最終更新日:2024.3.1
「ベッドや布団に入ってもなかなか寝つけない」「早く眠らなければと思うほど、目が冴えてしまい眠れない」。
そんな症状のせいで睡眠不足が続き、日中に強い眠気を感じている場合は不眠症の一つ「入眠障害」かもしれません。
入眠障害は睡眠時間が短くなるだけでなく、眠りを浅くして睡眠全体の質を低下させます。
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識や私自身の経験を織り交ぜながら、入眠障害の症状や原因、寝付きを良くするための改善方法などを詳しく解説していきます。寝付きの悪さを解消する参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
入眠障害は不眠症の一つであり、睡眠関連の問題で悩んでいる人が特に多い症状と言われています。
入眠障害には明確な基準はありません。しかし、上記の症状が続いている場合は入眠障害の可能性が高いと言えるでしょう。
不眠症は、症状によって4つのタイプに分類されます。
不眠症の種類
これらの症状が3カ月以上続いている場合は「慢性不眠症」、3カ月未満の場合は「短期不眠症」と診断されます。
入眠障害になると、単に睡眠時間が足りなくなるだけではありません。
寝付きが悪くなることで睡眠のリズムが狂い、眠りの質が低下して数多くの悪影響が表れ日常生活にも支障が出ます。
入眠障害が与える悪影響
入眠障害などの不眠症は、様々な病気の発症リスクを上昇させます。
特にリスクが高まるのが糖尿病で、5時間未満しか眠っていない人は7~8時間睡眠をしている人に比べて2.51倍、6時間未満の人は1.66倍発症率が上昇することが調査によって明らかになりました。
さらに睡眠不足は心の健康にも影響を与え、睡眠の満足度が低いほど抑うつ傾向が強くなるという調査結果が報告されています(※)。
※:睡眠障害の社会生活に及ぼす影響/Vol.47 No.9. 2007心身医
入眠障害には様々な原因があり、複数の要因が絡み合って引き起こされることが多い症状です。寝付きが悪くなる主な原因には、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について詳しく解説いたします。
入眠障害になる大きな原因に、ストレスの蓄積が挙げられます。
睡眠に大きく関わっているのが、眠気を催す働きがある“睡眠ホルモン”と呼ばれる「メラトニン」です。
メラトニンが十分に分泌されることで寝付きが良くなり、眠りの質も向上。睡眠リズムが整って、成長ホルモンの分泌や疲労回復、記憶の整理・保存などが適切に行われるようになるのです。
メラトニンは、“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」から生成されます。
しかしストレスが蓄積するとセロトニンの分泌量が低下。それに伴い、メラトニンの分泌量も減少し寝付きが悪くなります。
セロトニンには自律神経の交感神経と副交感神経が適切に切り替わるよう調節する役割もあります。
セロトニン不足になると自律神経がバランスを崩し、交感神経と副交感神経の切り替えが乱れて入眠障害を引き起こすのです。
自律神経とは
セロトニンの分泌が低下した場合、不眠だけでなく、うつ症状を悪化させたり、攻撃性や衝動性を高めたりすることが分かっています。
セロトニン不足は、日常や社会生活に大きな影響を与えると言っても過言ではないでしょう。
セロトニンは光を浴びることで分泌が始まります。そして約14~16時間後に、セロトニンをもとに睡眠を促す作用をもつメラトニンの分泌が始まります。この仕組みは体内時計の調整にも役立っています。
生活が不規則になり朝日を浴びる時間が遅くなると、夜になってもメラトニンが十分に分泌されなくなり体内時計の乱れや寝付きが悪くなることに繋がります。
逆に、メラトニンは暗くなると分泌され、光を浴びると抑制される性質を持っています。
夜になっても明るい環境にいたり、テレビやスマホの画面などで光を浴びるとメラトニンが十分に分泌されなくなってしまいます。
また、食生活の偏りによってセロトニンの生成に必要な栄養素の摂取が不足しているケースにも注意が必要です。
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
病気によって寝付きが悪くなることも珍しいことではありません。入眠障害の原因になりやすいのが、以下の疾患です。
レストレスレッグス症候群は、夕方から夜にかけて脚にムズムズとした感覚や虫が這うような感覚が出現し、「脚を動かしたい」という欲求に襲われる症状の病気です。
40代以上の女性に多いとされ、鉄分不足が発症原因の一つに挙げられます。
不快な感覚によって眠れなくなる原因となります。
アレルギー性鼻炎は夜間から早朝にかけて症状が悪化することが多いと言われています。
アレルギー性鼻炎患者を対象に行われた睡眠調査では患者の63%が睡眠の質の悪さを感じ、特に入眠困難が示唆される結果が明らかになりました(※1)。
糖尿病の人は、睡眠障害を引き起こしやすいことが指摘されています。
ある調査では、糖尿病外来を受診した人のうち約40%に睡眠障害があり、中でも入眠困難を訴える患者が多いことが報告されました(※2)。
うつ病と睡眠障害には深い関連性があり、うつ病の病相期では入眠障害が73.3%、熟眠障害が89.9%、全体として94.1%以上の患者に何らかの睡眠障害が認められたという調査結果があります(※3)。
ほかにも不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、さまざまな精神的疾患が入眠を妨げる要因となります。
※1:本間あや. "アレルギーと睡眠を制御する体内時計." 日本鼻科学会会誌 60.1 (2021): 101-102.
※2:清水夏恵, 村松芳幸, and 成田一衛. "糖尿病患者の睡眠障害について (特集 内分泌・代謝疾患の心身医療)." 心身医学 53.1 (2013): 29-35.
※3:精神疾患における睡眠・覚醒リズムの評価とその意義/精神経誌(2010)112巻9号
女性の入眠障害には、女性ホルモンの増減が関係している場合が少なくありません。そこには、眠りのメカニズムが関係しています。
スムーズに眠るためには、体の深部体温(脳や臓器など体の深い部分の体温)が低くなることが大切です。
しかし、生理前に分泌量が増加する女性ホルモンの1つ「プロゲステロン(黄体ホルモン)」には、体温を上昇させる作用があります。そのため、月経前はプロゲステロンの作用で体温が高い状態が続き、寝られなくなるのです。
また、更年期による女性ホルモンの分泌量低下が入眠障害の原因である場合も。
女性ホルモンの分泌量が減少すると自律神経がバランスを崩しやすくなり、夜になっても交感神経が優位なままで、興奮・緊張状態が続いて寝つけなくなります。
ほかにも更年期障害の症状であるホットフラッシュや強い不安感など、不眠をもたらす要因が重なり、入眠障害になるのです。
コーヒーやお茶、チョコレートなどに含まれるカフェインの覚醒作用は効果がなくなるまでに時間がかかるため、夕方以降に摂取すると就寝時間になっても眠れなくなることがあります。
また、寝付きを良くするために「眠る前の一杯」を習慣にしている人もいるかもしれません。
寝る前のアルコールは一時的に入眠を促しますが、その後の覚醒作用によって眠りが浅くなって睡眠の質が低下します。
寝る前の飲酒が習慣化するほど、酒量は増加。眠るためにより多くのお酒が必要となり、やがてアルコール依存症を引き起こす可能性が高くなります。
その他に、ステロイド系や中枢神経に作用するものなど、服用している薬が入眠障害の原因となるケースもあります。
眠れないことに不安や焦りを感じて、寝るためにとる対処行動が余計に入眠障害を悪化させる可能性が高いことが、大学生を対象に実施された調査によって報告されています(※)。
※:入眠障害と入眠時の対処行動の関連/行動医学研究 Vol.17,No.1
「寝つきが悪い…」睡眠に悩む人必見!セロトニンを増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る
入眠障害の症状と原因について分かったところで、次は入眠障害を改善するための対処法についてご紹介します。
それぞれの対処法について、以下で具体的に解説いたします。日常生活の中で実践できる方法ばかりですので、ぜひ試してみてくださいね。
起床後に日光を浴びることで、セロトニンの分泌を促すことができます。起きたらカーテンを開けて朝日を浴びるようにしましょう。
朝、セロトニンを十分に分泌することでしっかりと目が覚め、約14~16時間後にメラトニンが分泌されることで寝付きが良くなります。
このパターンを継続することで体内時計が整い、夜になると眠りにつきやすくなります。
一定のリズムで体を動かすことが、セロトニンの分泌を増加させることが分かっています(※)。
ただし寝る前に激しい運動をすると交感神経が活発になり逆効果となりますので、日中にウォーキングや体操、足踏み運動といった軽い運動を心がけましょう。
適度な運動はストレス解消にもなりますので、ストレスによるセロトニンの減少を防ぐことにも繋がります。
※:佐野新一, et al. "踏み台昇降運動によるセロトニン神経系の賦活." 北陸大学紀要 26 (2002): 39-48.
セロトニンを分泌を促す栄養素と、ストレスを緩和する成分が含まれた食べ物を摂ることが眠りの質の向上に繋がります。
セロトニンの分泌を促すため、セロトニンの原料となる「トリプトファン」と、トリプトファンからセロトニンを生成する際に必要な「ビタミンB6」を含む食品を摂取しましょう。
トリプトファンを多く含む食品
ビタミンB6を多く含む食品
ストレスを軽減する働きがあることで注目されているGABA。
GABAは副交感神経を活発にしてリラクゼーション効果が期待できること(※1)や、入眠までの時間を短縮して深い睡眠の時間を増やす効果と、起きた際の気分の良さを改善すること(※2)が報告されています。
※1:藤林真美, 神谷智康, 高垣欣也, 森谷敏夫 GABA経口摂取による自律神経活動の活性化 日本栄養・食糧学会誌 61 (3), 129-133, 2008
GABAを多く含む食品
毎日の食事のみでセロトニンを増やす成分やGABAなどを十分に摂取することが難しい場合は、睡眠サプリメントで補う方法もあります。
睡眠の質を高めるために効果的おすすめの成分が、天然ハーブの一種である「ラフマ」です。
ラフマの葉っぱから抽出したラフマ由来ヒペロシド、イソクエルシトリンは、セロトニンの体内での減少を抑えつつ増加させることで、眠りの深さ、睡眠の質を向上させることが認められています(※)。
※:寺尾純二, メンタルヘルスを支える栄養科学 - 食品成分の抗うつ様活性評価 -, 四国医誌, 66, 123-126 (2010)
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る
夜に眠れないと、日中についウトウトしてしまうことがありますよね。移動中の電車の中や会議中など、寝落ちトラップは至る所にあります。
小田
私が習慣にしているのは、15分間の昼寝です。
昼食後、デスクに顔を伏せて寝ていますが、目覚めた時には頭がスッキリします。午後の仕事効率も上昇するので、一押しの習慣です。
とは言え、長時間の昼寝は夜の睡眠時間に影響を与えて入眠障害を引き起こす原因になります。
昼寝の効果を最大限に活かすためには、正午~午後3時の間で10分~20分程度とるようにしましょう。
眠りにつく環境も、寝付きの良さと睡眠の質に関係しています。
快適な寝室の温度は夏は25℃~26℃、冬から春先が16℃~19℃(※1)、結果として寝床内での体周辺の温度は33℃になっていれば睡眠の質は下がらない(※2)とされています。
また、湿度は年間を通じて50%~60%が最適となります(※3)。
エアコンや加湿器、寝具を調整して、快適な環境を整えましょう。
メラトニンは暗くなることで分泌が増えるため、夜になっても明るい環境にいると分泌を妨げてしまいます。
また青白い光はメラトニンの分泌に影響を与えやすい傾向があります。電球色、オレンジ系の照明や間接照明を取り入れると効果的です。
私はリビングと寝室にリモコンとスマホで操作できるスマートライトを取り付け、寝る3時間前を目安に明るさを抑え、オレンジ色になるようにタイマーも設定しています。
起床時間に点灯するように設定すると自然な目覚ましにもなるので、おすすめのアイテムです。
香りには色々な作用があり、睡眠にも良い影響をもたらします。
私が特に効果を実感したのは、リラックス作用が高いことで知られる「ラベンダー」でした。
小田
ラベンダーの香りを使った様々なリラックスグッズが販売されていますが、中でも枕にスプレーするピローミストは手軽に使えて便利でした。
また、ストレス軽減や心を穏やかにする効果がある「ベルガモット」の爽やかな甘い香りもお気に入りです。
男女問わず好感度の高い香りだと思いますので、ハンカチに一滴落として持ち歩けば、日中のリラックスグッズにもなりますよ。
※1,3:宮崎, 総一郎, and 佐藤. "医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック."
寝付きを良くするためのルーテインをご紹介します。深部体温を下げることと、副交感神経を優位にするのがポイントです。
人は身体の深部体温が下がると眠くなり、入眠しやすくなる性質を持っています。
お風呂に浸かることで一度上がった深部体温は、その後に元に戻そうとする働きにより下がります。ただしあまり熱いお湯につかると交感神経を刺激して逆効果となりますので、寝る1~2時間前に約40℃の少しぬるめのお風呂につかるのが重要です。
お風呂にはリラックスして副交感神経を優位にする効果もあるので、寝付きの悪さに悩んでいる人はシャワーのみではなくできるだけ湯船に浸かるようにしましょう。
温かい飲み物を摂取することでも、体温を上昇させた後に体の中心部が冷えていく過程で眠気を感じやすくなります。
ポイントは、カフェインを含まない飲み物をゆっくりと少しずつ飲むこと。ハチミツを加えたホットミルクや、リラックス効果が高いカモミールのハーブティーがおすすめです。
寝る前に軽いストレッチやヨガのポーズを行うと、身体の緊張がほぐれて副交感神経が優位になります。
特にヨガは深い呼吸を意識して行うため、リラックス効果が抜群です。
小田
最初は「面倒だな」と思うかもしれませんが、まずは3日間続けてみてください。
効果を実感できると、毎日やることが当たり前のように感じられてきますよ。
寝室・寝床での何気ない行動が寝付きの悪さに繋がっているケースもあるので、注意が必要です。
不眠が続くと、「今夜こそは早く寝よう」と思って、眠気を感じていなくても寝床に入ってしまうことがあると思います。
私自身も「今日は長く眠って睡眠不足を解消しよう!」と思い、眠気を感じていないのにベッドへ入った結果、却って目が覚めて眠れなくなった経験があります。
そのような経験を繰り返すと、寝室や寝具などが「眠れない場所」として意識に刻み込まれ、寝室や寝具に入ることで入眠障害が悪化する可能性が出てきます。
寝床へ入るのは、眠気を感じた時だけにしましょう。
寝付けない時は、つい時計やスマホで時間を確認してしまいます。しかし、時間を確認することで、ますます焦りや不安な気持ちが大きくなって余計に眠れなくなるという悪循環に…。
またスマホのブルーライトにはメラトニン分泌を抑制し脳を覚醒させる作用もあるので、眠れなくなります。
「良い睡眠=長い時間眠ること」ではありません。睡眠で大切なのは長さよりも質であることを意識して、時間のことは気にしないようにしましょう。
入眠障害で辛いのは、寝床に入っても眠れない焦りや不安に襲われて、余計に目が冴えてしまうことです。「寝よう」と思うほど、頭はどんどんハッキリしてくるんですよね。
もしも寝床に入って20分以内に眠れない場合は、一度寝床から離れてみませんか。
足やおなかを温めて副交感神経を優位にしつつ、リラックスできる写真や絵を眺めたり、眠りを誘うハーブティーを飲んだりするのもおすすめです。
今回は、入眠障害の症状や原因、改善方法をご紹介しました。
ベッドに入っても頭が冴えて、時計の針がカチカチ鳴るのを何時間も聞いているのは辛いものです。しかも、日中の寝てはいけないタイミングに限って眠気が襲ってくることもしばしば…。
入眠障害による睡眠不足は、心身の健康リスクを上昇させるだけでなく、居眠り運転や仕事中の重大な事故などを引き起こす恐れもあります。
しかし適切に対処することで睡眠の質が高くなり、生活の質が向上するだけでなく、生活習慣病やうつ病などの発症リスクを下げられるでしょう。
入眠障害の自覚がある人は、生活習慣の見直しによる改善を目指しましょう。長期間症状が続き改善が難しい場合は、一度医師や専門機関に相談することも大切です。
入眠障害でお悩みの方向けに、よくあるご質問と回答をまとめました。入眠障害の治し方の参考にしてみてください。