最終更新日:2025.1.15
ベッドや布団に入ってもなかなか眠れない人や、寝つくまでに時間がかかる人は、入眠障害かもしれません。
寝つきが悪くなる入眠障害は不眠症状の一つで、睡眠時間が短くなるだけでなく、睡眠全体の質が悪くなります。
今回は、眠れない原因や入眠障害の症状、寝つきを良くするための対処法などを詳しく解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
寝床に入っても目が冴えて寝られない日が頻繁にある人は、入眠障害の疑いがあります。
入眠障害は、不眠症状の中でも特に多い睡眠トラブルです。
入眠障害には明確な基準はありません。しかし、以下の症状が続いている場合は入眠障害の可能性が高いと言えるでしょう。
入眠障害になると慢性的な睡眠不足だけでなく、睡眠全体のリズムが狂うことで眠りの質が低下します。
その結果、昼間に強い眠気を感じて集中力低下を招いたり、メンタルが安定せず気持ちの浮き沈みが激しくなったりすることが多くなります。
入眠障害が与える悪影響
入眠障害は、複数の原因が絡み合って引き起こされることが多い不眠症状です。
寝つきが悪くなる主な原因を挙げていきますので、思い当たる要因がないかチェックしてみましょう。
それぞれの内容について詳しく解説いたします。
入眠障害を引き起こす大きな原因が、ストレスです。
ストレスがたまると、“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」の分泌量が減少します。
セロトニンは、朝目覚めてから太陽の光を浴びると分泌が始まり、約15時間後に “睡眠ホルモン”と呼ばれる「メラトニン」へと変化します。
メラトニンが十分に分泌されることでスムーズに眠れるようになり、睡眠の質も向上。睡眠リズムが整って、成長ホルモンの分泌や疲労回復、記憶の整理・保存などが適切に行われるようになるのです。
しかし、ストレスによってセロトニンの分泌量が少なくなると、メラトニンの分泌量も減少。入眠障害を引き起こしやすくなります。
セロトニンには、自律神経の交感神経と副交感神経が適切に切り替わるよう調節する役割もあります。
自律神経とは
ストレスによりセロトニンの分泌量が減ると、自律神経がバランスを崩しやすくなります。
すると、就寝時間になっても交感神経が昂った興奮・緊張状態が続き、眠れなくなるのです。
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
生活リズムの乱れも、入眠障害を引き起こす大きな要因です。
起床・就寝時間、食事のタイミングが毎日バラバラな人は、体内時計が乱れやすくなります。
すると、自律神経がバランスを崩しやすくなり、ベッドや布団に入ってもなかなか寝られない日が多くなるでしょう。
女性の入眠障害には、女性ホルモンの増減が影響を与えている場合が少なくありません。
生理前に分泌量が増える女性ホルモンの1つ「プロゲステロン(黄体ホルモン)」には、体温を上昇させる作用があります。
スムーズに眠るためには、体の深部体温(脳や臓器など体の深い部分の体温)が低くなることが大切です。
しかし、月経前はプロゲステロンの作用で夜になっても深部体温が下がらず、寝つきが悪くなります。
更年期になると、女性ホルモンの分泌量が減少します。
その影響で自律神経が乱れやすくなり、夜になっても交感神経が優位な状態が続いて眠れなくなるのです。
また、ホットフラッシュや強い不安感など更年期障害のさまざまな症状も、入眠障害を引き起こす大きな原因となります。
病気によって寝付きが悪くなることも珍しいことではありません。入眠障害の原因になりやすいのが、以下の疾患です。
「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」は40代以上の女性に多い疾患です。発症原因の一つとして、鉄分不足が挙げられます。
レストレスレッグス症候群になると、夕方から夜にかけて脚にムズムズとした感覚や虫が這うような感覚が出現し、「脚を動かしたい」という欲求に襲われて眠れなくなります。
アレルギー性鼻炎は夜間から早朝にかけて症状が悪化することが多いと言われています。
アレルギー性鼻炎患者を対象に行われた睡眠調査では患者の63%が睡眠の質の悪さを感じ、特に入眠困難が示唆される結果が明らかになりました(※1)。
糖尿病の人は、睡眠障害を引き起こしやすいことが指摘されています。
ある調査では、糖尿病外来を受診した人のうち約40%に睡眠障害があり、中でも入眠困難を訴える患者が多いことが報告されました(※2)。
うつ病と睡眠障害には深い関連性があり、うつ病の病相期では入眠障害が73.3%、熟眠障害が89.9%、全体として94.1%以上の患者に何らかの睡眠障害が認められたという調査結果があります(※3)。
ほかにも不安障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、さまざまな精神的疾患が入眠を妨げる要因となります。
※1:本間あや. "アレルギーと睡眠を制御する体内時計." 日本鼻科学会会誌 60.1 (2021): 101-102.
※2:清水夏恵, 村松芳幸, and 成田一衛. "糖尿病患者の睡眠障害について (特集 内分泌・代謝疾患の心身医療)." 心身医学 53.1 (2013): 29-35.
※3:精神疾患における睡眠・覚醒リズムの評価とその意義/精神経誌(2010)112巻9号
コーヒーやお茶、チョコレートなどに含まれるカフェインの覚醒作用は効果がなくなるまでに時間がかかるため、夕方以降に摂取すると就寝時間になっても眠れなくなることがあります。
また、寝付きを良くするために「眠る前の一杯」を習慣にしている人もいるかもしれません。
寝る前のアルコールは一時的に入眠を促しますが、その後の覚醒作用によって眠りが浅くなって睡眠の質が低下します。
寝る前の飲酒が習慣化するほど、酒量は増加。眠るためにより多くのお酒が必要となり、やがてアルコール依存症を引き起こす可能性が高くなります。
その他に、ステロイド系や中枢神経に作用するものなど、服用している薬が入眠障害の原因となるケースもあります。
眠れないことに不安や焦りを感じて、寝るためにとる対処行動が余計に入眠障害を悪化させる可能性が高いことが、大学生を対象に実施された調査によって報告されています(※)。
※:入眠障害と入眠時の対処行動の関連/行動医学研究 Vol.17,No.1
「寝つきが悪い…」睡眠に悩む人必見!セロトニンを増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る
次にご紹介するのは、入眠障害を改善するための対処法です。
それぞれの対処法について、以下で具体的に解説いたします。簡単に実践できるものばかりですので、毎日の暮らしに取り入れやすい方法を試してみませんか。
起床後に日光を浴びることで、セロトニンの分泌を促せます。
朝起きたら、まずカーテンを開けて朝日を浴びるようにしましょう。
この習慣を毎日続けることで体内時計が整い、入眠障害の改善効果が期待できます。
研究によって、一定のリズムで体を動かすことがセロトニンの分泌量増加につながることが分かっています(※)。
朝のウォーキングや体操、足踏み運動などの軽い運動をはじめ、同じリズムで歯を磨くのも効果的です。
※:佐野新一, et al. "踏み台昇降運動によるセロトニン神経系の賦活." 北陸大学紀要 26 (2002): 39-48.
セロトニンの原料となる「トリプトファン」と、トリプトファンからセロトニンを生成する際に必要な「ビタミンB6」を含む食品を積極的に摂ることで、入眠障害の改善効果が期待できます。
トリプトファンを多く含む食品
ビタミンB6を多く含む食品
ストレスを軽減する働きがあることで注目されているGABA。
GABAは副交感神経を活発にしてリラクゼーション効果が期待できること(※1)や、入眠までの時間を短縮して深い睡眠の時間を増やす効果、また起きた際の気分の良さを改善すること(※2)が報告されています。
※1:藤林真美, 神谷智康, 高垣欣也, 森谷敏夫 GABA経口摂取による自律神経活動の活性化 日本栄養・食糧学会誌 61 (3), 129-133, 2008
GABAを多く含む食品
毎日の食事のみでセロトニンを増やす成分やGABAなどを十分に摂取することが難しい場合は、睡眠サプリメントで補う方法もあります。
睡眠の質を高めるために効果的おすすめの成分が、天然ハーブの一種である「ラフマ」です。
ラフマの葉っぱから抽出したラフマ由来ヒペロシド、イソクエルシトリンは、セロトニンの体内での減少を抑えつつ増加させることで、眠りの深さ、睡眠の質を向上させることが認められています(※)。
※:寺尾純二, メンタルヘルスを支える栄養科学 - 食品成分の抗うつ様活性評価 -, 四国医誌, 66, 123-126 (2010)
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る
温かい飲み物を摂取することでも、体温を上昇させた後に体の中心部が冷えていく過程で眠気を感じやすくなります。
ポイントは、カフェインを含まない飲み物をゆっくりと少しずつ飲むこと。ハチミツを加えたホットミルクや、リラックス効果が高いカモミールのハーブティーがおすすめです。
夜に眠れないと、日中についウトウトしてしまうことがありますよね。移動中の電車の中や会議中など、寝落ちトラップは至る所にあります。
小田
私が習慣にしているのは、15分間の昼寝です。
昼食後、デスクに顔を伏せて寝ていますが、目覚めた時には頭がスッキリします。午後の仕事効率も上昇するので、一押しの習慣です。
とは言え、長時間の昼寝は夜の睡眠時間に影響を与えて入眠障害を引き起こす原因になります。
昼寝の効果を最大限に活かすためには、正午~午後3時の間で10分~20分程度とるようにしましょう。
眠りにつく環境も、寝付きの良さと睡眠の質に関係しています。
快適な寝室の温度は夏は25℃~26℃、冬から春先が16℃~19℃(※1)、結果として寝床内での体周辺の温度は33℃になっていれば睡眠の質は下がらない(※2)とされています。
また、湿度は年間を通じて50%~60%が最適となります(※3)。
エアコンや加湿器、寝具を調整して、快適な環境を整えましょう。
メラトニンは暗くなることで分泌が増えるため、夜になっても明るい環境にいると分泌を妨げてしまいます。
また青白い光はメラトニンの分泌に影響を与えやすい傾向があります。電球色、オレンジ系の照明や間接照明を取り入れると効果的です。
小田
私はリビングと寝室にリモコンとスマホで操作できるスマートライトを取り付け、寝る3時間前を目安に明るさを抑え、オレンジ色になるようにタイマーも設定しています。
起床時間に点灯するように設定すると自然な目覚ましにもなるので、おすすめのアイテムです。
※1,3:宮崎, 総一郎, and 佐藤. "医療・看護・介護のための睡眠検定ハンドブック."
寝付きを良くするためのルーテインをご紹介します。深部体温を下げることと、副交感神経を優位にするのがポイントです。
人は身体の深部体温が下がると眠くなり、入眠しやすくなる性質を持っています。
お風呂に浸かることで一度上がった深部体温は、その後に元に戻そうとする働きにより下がります。ただしあまり熱いお湯につかると交感神経を刺激して逆効果となりますので、寝る1~2時間前に約40℃の少しぬるめのお風呂につかるのが重要です。
お風呂にはリラックスして副交感神経を優位にする効果もあるので、寝付きの悪さに悩んでいる人はシャワーのみではなくできるだけ湯船に浸かるようにしましょう。
寝る前に軽いストレッチやヨガのポーズを行うと、身体の緊張がほぐれて副交感神経が優位になります。
特にヨガは深い呼吸を意識して行うため、リラックス効果が抜群です。
小田
最初は「面倒だな」と思うかもしれませんが、まずは3日間続けてみてください。
効果を実感できると、毎日やることが当たり前のように感じられてきますよ。
就寝時刻になったからと言って眠くないのにベッドへ入り、そのまま眠れない時間を過ごすことが入眠障害を悪化させる要因となります。
寝床で眠れない時間が長くなると、寝室や寝具などが「眠れない場所」として意識に刻み込まれてしまいます。
その結果、寝室や寝具に入ることで余計に眠れなくなる可能性が高くなるのです。
もしも寝床に入って20分以内に眠れない場合は、一度寝床から離れましょう。
今回は、なかなか寝つけない「入眠障害」の症状や原因、改善方法をご紹介しました。
入眠障害による寝不足や睡眠の質の低下は、居眠り運転や仕事中の重大事故などを引き起こす危険性があるだけでなく、心疾患など将来的な健康リスクを上昇させます。
「最近、スムーズに寝つけない」という人は、生活習慣や食生活を見直してみませんか。
それでも症状が改善しない時は、医師や専門機関に一度相談することをおすすめします。
入眠障害でお悩みの方向けに、よくあるご質問と回答をまとめました。入眠障害の治し方の参考にしてみてください。