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一瞬意識が飛ぶ「マイクロスリープ」が居眠り運転事故の原因に!瞬間的に寝てしまう危険な現象とは

最終更新日:2024.1.30

一瞬意識が飛ぶ「マイクロスリープ」が居眠り運転事故の原因に!瞬間的に寝てしまう危険な現象とは

仕事中や授業中に一瞬寝てしまったり、書類や本などの文章を読む際に何度も同じ部分を読んでいたり、会話をしていたはずなのに内容が分からなくなっていたり…。そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?

それは、もしかすると起きている時に数秒間寝てしまう「マイクロスリープ」によって引き起こされたものかもしれません。自分でも気付かない間に寝ているマイクロスリープは、時として重大な事故につながる危険な現象です。

今回は、居眠り運転事故との深い関係が指摘されている「マイクロスリープ」について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら詳しく解説します。

日中、瞬間的に意識が飛んでしまうことがある人は、思わぬ事故を防止するためにもぜひ最後まで読んでみてくださいね。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

睡眠栄養指導士

小田 健史

健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!

<資格>
一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
 睡眠栄養指導士® 中級
 パーソナル睡眠アドバイザー®
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
 健康管理士 一般指導員

マイクロスリープの症状にはどんな特徴がある?瞬間的に寝落ちする現象

マイクロスリープとは、日中の覚醒している時に数秒~数十秒程度、寝てしまうことです。人によっては目を開けたままで瞬間的に眠っていることもあり、本人に寝たという自覚がないことも珍しくありません。

マイクロスリープの症状にはどんな特徴がある?瞬間的に寝落ちする現象

マイクロスリープの瞬間は、たとえ目を開けていたとしても脳のパフォーマンスが著しく低下しているため、見る・聞くなどしていても認識はできていない可能性があります。

マイクロスリープは集中力を奪い、パソコンのミスタッチや何度も同じ部分を読み返すといったミスを誘発して、作業効率の低下を引き起こすのです。

マイクロスリープで居眠り運転事故が起こる?危険な眠気とは

2019年度の交通事故による死亡者数は3,215人でした。交通事故形態別による死亡者数を調査した結果、漫然運転が全体の4割程度を占めていたことが分かっています(※1)。

漫然運転とは集中力や注意力が低下した状態で行う運転のことで、前を向いていても意識はぼんやりしている「見ているのに見えていない」状態での運転です。マイクロスリープは、この漫然運転にも重大な影響を及ぼしていると考えられます。

マイクロスリープで居眠り運転事故が起こる?危険な眠気とは

実際に事故を起こした52件のトラックドライバーの行動について、広島大学大学院医系科学研究科睡眠医学講座・塩見利明寄附講座教授らのグループが車に搭載されていたドライブレコーダーの映像を調べたところ、事故を起こす直前にドライバーがマイクロスリープに関連した行動を頻発していたことが分かりました(※2)。

具体的な行動としては、無意識に顔や頭を触ったり、貧乏ゆすりをしたり、頻繁にまばたきを繰り返して眠気に抵抗しようとする「抗眠気行動」や、瞬間的に完全に目を閉じたり体の動きが止まったりする「マイクロスリープ行動兆候」、そして車線の逸脱や不自然に減速するなど車両の異常な挙動が起こります。これらの行動が、事故の直前の短時間に行われていたのです。

ナルコレプシーには「オレキシン」の不足が関係

また、2017年3月に長野県で発生した消防防災ヘリの墜落によって9人が死亡した事故も、機長がマイクロスリープに陥っていたために発生した可能性が報告されています。

運転中にマイクロスリープが発生した場合、死亡事故に直結する可能性が低くありません。次は、マイクロスリープによる瞬間的な睡眠が起こる原因について解説します。

※1:伊藤一也. "エンジン音の音像変化による覚醒度向上効果の評価." 人間工学 57.5 (2021): 284-287.

2:Hajime Kumagai, Kengo Kawaguchi, Hiroyuki Sawatari, Yuka Kiyohara, Mitsuo Hayashi, Toshiaki Shiomi,Dashcam video footage-based analysis of microsleep-related behaviors in truck collisions attributed to falling asleep at the wheel,Accident Analysis & Prevention, Volume 187,2023,107070,

マイクロスリープが起こる原因は?睡眠負債がたまっている?

マイクロスリープが起こる大きな要因は、睡眠不足や生活習慣による睡眠の質の低下、睡眠に影響を与える病気、ストレス、薬の副作用であると言われています。

マイクロスリープが起こる原因

また、睡眠時無呼吸症候群の人は日中に過度な眠気が発生しやすく、マイクロスリープを起こしやすいとされています。ある研究で29人の睡眠時無呼吸症候群の患者と、そうでない人30人を比較したところ、睡眠時無呼吸症候群患者の交通事故リスクは7倍高く、週に1回は運転中に居眠りをしてしまうことが明らかになりました(※)。

要因 マイクロスリープを引き起こす理由
睡眠不足 睡眠時間が足りない状態が続くと、マイクロスリープが発生しやすくなります。短時間の睡眠不足が毎日蓄積していく「睡眠負債」もマイクロスリープの原因です。
睡眠の質の低下 不規則な生活リズムや睡眠環境の悪化、カフェインやアルコールの過剰摂取、就寝前の喫煙など様々な理由で睡眠の質が低下すると、睡眠による疲労回復が不十分になってマイクロスリープが起こりやすくなります。
睡眠関連の疾患 睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、不眠症など睡眠に影響を与える疾患も、マイクロスリープを引き起こす要因となります。
ストレス ストレスがたまっていると睡眠障害になりやすく、良質な睡眠が得られにくくなります。夜間に十分な休息が得られないことが、マイクロスリープ発生につながります。
薬の副作用 花粉症や鼻炎薬などアレルギー性疾患に使われる抗ヒスタミン薬をはじめ、抗うつ薬や抗てんかん薬などは副作用として眠気をもたらし、マイクロスリープが起こりやすくなります。

※:Findley LJ, Unverzagt ME, Suratt PM. Automobile accidents involving patients with obstructive sleep apnea. Am Rev Respir Dis. 1988 Aug;138(2):337-40. doi: 10.1164/ajrccm/138.2.337. PMID: 3195832.

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マイクロスリープによる眠気を防ぐ方法は?効果的な眠気対策

マイクロスリープによる瞬間的な眠気を防ぐ方法として、まずはマイクロスリープが発生している原因を突き止めることが大切です。原因に応じて、それぞれに効果的な対処をしましょう。

マイクロスリープによる眠気を防ぐ方法は?効果的な眠気対策

睡眠不足が原因の場合

米国睡眠医学会によると、成人に必要な一晩あたりの睡眠時間は7~8時間。日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い傾向があり、睡眠不足によってマイクロスリープが発生している可能性が考えられます。

睡眠時間が平均7時間以下でマイクロスリープを起こしている恐れがある人は、睡眠時間を長くとることが防止につながるでしょう。

ただし、週末に寝だめをするとソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)が生じて体内時計が狂い、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりします。すると睡眠の質が低下する原因となるため、週末だけではなく平日の睡眠時間を少しでも長く確保できるように、一日のタイムスケジュールを組み立てましょう。

睡眠不足がマイクロスリープの原因である場合の対処

睡眠の質の低下が原因の場合

睡眠の質の低下がマイクロスリープの原因である場合は、良質な眠りを得るための生活習慣を実践することが効果的です。

目覚めてすぐに朝日を浴びて体内時計をリセットする、規則正しい毎日を送って体内リズムを安定させる、睡眠環境を整えるなどが有効です。

睡眠関連の病気やストレスで睡眠の質が低下している場合には、睡眠専門外来がある医療機関や心療内科で専門医に相談することをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)など安眠を妨げている病気を治療することで、良質な睡眠が得られるようになり、マイクロスリープの発生を抑えられるでしょう。

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睡眠の質を高めて危険なマイクロスリープを予防しよう

起きている時に一瞬寝落ちしたり、数秒程度の記憶が途切れていたりすることがある人は、脳が疲れてマイクロスリープを起こしているかもしれません。

運転中や高所作業中などにマイクロスリープが発生した場合、命に関わる重大な事故を引き起こす可能性があります。事故を防ぐためにも一定時間で適度に休憩をとって目を閉じ、脳を休ませることが大事です。

マイクロスリープの予防には、適度に休憩をとって目を閉じ、脳を休ませることが大事

睡眠時間を十分に確保しているのにマイクロスリープが何度も起きる場合は、不眠症などの睡眠障害によって睡眠の質が低下していることが考えられます。その場合は、睡眠専門医に相談しましょう。

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