最終更新日:2023.10.06
タバコは、身体にとって百害あって一利なし。そんなことは百も承知なのに、なかなか禁煙できないという人も多いのではないでしょうか?
喫煙はがんや心筋梗塞など、生命にかかわる重篤な上記の発症リスクを上昇させるだけでなく、睡眠の質を低下させる要因の一つです。毎日きちんと睡眠時間を確保しているのに疲れがとれなかったり、日中に強い眠気を感じたりすることが多い人は、タバコが原因で睡眠の質が悪くなっているかもしれません。
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、タバコが睡眠の質に与える影響や、喫煙と睡眠時無呼吸症候群の関係などについて、詳しくお伝えします。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
眠気を感じた時に、タバコを吸うと目が覚めるという人も少なくないでしょう。タバコを吸うと目が覚める理由は、タバコの煙に含まれるニコチンの強い覚醒作用によるものです。
ニコチンは交感神経を刺激し、心拍数を増加させたり血圧を上昇させたりして心身を興奮状態にします。そのため、就寝時間のすぐ前にタバコを吸うと、ニコチンの覚醒作用で寝つきが悪くなり、眠り全体が浅くなって睡眠の質が低下するのです。
中国で、喫煙者と非喫煙者の睡眠の質及び睡眠障害について調査した結果、喫煙者は非喫煙者に比べて睡眠の質の低下や睡眠障害を訴える人が有意に多いことが分かりました。また、睡眠不足は1日あたりのタバコの本数と関連があり、タバコの本数が多い人ほど睡眠不足の傾向が強いことが明らかになっています(※)。
ニコチンには強い依存性があり、ニコチンの血中濃度が低下すると「タバコを吸いたい」という欲求が生まれ、喫煙できないことによるイライラや集中力の欠如などといった離脱症状が表れます。この離脱症状こそが禁煙に失敗するおもな理由であり、不眠を引き起こす要因の一つとも言えるでしょう。
タバコは睡眠の質を低下させるだけでなく、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を悪化させる要因の一つでもあります。喫煙によって睡眠時無呼吸症候群が引き起こされる理由として、タバコの煙による刺激で扁桃などが炎症を起こして腫れ、気道が狭くなって呼吸がしにくくなることが関係していると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
厚生労働省国民健康・栄養調査によると、令和元年度の喫煙率は男性27.1%、女性が7.6%です。中でも多いのは30歳~60歳代の男性で、喫煙習慣があると回答したのは3割以上。一方、睡眠時無呼吸症候群の患者は40代以上の男性に多いと言われ、喫煙率の高さとの関係性がうかがえます。
睡眠時無呼吸症候群の人は、眠りの質が悪いため日中に強い眠気を感じやすく、目を覚ます目的でタバコを沢山吸ったり、カフェインを過剰に摂取したりする傾向が強いことが分かっています。
ある病院で睡眠時無呼吸症候群と診断された男性60人(20歳~68歳)を対象にした調査では、睡眠の質の評価が低い人と睡眠時間が短い人ほど、喫煙習慣が多いことが明らかになりました。また、1日に20本以上タバコを吸う人は飲酒頻度も多い傾向があり、喫煙にアルコールが加わることで、さらに睡眠の質が低下する可能性が高いと考えられます(※)。
※:村田朗. "睡眠時無呼吸症候群の診断と治療―寝ている間に病気が作られる." 日本医科大学医学会雑誌 3.2 (2007): 96-101.
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ここまで、タバコによる睡眠への悪影響について解説しました。健康や睡眠の質を高めるために禁煙しようと思った人に、良質な眠りを得るため禁煙とともに実践すると効果的な毎日の取り組みをご紹介します。
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今回は、喫煙と睡眠の質について、睡眠時無呼吸症候群に関する情報も交えてお伝えしました。
喫煙期間が長い人や喫煙本数が多い人は、なかなか禁煙するのが難しいかもしれません。しかし、市販されている禁煙グッズを活用したり、禁煙治療を行っている医療機関を受診したりすることで、禁煙に成功できる可能性が高まるでしょう。
禁煙をすると、20分後には血圧と脈拍数が喫煙前のレベルに下がり、12時間~24時間程度で酸素の血中レベルが正常値に回復。2週間~3週間後には肌がキレイになって顔色が明るくなり、1年後には心臓発作の危険性が喫煙を続けている人の約半分程度、5年後には心臓発作と脳卒中のリスクが非喫煙者と同程度になると言われています(※)。
米国公衆衛生局長官報告書「禁煙による健康改善効果」(1990 年)では、「禁煙すると、喫煙し続けた場合よりも長生きをする。例えば50歳までに禁煙すると以降15年間に死亡するリスクは半減する」と述べられています。
タバコは、百害あって一利なし。睡眠の質を高めるためにも、禁煙にチャレンジしてみませんか。
※:川根博司. "禁煙教育." 日呼吸会誌 42.7 (2004): 601.