最終更新日:2024.3.7
カフェインには眠気を覚ます効果があり、日常生活において起床時や仕事、勉強などのシーンで欠かせないものと言えます。
しかし、体内に残ったカフェインは夜の睡眠に悪影響を与えることもあります。
こちらの記事では、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら「カフェインの効果が抜けるまでの時間」「カフェインは寝る何時間前までに摂取すれば大丈夫?」など、睡眠の質に影響を与えないためのカフェインとの付き合い方をご紹介します。
毎日のコーヒーが欠かせないけれど睡眠の質も気になる、という方はぜひ最後までお読みください。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
カフェインはどうやって眠気を覚ましているのでしょうか?
それには脳内の「アデノシン」と「アデノシン受容体」が関係しています。
脳が活動している間に、疲労とともに「アデノシン」という物質が少しずつたまっていきます。
アデノシンは「アデノシン受容体」に結合すると、脳を興奮させるドーパミンなどの物質の発生を抑え眠気を感じさせる働きを持っています。
カフェインはアデノシンと似た構造をしており、アデノシンの代わりに受容体に結合します。そのためアデノシンが結合できなくなってしまい、結果として眠気を感じにくくなります。
カフェインの効果が出るまでの時間は、個人差はあるものの摂取してから15分~30分前後とされています。
カフェインには、健康面から見た1日あたり摂取量の目安があります。
カフェインと聞いてまず思いつくのはコーヒーではないでしょうか。コーヒーには100gあたり60mgのカフェインが含まれます。
その他のカフェインを含む飲み物としてはお茶類(緑茶、紅茶、ウーロン茶など)、ココア、エナジードリンク、コーラなどがあります。食べ物では、チョコレートにもカフェインが含まれています。
分類 | 名称 | カフェイン含有量 (100mlあたり) |
浸出法 |
---|---|---|---|
コーヒー類 | コーヒー 浸出液 | 60mg | コーヒー粉末 10g / 熱湯150ml |
茶類 | 玉露 浸出液 | 160mg | 茶 10g / 60°C / 60ml / 2.5分 |
ほうじ茶 浸出液 | 20mg | 茶 15g / 90°C / 650ml / 0.5分 | |
ウーロン茶 浸出液 | 20mg | 茶 15g / 90°C / 650ml / 0.5分 | |
紅茶 浸出液 | 20mg | 茶 5g / 熱湯 360ml / 1.5分~4分 |
カフェインにはメリットもありますが、過剰に摂取すると不眠症のほか脈拍数の増加や下痢といった副作用をもたらす恐れもあります。
海外では世界保健機関(WHO)、欧州食品安全機関(EFSA) 、カナダ保健省 (HC)などにより、1日あたりに推奨する最大のカフェイン摂取量が公表されています。
区分 | 1日あたりの 最大摂取量 |
機関名 | |
---|---|---|---|
健康な成人 | 400mg | 欧州食品安全機関(EFSA) | |
妊婦 | 300mg | 世界保健機関(WHO) | |
200mg | 欧州食品安全機関(EFSA) | ||
子ども | 4~6歳 | 45mg | カナダ保健省 (HC) |
7~9歳 | 62.5mg | ||
10~12歳 | 85mg | ||
13歳以上 | 体重1kgあたり2.5mg |
出典:世界保健機関(WHO) Restricting caffeine intake during pregnancy (2016)
出典:欧州食品安全機関(EFSA) Caffeine (2015) / Scientific Opinion on the Safety of caffeine (2015)
出典:カナダ保健省(HC) Caffeine in food (2012) / Health Canada is advising Canadians about safe levels of caffeine consumption (2017) / Energy Drinks:An Assessment of the Potential Health Risks in the Canadian Context (2015)
健康な成人と比較して、妊婦や子どもは最大摂取量が少なく設定されています。
コーヒー(100mlあたりのカフェイン含有量60mg)で換算すると、以下の量が1日あたりの摂取量の目安となります。
1日のコーヒー摂取量目安
「日中、眠気で集中できない…」睡眠に悩む人必見!深いノンレム睡眠を増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る
カフェインを短期間に過剰摂取すると、「カフェイン中毒」の症状をまねく恐れがありますので注意が必要です。
カフェイン中毒のおもな症状
成人の場合で短時間に1,000mg(1g)以上を摂取すると、カフェイン中毒の症状が発生するとされています(※1)。体質や体調によっては、より少ない摂取量で発症する可能性もあります。
日本中毒学会の調査によると、2011年4月からの5年の期間において101人がカフェイン中毒により緊急搬送され、そのうち3名が死亡したとのことです(※2)。
カフェイン中毒の症状を起こした人には、エナジードリンクや眠気防止薬として販売されているカフェイン錠剤などを合わせて飲むなど、過剰な摂取の実態が見られます。
※1:日本中毒情報センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報 カフェイン含有飲料
体内に残ったカフェインは、寝つきや睡眠の質に影響を与えます。
カフェインが体内に残った状態で就寝すると、覚醒作用により眠りにつくまでの時間が長くなったり、眠りが浅くなることで夜中に目覚めてしまうといったことが発生しやすくなります。
カフェインには利尿作用があるため、睡眠中に尿意で目が覚めてしまうことにも繋がります。
カフェインが体から抜けるまでの時間は、カフェインの半減期によってある程度計算することができます。ただし、体質や摂取した量によって左右されます。
カフェインの半減期とは、血中に取り込まれたカフェインの量が半分に減少するまでの時間を指します。一般的には半減期は平均で4時間程度とされています。
半減期には個人差があり、摂取した人の代謝能力により3〜8時間程度と大きく異なります。夜にコーヒーを飲むと眠れなくなる人もいれば、比較的大丈夫という人もいるのはそのためです。
カフェインの半減期を4時間とした場合、そこからさらに4時間経過すると半分になった量からまた半分になります。つまり摂取してから8時間後にはゼロになるのではなく、25%程度は残っているということになりますので注意が必要です。
半減期を4時間とした、摂取してからの時間経過による体内のカフェイン量推移は以下のようになります。
12時間後でも10%以上残り、24時間後でようやく1%程度となります。つまり、カフェインが体から完全に抜けるのには1日以上かかるということになります。
カフェインが抜けるまでの時間は、摂取量によっても異なります。カフェインの摂取量が多いほど、抜けるまでに必要な時間が長くなります。
また、カフェインを摂取し続けている場合は、体が慣れてしまい抜けるまでの時間が長くなることがあります。このような場合は、カフェインの摂取量を少なくするか、控える期間を設けることが効果的です。
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
寝る何時間前までなら、カフェインを摂取しても睡眠に影響が出ないのでしょうか。
一般的な半減期から効果の持続時間を考えると、夜の睡眠の質を高めるためには少なくとも就寝時間の4時間前からはカフェインを摂らないようにして、できれば夕方以降はなるべく摂取を控えたほうが良いと考えられます。
19歳~48歳の男女12名に対し、就寝時および就寝の3時間前、6時間前にカフェインを摂取した際の睡眠への影響を調べた研究データをご紹介します。
実験では、カフェインを摂取していない場合は入眠までの時間が約21分であったのに対し、寝る6時間前に摂取したところ倍の約45分に伸びました。
さらに、睡眠中に起きていた時間も約10分から18分に増えており、合計で1時間も睡眠時間が短くなるという結果となりました(※)。
カフェインが抜けるまでの時間、効果の持続時間には個人差があります。
私はカフェインが抜けにくい体質のためいろいろと試してみた結果、15時以降はコーヒーを飲まないように心がけています。
日々コーヒーを飲む習慣がある場合は、飲む時間を変えつつ寝る何時間前までなら睡眠の質に影響が出ないか、自身にあったタイミングを見つけるのもおすすめです。
また自分で「カフェインに強い」と思っていても、実は眠りにつくまでの時間が長くなっていたり眠りが浅くなっていたりといった「隠れ睡眠障害」となっているケースもありますので、注意したほうが良いかもしれません。
睡眠の質は下げたくないけれど、夜もコーヒーやお茶を飲みたいという時は「カフェインレス」「デカフェ」「ノンカフェイン」などカフェイン含有量の少ないものがおすすめです。
カフェインが入っていないのではなく、コーヒー豆やお茶の葉っぱからカフェインを取り除いた「カフェインが少ない」飲み物です。カフェインを90%以上取り除いたものを、「カフェインレス」「デカフェ」と呼びます。
あくまでもカフェイン量はゼロではありませんので、飲みすぎると少なからず睡眠に影響を与える可能性があり注意が必要です。
ノンカフェイン飲料は、カフェインを一切含まないか、ゼロに近いものを指します。
たんぽぽコーヒー、麦茶、ルイボスティー、ハーブティーなどがあります。
カフェインには眠気を覚まして仕事や勉強のパフォーマンスを上げるといった効果がありますが、その一方で夜の睡眠に悪影響をおよぼす可能性があります。
自身にあった摂取量やタイミングを調整して、睡眠の質を高め健康的な生活に繋げましょう。
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る