最終更新日:2024.01.17
睡眠不足の日が続き、ふと鏡やガラスに映った自分の顔を見て、目の下のクマや肌のたるみ、シワなどにショックを受けたことがありませんか?寝不足が美容に悪いと分かっていても、やることが沢山あって早寝できないという人も多いのではないでしょうか。
今回は「睡眠と美容」について、睡眠の美容効果や美肌づくりに効果的な眠り方、アンチエイジングに最適な睡眠時間など、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながらお伝えします。キレイな肌を保つために役立つ情報を厳選してお届けしますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
横尾 奈都
眠りのお悩みは人それぞれです。仕事や趣味を充実させるために、もっと睡眠のパフォーマンスを上げたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
睡眠には多くの要因が絡んでいますので、このやり方が万人にとって正解だ!というものはありません。さまざまな情報からあなたに合うもの、可能性があることを見つけていただくお手伝いができれば幸いです。
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
睡眠時間が減少したり、睡眠の質が低下するとターンオーバーのリズムが乱れて乾燥やくすみ、皮脂の過剰分泌などのトラブルが発生しやすくなります。また、交感神経が過剰に働いて血管を収縮させ、血流が停滞。目の下にクマが出来る原因になります(※)。
さらに、睡眠時間が足りない日が続くと「グレリン」という食欲刺激ホルモンが多く分泌されるようになります。
寝不足によって過剰分泌されたグレリンは、高脂質・高カロリーな食べ物への欲求を強くする特徴があるため、ニキビが発生しやすい肌環境に。これも、睡眠不足が肌に与える悪影響の一つと言えるでしょう。
睡眠不足が原因となる肌への悪影響
※:外薗英樹, and 上原絵理子. "γ-アミノ酪酸の経口摂取による皮膚状態改善効果." 日本食品科学工学会誌 63.7 (2016): 306-311.
眠るだけで美肌になれる理由は、睡眠に関係するホルモンにあります。眠っている間にキレイな肌へと導いてくれる、美容に役立つ2つのホルモンについて詳しく解説しましょう。
まずは、睡眠中に分泌される「成長ホルモン」についてです。成長ホルモンと聞くと、子どもだけが分泌するものというイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか?実は、成長ホルモンは大人になっても分泌されています。
成長ホルモンは、その名の通り成長を促進するホルモンですが、肌のターンオーバー促進や皮膚のハリを保つ役割を担っているほか、傷ついた細胞の修復や再生、免疫力の回復・向上、糖やたんぱく質、脂質などの代謝といった身体のあらゆる部分に作用を及ぼしています。
成長ホルモンの分泌量が最も多くなるのは、眠っている間。特に、入眠後に最初に訪れる深いノンレム睡眠(ステージ3,4またはN3)や睡眠初期が分泌量のピークです(※1)。
そのため、睡眠時間が短い、睡眠サイクルが不規則などの理由でスムーズに深く眠れなかった場合は、成長ホルモンの分泌量が減少して肌荒れを引き起こしやすくなります。
成長ホルモンの分泌には、“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンが深く関わっています。
メラトニンは夕方になって暗くなりはじめると脳の松果体で合成され始め、身体をリラックスモードに切り替えて深部体温を下げ、眠りやすい状態へと導きます。
メラトニンが多く分泌されるほど睡眠の質が高くなり、眠りによる美容効果も期待できるでしょう。また、メラトニンには、老化の原因となる活性酸素などを消去する強い抗酸化作用があることも明らかになっています(※2)。
睡眠による美容効果を得るためには、欠かせない存在のメラトニン。その原料となるのが、日中に生成される脳内神経伝達物質のセロトニンです。従って、セロトニンの分泌量が少ないとメラトニンの分泌量も低下し、成長ホルモンの分泌量も減少します。
セロトニンはストレスによって減少するため、美肌のためにもストレスを発散することが大切だと言えるでしょう。
※1:加藤譲, et al. "ライフサイクルの制御機構." 日本老年医学会雑誌 17.4 (1980): 403-417.
※2:Tamura, Hiroshi, et al. "メラトニンの抗酸化作用と生殖." Glycative Stress Research 6.3 (2019): 192-197.
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
美肌になるためには毎日何時間眠れば良いのでしょうか?
20~60 歳代の一般市民ランナー男女計248人(男性112人、女性136人)に対して行った調査では、1日当たりの睡眠時間が6時間~8時間、週に1回~2回の有酸素運動を行なっている人が肌の水分量が最も多いという結果が出ました(※1)。
また、韓国で40代の女性32人を対象に行われた「長期睡眠制限による肌の特徴に関する研究」で、第1週では6晩にわたって8時間、第2週では6晩にわたって4時間に睡眠時間を制限したところ、第2週目の1日間だけで皮膚の水分量が大幅に減少し、皮膚のツヤや透明感、弾力性、シワが悪化しました。睡眠制限4日目には肌の質感が著しく悪化し、特に弾力性が大きな影響を受けたことが分かっています(※2)。
これらのことから、睡眠時間は6時間~8時間が理想であると言えそうです。
※1:織田修輔, et al. "運動習慣と生活習慣が顔面表皮の水分量に及ぼす影響ついて." 大阪青山大学短期大学部研究紀要 39 (2019).
「22時から2時の間がお肌のゴールデンタイム」という言葉を聞いたことはありませんか?実は、最近の研究では寝ている時間帯そのものには根拠がないことが明らかになっています。
美容に欠かせない成長ホルモンは寝る時刻に関わらず、眠りについてから3~4時間の「眠りのゴールデンタイム」に訪れる、深いノンレム睡眠時に多く分泌されます。したがって、寝る時間が22時を過ぎたとしても、睡眠の前半に深いノンレム睡眠をとることができれば成長ホルモンは分泌されます。
「22時から2時の間がお肌のゴールデンタイム」という説は、成長ホルモンの分泌が多くなる時間帯を、平均的な就寝時刻である22時ごろに眠りについた場合を基準として広まったのではないかと考えられます。
ただし、夜更かしは睡眠サイクルの乱れや睡眠不足につながりますので、毎日できる限り一定の時間帯に寝ることは大切です。
睡眠が美肌づくりに効果があると言っても、ただ長時間寝るだけではあまり意味がありません。眠りによる美容効果を得たいなら、長さだけでなく睡眠の質を高めることが大切です。
様々な美容効果をもたらす成長ホルモンは、入眠してから最初に訪れる深いノンレム睡眠時が分泌のピークですが、寝つきが悪かったり、睡眠サイクルが乱れたりしていると深いノンレム睡眠まで到達できません。
また、睡眠途中で目覚める中途覚醒や、予定時刻よりも2時間以上早く目覚めてしまう早朝覚醒も、眠りの質を低下させる要因です。睡眠による美容効果を高めるためには、規則的な睡眠サイクルによる上質な眠りを得ることが不可欠なのです。
睡眠の質を高める方法
睡眠の質を高め、深いノンレム睡眠をしっかりとる方法 >>詳しく見る
眠りの質を高めて美容効果を上げるための、必要な成分が含まれた食べ物をご紹介します。
寝ている間に肌をキレイな状態へと導いてくれるメラトニンの原料となるセロトニン。そのセロトニンの原料となるのが、必須アミノ酸のトリプトファンです。
トリプトファンは体内では生成されないため、食べ物から摂取する必要があります。トリプトファンが多く含まれているのは大豆製品や乳製品です。また、トリプトファンがセロトニンを生成するためにはビタミンB6も欠かせません。ビタミンB6が豊富な食材は、バナナや玄米、サツマイモなどです。
アミノ酸の一種で抗ストレス効果やリラックス効果をもたらすほか、睡眠の質を高めることで注目を集めている「GABA(ギャバ、γ-アミノ酪酸)」も、眠っている間に肌を良い状態に整える効果が期待できることが、実験により明らかになっています。
実験では、肌荒れを自覚し、疲労や睡眠の不調を感じている成人女性40人を対象に実施され、8週間にわたって就寝前にGABAを摂取させました。その結果、頬の皮膚の弾力が改善。GABAが頬のハリ低下を抑制する可能性が示されました(※)。
GABAが含まれる食べ物は、トマトやケール、発芽玄米、納豆などです。近年ではGABAを配合したサプリメントも多く販売されているので、食生活が不規則な人はサプリで摂るのもおすすめです。
※:外薗英樹, and 上原絵理子. "γ-アミノ酪酸の経口摂取による皮膚状態改善効果." 日本食品科学工学会誌 63.7 (2016): 306-311.
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る
睡眠不足が美容の大敵である理由と、睡眠による美肌効果を高める方法をご紹介しました。
肌の調子を整えるためにも、規則正しい睡眠サイクルで質の高い睡眠を得たいもの。睡眠の質が向上すれば、美肌だけでなくダイエットや生活習慣病の予防にも役立ちます。
ただ眠るだけで美肌になれる睡眠美容は、最も簡単でラクにできる美容法と言っても良いでしょう。まずは1日7時間程度の睡眠時間を目標に、質が高い睡眠を得るための生活習慣を実践してみませんか。