最終更新日:2024.1.10
「睡眠」と「腸内環境」。一見関係がないように見えますが、実は睡眠の質と腸内環境の良し悪しが互いに影響し合っていることが、近年の研究で分かっています。
寝つけるまでに時間がかかったり、眠りが浅かったりと睡眠の質に満足できていない人は、もしかすると腸内環境が悪化していることが原因かもしれません。
今回は、眠りと腸内環境の関係について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜつつお届けします。
睡眠不足や便秘が続いて困っている人は、ぜひ参考にして悩みを解消してくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
睡眠不足が続いた時に、便秘になって苦しい思いをしたことがある人はいませんか?質問サイトでも、寝不足と便秘の関係についての疑問が数多く寄せられています。
寝不足だと便秘になるのでしょうか?昨日深夜4時ぐらいまで胃がなぜかギュルギュルと鳴っていて、気持ち悪さもあり、なかなか寝れませんでした。そした今朝7時ぐらいに起きたのですが、いつもなぜか水を飲んだらすぐに出るはずの便がなぜか出ません。
※Yahoo!知恵袋より一部引用
寝不足が続いたり、疲れがたまっていたりすると便秘になるのは何故でしょう??因みに現在便秘5日目です。食事もバランスよくとっていますし、適度な運動も行っています。
※Yahoo!知恵袋より一部引用
寝不足だと便秘になる、または便秘だと睡眠の質が悪くなる理由は、睡眠と腸内環境の関係性にあります。
北海道在住の中高年者を対象に、北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則教授らの研究グループが行った調査によって、睡眠時間が短い人ほど腸内フローラ(腸内細菌叢/ちょうないさいきんそう)の組成・機能異常が起こり、腸内環境が悪化していることが判明しました(※1)。
また、質が高い睡眠を得るためには「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる体内時計が規則正しく働いていることが重要ですが、腸内細菌によって変動することが明らかになっています。そのため、腸内環境が悪いと概日リズムが乱れて、睡眠にも悪影響が表れるのです(※2)。
腸内細菌は、睡眠を促進する作用があり”睡眠ホルモン”と呼ばれる「メラトニン」の生成にも関わっています。メラトニンの原料となるのは、セロトニンという脳内神経伝達物質の一つですが、そのセロトニンは「トリプトファン」という必須アミノ酸から生成されます。トリプトファンは腸内細菌によって分解され、やがてメラトニンを合成するのです。
そのため、腸内環境が乱れて腸内細菌が減少すると、トリプトファンの分解が進まずセロトニンの分泌量が低下。それに伴いメラトニンの分泌量も低下し、不眠症を引き起こす要因となります。
ちなみに、トリプトファンは体内では生成できません。そのため、食べ物からの摂取が必須です。トリプトファンを多く含む食品には、乳製品や大豆製品、魚ではサバやアジ、肉では牛肉の赤身などがあります。
※2:入江潤一郎, and 伊藤裕. "睡眠と腸内細菌叢." 腸内細菌学雑誌 31.3 (2017): 143-150.
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自律神経のバランスが崩れていることも、便秘を引き起こす原因となります。
自律神経には、日中の活動的な時間帯に活性化する交感神経と、夜になると体を休息させる副交感神経があり、入眠時に交感神経が優位なままだと寝つきが悪かったり、眠りが浅かったりします。
副交感神経には、眠っている間に腸を動かして消化を促進させる役割がありますが、寝ている間も交感神経が優位な状態が続いていると、腸が動かず便秘になりやすくなるのです。
便通と睡眠について、19歳~28歳の便通と睡眠状態に問題がない女性11人と、機能性便秘の女性18人(うち10人には睡眠障害あり)を対象に行った調査で、便秘の女性は睡眠前半の覚醒時間が長いことが明らかになりました。さらに、起床後の血中に含まれる成長ホルモンの量も、便秘かつ睡眠障害があるグループの人がもっとも少ないという結果が出ています(※)。
成長ホルモンは、身体の色々な代謝に関わっている重要なホルモンです。成長ホルモンの分泌量が減少すると、コレステロール値が上昇したり、動脈硬化を起こしやすくなって心筋梗塞をはじめとした心血管系疾患の発症リスクが高くなったり、糖尿病を引き起こす要因となります。
「たかが睡眠不足」「たかが便秘」と、どちらも軽視されがちですが、実は命に関わる重篤な病気につながる可能性もあるのです。
※:相模泰宏, 小野茂之, and 町田貴胤. "機能性便秘における夜間の自律神経機能と成長ホルモン分泌, 消化管機能の検討."不眠研究会 編 2007 (2007): 12-16.
腸内環境と睡眠には深い関係があることが分かったところで、次は眠りの質を高めるための腸内環境改善法をご紹介します。
食物繊維は、腸内細菌のエサになります。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は2:1のバランスで摂ることが理想です。
不溶性食物繊維を多く含む食品
水溶性食物繊維を多く含む食品
近年、健康や美容に良い効果をもたらすとして話題を集めているのが「短鎖脂肪酸」ですが、この短鎖脂肪酸は腸内の善玉菌によって産生されます。そのため、善玉菌の代表格であるビフィズス菌を摂ることで短鎖脂肪酸が増加し、睡眠にも良い影響を与えることが期待できます。
しかし、ビフィズス菌は乳酸機に比べて食品含有量が少ないため、サプリメントなどで効率良く摂取する方が良いでしょう。
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ストレスがたまると、腸内に悪玉菌が増加したり、交感神経の優位な状態が続いて腸の動きが悪くなったりして、便秘しやすくなります。
便秘が続くと、ますます悪玉菌が増えて腸内環境は悪化の一途を辿り、様々な病気の発症リスクが上昇。腸内環境を良くするためにも、上手にストレスを解消することが大切です。
今回は、睡眠と腸内環境の関係について解説しました。睡眠不足が続くと便秘がちとなり、逆に便秘などで腸内環境が乱れていると不眠になる可能性があります。
腸内環境を自分で確認するためには、便の色をしっかりチェックしましょう。腸内環境が悪化していると、便の色は黒っぽく濃い色になります。理想的な便の色は、黄土色などの明るい色です。
「眠りが浅くなった」「寝つきが悪い」など不眠に関する悩みがある人は、腸内環境を整えることが良質な睡眠につながります。また、便秘で悩んでいる人は、睡眠の質を高める生活習慣を実践することで、自律神経が整って腸内環境の改善が期待できますよ。
良質な睡眠と整った腸内環境で、健康的な毎日を手に入れましょう!