最終更新日:2023.12.18
「うつ病で眠れないのはなぜ?」と題して、睡眠アドバイザーとしての知識を交えながら、うつ病と不眠の関係性や不眠症状を改善するためのヒントなどをお届けしたいと思います。
気持ちが沈むことが増えた人や、不安を感じて眠れない日が多くなった人、市販の睡眠薬を服用しようかと迷っている人は、参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
うつ病は、つらい気持ちや悲しい気持ち、憂うつな気持ちがずっと続く病気です。これまで興味があった物事に対して関心がなくなったり、普段であれば嬉しいはずの出来事に対しても喜びを感じられなくなったりといった症状があります。
うつ病の発症原因として考えられているのが、脳内の神経伝達物質「セロトニン」と「ノルアドレナリン」の減少です。セロトニンにはストレス緩和やリラックス作用、ノルアドレナリンには血圧を上昇させて身体を運動に適した状態にする役割があります。
そのため、セロトニンやノルアドレナリンが減少する「うつ病」では、思考がネガティブになったり、無気力になったりするのです。
うつ病は厚生労働省が指定する5大疾病「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」「精神疾患」にも指定され、平成23年には当事者数が初めて100万人を突破。WHO(世界保健機構)の統計では、有病率は3~5%、生涯有病率は13~17%であり、6~7人に1人が障害の間にうつ病に罹患する可能性があるとされています。
うつ病に伴う最も一般的にみられる症状が、睡眠障害です。細かく分類すると、熟眠障害が89.9%、入眠障害73.3%、早朝覚醒が47.7%で、全体として94.1%の人が何らかの睡眠障害を抱えているとされています。
逆に、慢性の不眠症がうつ病の危険因子、あるいは前駆症状となるとの報告もあり、うつ病と不眠(睡眠障害)には密接な関係があることが分かっています(※)。
ではなぜ、うつ病になると眠れなくなるのでしょうか?
その理由として考えられているのが、うつ病の発症原因でもあるセロトニンの分泌量減少です。セロトニンは日中に分泌される神経伝達物質ですが、夕方以降になると“睡眠ホルモン”と呼ばれる「メラトニン」という物質を生成します。うつ病でセロトニンの分泌量が減っている状態では、当然メラトニンの分泌量も少なくなり、眠れなくなります。
また、副腎皮質ホルモン「コルチゾール」の分泌量変動も不眠の大きな要因に。コルチゾールには代謝の促進や免疫抑制といった役割があり、朝に多く分泌され、深く眠った状態であるノンレム睡眠時に分泌が低下します。
コルチゾールにはストレスを感じると分泌されるという特徴があるため、眠りが浅いと分泌量過多の状態に。コルチゾールが有益に働く正常な状態からバランスが崩れ、不眠症やうつ病、生活習慣病などを引き起こします。
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うつ病の種類によっては、寝すぎてしまう過眠症状が出ることもあります。過眠傾向が強くなるのは「非定型うつ病」と呼ばれる症状で、朝起きられなくなって日中も強い眠気を感じることが増えます。
定型うつ病と非定型うつ病による症状の違い(※) | ||
---|---|---|
定型うつ病 | 非定型うつ病(双極性障害と近い) | |
気分 | 普段快適である刺激に反応しない | 楽しい出来事に反応して気分が明るくなる |
食欲・体重 | 低下 | 増加 |
睡眠 | 不眠 | 過眠 |
身体症状 | 疲労感 | 手や足の重い、鉛のような感覚 |
※:片桐建志. "うつ病とはどのような病気でしょうか 早くうつ病と気付くためにはどうすればよいのでしょうか." 杏林医学会雑誌 49.1 (2018): 91-92.
それでは次に、「気分が落ち込む」「やる気がでない」などのうつ状態が続いて眠れない時の対処法についてお伝えしていきます。
セロトニンは起床して太陽光を浴びると分泌が始まります。また、日光を浴びることで体内時計がリセットされて生活リズムが整いやすくなります。
スマートフォンやパソコンの画面からは、ブルーライトという強い光が出ています。ブルーライトは睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制するため、寝つきが悪くなります。また、SNSやネットニュースなどを見ることで脳が興奮状態となり、余計に眠れなくなります。
うつ状態が続いて眠れない日が増えると、お酒の力を借りて寝ようとする人もいるのではないでしょうか。アルコールには寝つきを良くする作用がありますが、毎晩のようにお酒を飲んで寝るとアルコールに対して耐性がつき、酒量が増えてアルコール依存症になる危険性が高まります。
アルコール依存症とうつ病は併存率が高いことが分かっていて、アルコール依存症の既往がある人は、ない人に比べてうつ病を発症する危険性が4倍高いという報告もあります(※)。
セロトニンの分泌に効果的なのが、必須アミノ酸の「トリプトファン」が含まれた食べ物を摂ることです。トリプトファンはバナナや大豆製品、乳製品、卵、牛乳などに多く含有されています。
上記の方法を試してみても不眠が改善されない場合は、医療機関への受診も視野に入れてみてください。医師による抗うつ薬や睡眠薬の処方によって、症状が改善することも期待できます。
今回は、うつ病と不眠の関係、眠れない時の対処法についてお伝えしました。
うつ病に多い症状として不眠が挙げられますが、逆に不眠などの睡眠障害からうつ病が生じる可能性についても指摘されています。
また、2004年にJR東海が有するオフィス勤務を主体とした勤労者7800人を対象に、生活習慣病や睡眠についての調査を行ったところ、不眠経験がある人は無い人に比べて抑うつ状態を有する割合が高く、特に生活習慣病で治療中の人は10倍以上という結果が示されました(※)。
このことからも、うつと不眠、生活習慣病の関係が深いことが分かります。
しかし、気分の落ち込みなどで眠れない夜が続いていても、医師への受診や市販の睡眠薬を服用するのには抵抗感がある人もいるでしょう。そういった人は、まずは睡眠の質を高める成分を配合した睡眠サポートサプリを試してみるのも一つの方法です。
※:筒井末春. "生活習慣病と睡眠障害." 心身健康科学 4.2 (2008): 69-76.
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