最終更新日:2023.12.18
「眠いのに寝れない」「寝ようとしても目が冴えて眠れない」「ベッドに横になってもイライラしたり、色々なことで頭がいっぱいになって寝られない」眠れない原因は、ストレスかも知れません。
今回は「ストレスと不眠」について、睡眠アドバイザーとしての立場から、ストレスや不安と不眠の関係性や、ストレスが原因の不眠解消に効果的な食べ物などをご紹介します。
ストレスがたまっているせいで最近寝られないという人は、参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
ストレスがたまると眠れなくなる理由は、睡眠のメカニズムにあります。
睡眠のほとんどは、血圧や心拍数、体温など身体の様々な機能をコントロールしている自律神経によって調整されています。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、日中は運動機能をつかさどる交感神経が働き、夕方以降は身体をリラックスさせる副交感神経が優位に働きます。そのため、就寝時に副交感神経が働いていないとスムーズに眠ることができません。
しかし、ストレスや不安を抱えていたり、緊張状態が続いていたりすると自律神経が乱れ、夜になっても交感神経が活発な状態が続きます。眠いと感じてベッドや布団に横たわったとしても、実際には脳や身体が興奮・覚醒したままなので寝られません。
ストレスがたまると、睡眠を促進するホルモン「メラトニン」の原料であり、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の分泌量が低下。メラトニン不足によって寝つきが悪くなり、眠りの質も悪くなります。
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副腎皮質ホルモン「コルチゾール」の過剰分泌も、不眠を引き起こす要因の一つです。コルチゾールは、代謝を促したり免疫を抑制したりといった大切な役割を担っていますが、ストレスを感じると分泌量が過剰に。コルチゾールの血中濃度が高くなると、覚醒状態が続きます。
コルチゾールの分泌量が低下するのは深い眠りのノンレム睡眠時であるため、覚醒状態が続いて眠りが浅いと分泌量が減少しません。そうして、不眠が深刻化していくのです。
コルチゾールの過剰分泌は、うつ病や高血圧、クッシング症候群という病気を引き起こす原因にもなります。
ストレスによって眠れない日が続くと、日中に強い眠気を感じたり、集中力が途切れたり、イライラしやすくなります。しかし、睡眠不足による健康への悪影響はそれだけではありません。
眠っている間に、私たちの身体では成長ホルモンなどが分泌され、免疫力アップや傷ついた箇所の修復、疲労回復、ストレス緩和、記憶の整理や固定化が行われています。そのため、ノンレム睡眠で深く眠れなかったり、レム睡眠の時間が増えたりすると、疲れを感じやすくなる、風邪をひきやすくなる、物覚えが悪くなる、物忘れが激しくなるなどの症状が表れるのです。
睡眠不足の状態が続くと、食欲を増加させるホルモン「グレリン」の分泌が増加。睡眠不足によって分泌されたグレリンは、高脂質・高カロリーな食べ物への欲求を高めます。「寝不足だと太る」と言われる理由は、グレリンの過剰分泌が関係していると言えるでしょう。不眠によって肥満化が進むと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症する可能性が高くなります。
不眠が続くと、肥満の他にも糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病のリスクが高まります。生活習慣病は睡眠障害を引き起こす要因でもあるため、悪循環に陥ってしまうことにつながります(※)。
※:山田尚登. "抑うつ・ストレスと生活習慣病." 医学のあゆみ 223.10 (2007): 819-822.
ストレスを発散する方法には色々ありますが、ストレス軽減効果が期待できる栄養素を摂るのも効果的です。ストレスがたまっている時に意識して摂りたい、栄養素や食べ物を紹介します。
トリプトファンは、“睡眠ホルモン”メラトニンの原料であるセロトニン分泌のために欠かせない必須アミノ酸です。トリプトファンは体内で生成できないため、食べ物から摂取しましょう。トリプトファンには、老化を進行させる活性酸素の除去作用もあります。
【多く含まれている食べ物・飲み物】バナナ、大豆製品、乳製品、卵、牛乳
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ストレスを感じると、体内で多くのタンパク質が消費されます。タンパク質が不足すると、免疫力が低下。風邪をひきやすくなったり、歯周病が悪化したりします。
タンパク質は食事量が減ることで不足しやすい栄養素でもあるため、ストレスで食欲が低下している時ほどタンパク質を多く含む食材を摂ることを意識しましょう。
【多く含まれている食べ物・飲み物】豚ロース、鶏もも肉、魚介類、大豆製品、牛乳、ココア
オメガ3系脂肪酸には、脳の認知機能を向上させるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)、血中中性脂肪を下げて血液をサラサラにするα-リノレン酸が含まれています。
オメガ3系脂肪酸には、不安症状を軽減させてうつ症状を改善する効果があることが、2018年に米国医師会雑誌で発表されました。
【多く含まれている食べ物・飲み物】イワシ、サバ、サンマ、えごま油、アマニ油
近年、注目を集めている栄養素「GABA(ギャバ)」。GABAはγ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略語で、興奮状態の神経をリラックスさせて副交感神経を優位にするほか、睡眠の質を向上させる効果が認められています。
GABAは体内で生成できますが、ストレスがたまると生成量よりも多くのGABAが消費されるため、興奮・緊張状態が続くことに。精神を安定させるためには、積極的に摂りたい栄養分です。
【多く含まれている食べ物・飲み物】トマト、ジャガイモ、漬物、発芽玄米、味噌、甘酒
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ストレスを感じると分泌されるのが、交感神経を活性化させるホルモンの1つであるアドレナリン。
アドレナリンが生成される際には、大量のビタミンCが消費されます。ビタミンCが減ると、体内では活性酸素が増加。その結果、頭痛や胃の痛みを感じるようになります。
【多く含まれている食べ物・飲み物】アセロラ、パプリカ、ゴールデンキウイ、ブロッコリー、煎茶
ビタミンB群は糖質・脂質・タンパク質の代謝に欠かせない栄養群。中でも水溶性のビタミンB2は細胞の成長を促し、不足すると口角炎や皮膚炎、ストレス性潰瘍などを引き起こします。
身体がストレス状態にあるときは、通常よりも多くのビタミンB2が消費されています。
【多く含まれている食べ物・飲み物】豚レバー、アーモンド、卵、乳製品、納豆、煎茶、ココア
栄養素 | 多く含まれている食べ物 |
---|---|
トリプトファン | バナナ、大豆製品、乳製品、卵、牛乳 |
タンパク質 | 豚ロース、鶏もも肉、魚介類、大豆製品、牛乳、ココア |
オメガ3系脂肪酸 | ワシ、サバ、サンマ、えごま油、アマニ油 |
GABA | トマト、ジャガイモ、漬物、発芽玄米、味噌、甘酒 |
ビタミンC | アセロラ、パプリカ、ゴールデンキウイ、ブロッコリー、煎茶 |
ビタミンB2 | 豚レバー、アーモンド、卵、乳製品、納豆、煎茶、ココア |
ストレスで眠れない場合、「早く寝なければ」と焦る気持ちがストレスの要因となり、余計に不眠を招くという悪循環に陥りがちです。ストレス・不安と不眠の悪循環を断ち切るためにも、今回ご紹介した内容を参考にしてくださいね。
不眠は誰にでも起こり得ることです。眠れない夜が続いて身体に不調を感じたら、食生活や生活習慣を一度振り返ってみませんか。
もしも不眠状態が1ヶ月以上続くようなら、睡眠専門外来がある病院への受診や、睡眠専門医へ相談することも視野に入れましょう。