最終更新日:2024.2.9
仰向け、横向き、うつ伏せ…あなたは普段、どんな姿勢で寝ていますか?起きた時に体が痛かったり、熟眠感が得られなかったりする人は、寝る時の姿勢に問題があるのかもしれません。
今回は、横向きで寝ることのメリットや横を向いて寝た方が良い人、横向きで寝る場合のポイントなどを、睡眠アドバイザーとしての知識を交えながらご紹介します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
通常、人は真っすぐ立っている時は背骨が緩やかなS字状にカーブしています。寝る時も、マットレスや敷き布団の上でこの姿勢が保たれているのが理想的です。
しかし、マットレスや敷き布団の硬さが適切でない場合、腰が沈んだり、逆に腰が真っすぐになりすぎて負担がかかったりします。横向きで寝る場合にも、背骨と床が平行になっている状態が理想の寝姿勢です。
日本人の多くは仰向けで寝ていることが、ある研究によって報告されています。
日本とカナダの学生を対象に行った睡眠姿勢の国際比較によると、日本人は仰向け(仰臥位)で寝る人が最も多く40.5%。次いで横向き寝(横臥位・側臥位)が32.4%、うつ伏せ寝(腹臥位)は5%でした。
一方、カナダでは横向きで寝る人が58.8%と最も多く、次にうつ伏せ寝(腹臥位)で24.7%、仰向け寝(仰臥位)に至っては5%未満という結果になりました(※)。
※:浅岡章一, et al. "夢の特性と睡眠姿勢." 江戸川大学紀要 30 (2020).
横向きで寝ることで、いくつかの健康上のリスクや体への負担を軽減する効果が期待できます。以下の症状や悩みを持つ人は横向きで寝る事がメリットとなる可能性があります。
睡眠中に舌や軟口蓋が喉へと沈みこみ気道の一部が狭くなると、呼吸の際に舌の根元部分が振動して音を発生させ、いびきとなります(※1)。
横向けに寝ると軌道への沈み込みを防ぐことができるため、いびきの防止につながります。
また横向きに寝ることは、睡眠の質が低下する大きな要因であり、日中に強い眠気を感じたり集中力が途切れたりと日常に支障をきたすことがある「睡眠時無呼吸症候群」の症状軽減にも効果が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群
(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
睡眠時無呼吸症候群も、いびきと同様に舌や軟口蓋などが重力によって喉の方へ落ち込み、気道が狭くなることが原因として挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群と睡眠時の姿勢および肥満について調べた研究では、睡眠検査を実施した68例(男性59名、女性9名、平均年齢47.2歳、標準体重に対する平均肥満度120.5%)において、仰向け寝から横向き寝に姿勢を変えることで呼吸障害が大きく改善されたことが報告されています(※2)。
胃は、体の右側に向かってカーブした形をしています。そのため、右側を向いて寝ると消化が促進されるほか、便が腸内をスムーズに移動して便秘解消・予防につながります。
左側を向いて寝ると胃酸の逆流を防止できるので、逆流性食道炎の人は左向きで寝ると良いでしょう。
仰向けで寝ると腰に負担がかかりやすくなります。特に柔らかいマットレスや敷き布団は、腰への負担が大きくなって腰痛を悪化させる原因に。
腰に痛みや違和感がある人は、横向きで寝ると自分で腰の角度を調節できるため、痛みの緩和に効果的です。
ストレスの蓄積や不規則な生活によって自律神経が乱れると、体温調整機能が鈍くなります。横向き寝はマットレスや敷き布団との接地面が少ないので、体に熱がたまりにくく体温調整がしやすくなるでしょう。
ちなみに、睡眠姿勢と夢の内容を比較した研究では、左向きで寝る人は悪夢で苦しむ割合が高く、安心や安全などの感情を伴う夢を見る頻度が低いことが報告されています(※3)。
※1:原浩貴. "いびきと睡眠時無呼吸症候群―いびきの周波数解析の臨床的意義―." 山口医学 53.6 (2004): 265-267.
※2:宮崎総一郎, et al. "睡眠時無呼吸に対する睡眠体位, 肥満の影響." 口腔・咽頭科 10.2 (1998): 183-189.
※3:浅岡章一, et al. "夢の特性と睡眠姿勢." 江戸川大学紀要 30 (2020). 「しっかり寝たはずなのに眠い…」睡眠に悩む人必見!深いノンレム睡眠を増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る 横向き寝には色々なメリットがあることが分かりました。しかし、デメリットもゼロではありません。横向きで寝た場合に考えられるデメリットについて解説します。 横向きで寝ると、体の片側にだけ体重がかかるため、血流が阻害されて肩こりをはじめとした筋肉の痛みを感じやすくなります。 毎晩、同じ方向で寝ていると体の一方に負担がかかり、体が歪みやすくなります。また、顔の片側が圧迫されて顎が歪む可能性も。顎関節も不安定になり、顎関節症のリスクが高くなります。 睡眠姿勢と歯の喪失の関係について、歯科医院に通う患者697名(20歳~78歳、平均年齢46.7歳)を対象に調べたところ、横向きやうつ伏せで寝る人は仰向けで寝る人に比べて60歳代において歯の喪失率が有意に高いことが分かりました。 このように、横向き寝にはメリットもデメリットもあります。 大切なのは、睡眠中にスムーズに寝返りができる睡眠環境を整えることです。入眠する際は横向きでも、寝返りがうちやすい環境であれば体への負担はかかりにくくなるでしょう。 次は、横向きで心地良く眠るためのポイントについて、お伝えします。
※2:中道慧. "睡眠姿勢と歯の喪失." 日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 22.4 (2002): 438-445. 横向きで寝る場合、体の片側に体重がかかって血流障害が起こりやすくなります。それを避けるためにも、スムーズに寝返りがうてる寝具を選ぶことがポイントです。 横向きで寝る場合は、体の軸が床と平行になる高さの枕が理想とされています。柔らかい枕は頭が沈み込み、寝返りをうつ時に首へ大きな負担がかかります。枕の高さや硬さは、寝返りの途中で横向きから仰向けへと楽に姿勢を変えられる高さ・硬さにしましょう。 枕の形は凹凸がなくフラットなものだと寝返りがうちやすく、首への負担も軽くなります。 人によっては、横向きで寝る場合は枕が高くないと肩がきついと感じる人もいるでしょう。 その場合は枕を高くするのではなく、マットレスや敷き布団の上に厚みがある敷パッドを置いて体が沈むようにすれば、肩への負担が軽減されます。 抱き枕を使うと、就寝中に仰向けになってしまうことを防いで横向き寝の姿勢を安定させることができるため、いびきの防止などに効果が期待できます。また精神的なリラックス効果や、片方の足の位置が心臓より高くなることによる、むくみの解消にもつながります。 一方で、姿勢が固定されることで寝返りがうちづらくなる、布団の中のスペースが狭くなるといったデメリットもあります。 メリットとデメリットを比較したうえで、抱き枕を使う際は大きさや硬さなど自身が楽に寝ることができるものを選ぶようにしましょう。 ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る 今回は、横向きで寝ることのメリットや、体に負担をかけないためのポイントなどについてご紹介しました。横向き寝をすることによって、いびき改善や便秘解消・予防などの効果が期待できるかもしれません。 睡眠の質を高めるためにも、自分に合う寝姿勢を見つけることが大切です。眠りの質をより良くするには、生活習慣や食生活も重要です。上質な睡眠を得るために、その他の記事も参考にしてくださいね。横向き寝にデメリットはある?注意すべき点とは
肩こりなど筋肉の痛み
体が歪みやすい
歯の喪失率が上昇する可能性がある
横向きで心地良く眠るためのポイントは?枕の選び方は?
横向き寝におすすめの枕
抱き枕にはメリットもデメリットも
横向き寝にはメリットいろいろ!負担のない寝方で良質な睡眠を