早朝覚醒する原因となります。

⑦睡眠環境が悪い

病気が原因の早朝覚醒

睡眠をとる部屋が暑すぎる・寒すぎる、湿度が高すぎる・乾燥している環境は、睡眠には適していません。明るすぎる部屋や外からの音が聞こえやすい部屋も、スムーズな入眠を妨げるでしょう。

睡眠の質を高め、深いノンレム睡眠をしっかりとる方法 >>詳しく見る

病気が原因の早朝覚醒

病気が原因の早朝覚醒

早朝覚醒には、身体や心の病気が要因である場合が少なくありません。最後に、早朝覚醒を引き起こす病気についてです。

①身体の病気

早朝覚醒をはじめとした不眠症に関係している病気には、高血圧や心疾患、関節リウマチ、アレルギー疾患などがあります。

中でも、40代以降の女性に多いのが「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」。レストレスレッグス症候群は夕方から夜にかけて脚にムズムズとした感覚や虫が這うような感覚が出現する症状です。寝床に入って横たわっても「脚を動かしたい」という欲求に襲われて寝つきが悪くなり、眠りが浅くなって早朝覚醒を引き起こします。

レストレスレッグス症候群の原因の一つが鉄欠乏性貧血であるため、鉄分を摂取することで改善されるケースもあります。

②心の病気

睡眠障害と最も関係が深い心の病気が、うつ病です。

うつ病では80~85%の患者に不眠が認められています(※1)。また、女性の方が早朝覚醒型の不眠が多く認められ、抑うつ症との関連が強いという研究結果も(※2)。うつ病のほかにも、不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、さまざまな心の病気が眠りを妨げる要因となります。

※1出典:精神疾患にみられる不眠と過眠への対応/精神経誌(2010)112巻9号

※2出典:地域高齢者の睡眠と抑うつとの関連における性差/第59巻日本公衛誌 第4号

早朝覚醒の治し方と予防法

早朝覚醒を治す方法

早朝覚醒する原因に、心当たりはありましたか?心当たりがあった人は、次にご紹介する早朝覚醒を治す・予防する方法を実践してみてください。簡単にできる方法だけを厳選しましたので、毎日続けて早朝覚醒を改善しましょう!

①起床時間を一定にして、目覚めたら朝日を浴びる

毎朝決まった時間に起きて朝日を浴びるとセロトニンの分泌が始まり、体内時計がリセットされます。

セロトニンが朝から大量に分泌されることで、夕方から分泌され始めるメラトニンの分泌量も増加。メラトニンの分泌量が増えると深く眠れるようになり、早朝覚醒しにくくなります。

②就寝時間の2時間前からスマホを見ない・触らない

スマートフォンの画面から発せられるブルーライトは、脳に「今は日中だ」と勘違いさせてメラトニンの分泌を止めてしまい、寝つきを悪くします。

SNSやニュースなど、スマホから得る情報も脳を興奮させて寝つきを悪くし、眠りを浅くして早朝覚醒の原因に。就寝前の約2時間はスマホを見ないことをおすすめします。

③就寝の2時間程度前に入浴する

寝つきを良くするためには、身体の深部体温が下がることが大切です。

そこでおすすめなのが、就寝約2時間前の入浴。40度程度のお湯に10分~15分程度浸かって体温を上昇させると、入浴後に体温が下がっていく過程で自然と眠くなるでしょう。ただし、42度以上の熱いお湯は交感神経を優位にするため、ぬるめのお湯で入浴するように気を付けてください。

④寝る前に簡単なストレッチで身体をほぐす

睡眠前に簡単なストレッチやヨガのポーズを行うことで、こわばった肩や背中がほぐれてリラックス感が高まります。

特にヨガに欠かせない腹式呼吸は、リラックス効果が高いだけでなく、新陳代謝を高めたり、ストレスを解消したりする作用も。その結果、眠りが深くなって早朝覚醒しないようになります。

⑤寝室の環境を整える

ある研究によると、人体と寝具の間にできる空間の温度と湿度を指す「寝床内気候」の快適な温湿度は、温度32℃前後、湿度50%(±10%)という結果が報告されています(※)。寝室の温湿度をこの数値に近付ければ、睡眠に適した環境となり、朝までぐっすり眠れるでしょう。

※出典:環境温度と睡眠/睡眠口腔医学

⑥アロマの香りでリラックスする

アロマの香りの中でも、定番人気の「ラベンダー」は深いリラックス作用をもたらしてくれます。

ある実験でラベンダーの香りを含んだ湿布を30分間添付したところ、交感神経の緊張が低下して副交感神経の活動が高くなることが示唆される結果が出ました(※)。アロマオイルを一滴たらしたティッシュやコットンを枕元に置くだけで、質が高い睡眠を得られます。

※出典:ラベンダーの香りと神経機能に関する文献的研究/関西医療大学紀要, Vol. 6, 2012

⑦腸内環境を整える

腸内のビフィズス菌と乳酸菌は、ストレス反応と抑うつ障害に有益な効果があることが示唆される研究結果が報告されています(※)。

腸内環境を整えることで心が安定し、不眠症を改善できる可能性が期待できるでしょう。

出典:Aizawa E, Tsuji H, Asahara T, Takahashi T, Teraishi T, Yoshida S, Ota M, Koga N, Hattori K, Kunugi H. Possible association of Bifidobacterium and Lactobacillus in the gut microbiota of patients with major depressive disorder. J Affect Disord. 2016 Sep 15;202:254-7. doi: 10.1016/j.jad.2016.05.038. Epub 2016 May 24. PMID: 27288567.

質が高い睡眠で早朝覚醒を予防しよう

質が高い睡眠で早朝覚醒を予防しよう

今回は、「朝早く目覚めて眠れない」という悩みを抱えている人に役立つ情報をお届けしました。

規則正しくストレスがたまらない毎日を送ることが不眠症の改善には欠かせませんが、現実的には難しいですよね。まずはこの記事でご紹介した早朝覚醒を治す方法を試して、改善しないようであれば、睡眠をサポートするサプリを飲むことを検討してみてはいかが?

早朝覚醒は不眠症の症状の一つですので、何日も続いて日常生活に困難を感じる場合は、医療機関への相談をおすすめします。

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