最終更新日:2024.12.18
「お腹が空いて眠れない」「空腹感で目が冴えてしまった」。
そんな経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか?
しかし、寝る前に食べるのは太る原因になりそうで、食べ物を口にすることにためらいを感じてしまいますよね。
その結果、空腹感で寝つけないまま深夜になり、翌日は寝不足に…。
そこで今回は、お腹が空くと眠れない理由や、寝る前に食べても大丈夫な食品などについて詳しく解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
お腹が空くと眠れないのには、ちゃんと理由があります。
空腹感で目が冴えてしまう理由について、順序立てて解説していきましょう。
睡眠中、体内の血糖値は徐々に低下していきます。
睡眠中に血糖値が低下しすぎると、体はそれを危険信号として感知します。
特に脳は血糖を重要なエネルギー源として使用しているため、血糖値が低い状態が続くと「エネルギーが足りない」と認識し、体のエネルギー供給を回復させるための反応が起こります。
血糖値が低下すると、それに対応するために交感神経が活性化されます。
交感神経は、いわゆる「戦うか逃げるか」の反応に関与し、体を活動的な状態に保つ役割を担っています。
交感神経が刺激されるとアドレナリンが分泌され、以下の反応を引き起こします。
アドレナリン分泌による反応
アドレナリンの分泌は、空腹感を強く感じさせるだけでなく、身体を覚醒させる作用があります。
そのため眠りが浅くなり、結果的に「お腹が空いたから寝られない」と感じることになるのです。
お腹が空いた状態で眠ることは、健康へ何らかの影響を及ぼす可能性が否定できません。
空腹状態で寝た場合に考えられる影響について、解説します。
食事を摂らずに寝ると、血糖値が低下します。
血糖値が過度に低下すると、体はそれに対抗するために副腎皮質ホルモンのコルチゾールを分泌します。
コルチゾールは、肝臓で糖新生を促進して血糖値を上昇させます。
それと同時に覚醒を促す作用があるため、深い睡眠を妨げて眠りの質を低下させる要因となるのです。
空腹時に起こるコルチゾールの分泌をはじめとしたホルモン反応は、交感神経が優位に立つ状況を作り出します。
通常、睡眠中は副交感神経が働いて心拍数や血圧を低下させ、体を修復・回復へと導きます。
しかし、空腹状態で眠ると交感神経が優位になり、以下の影響が生じる可能性があります。
交感神経が優位になっていると、深い睡眠に入るのが難しくなり、レム睡眠やノンレム睡眠が不安定になります。
その結果、睡眠の質が低下し、朝起きたときの疲労感が強くなる可能性があります。
空腹を感じた状態で眠ることが習慣化すると、交感神経が常に優位になり、自律神経の乱れが慢性化することも考えられます。
自律神経は体の様々な機能をつかさどっているため、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、心血管系や内分泌系疾患、メンタル面での不調などを引き起こす大きな要因となります。
空腹によって寝つけなくなると睡眠全体の質が低下して、睡眠不足が引き起こされます。
寝不足が慢性化した場合に考えられる健康リスクの代表的なものが、以下の3つです。
睡眠不足が続くと免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。
睡眠不足はインスリン抵抗性を高め、血糖値の上昇を引き起こすことがあります。
寝不足による血糖値上昇が長期間続くと、2型糖尿病のリスクが増加します。
睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌量を増やして食欲を増加させる一方、満腹感を感じさせるホルモン「レプチン」の分泌量を減少させます。
これによって過食が引き起こされ、肥満のリスクが高まります。
昔から「寝る前に食事をするとダメ」とよく言われますが、その理由はなぜでしょう?
寝る前に物を食べない方が良い主な理由として挙げられるのが、体内時計遺伝子の一つである「BMAL1(ビーマルワン)」の存在です。
BMAL1とは?
埼玉医科大学医学部の池田正明教授によって発見された時計遺伝子の一つです。
「BrainandMuscleArnt-like1」の頭文字から「BMAL1」と名付けられました。
脂肪を蓄える働きをもつタンパク質の一つであり、午後10時頃から翌午前2時頃にかけて分泌量が増加します。
逆に、日中はあまり分泌されません。
夜10時以降は、BMAL1の分泌量が多い時間帯です。
そのため、夜遅くに食事をするとBMAL1の影響で食べたものが脂肪になりやすく、太る原因となります。
空腹感で眠れないとはいえ、寝る前に食べるのは太りそうで気になりますよね。
お腹が空いて寝られない時は、消化に良い食べ物や、体を温めてリラックスさせる効果が高い飲み物がおすすめです。
ヨーグルトには、プロバイオティクスと呼ばれる乳酸菌やビフィズス菌などが含まれています。
プロバイオティクスは腸内環境を整えると同時に、良質な睡眠に欠かせないホルモン「メラトニン」の原料であるセロトニンを生成するのに欠かせないトリプトファンの吸収を助けます。
そのため、プロバイオティクスの摂取が良質な眠りをもたらすのです。
また、ヨーグルトにはカルシウムも豊富に含まれています。
カルシウムには脳の興奮を抑えて神経を落ち着かせる作用があるため、寝つきを良くして深く眠る効果が期待できます。
ヨーグルトと同じ乳製品のチーズも、お腹が空いて眠れない時におすすめの食品です。
特にモッツァレラチーズは、チーズ類の中でも脂質と塩分が控えめ。
モチモチした食感で噛み応えがあるため、少量でも満腹感を感じられるでしょう。
アーモンドには、マグネシウムが豊富に含まれています。
マグネシウムの主な作用として挙げられるのが、血糖値の安定です。
血糖値の急激な低下を防ぐことで寝る前の空腹感を和らげ、深い睡眠を促します。
また、食前15分以内にアーモンドを食べると、ご飯や麺類といった炭水化物を摂取した後の血糖値の急上昇を軽減する効果があると考えられています(※)。
血糖値の急激な上昇は、血糖値スパイクという血糖値の乱れを招く大きな要因となります。
血糖値スパイクは心筋梗塞や脳梗塞、がん、認知症などの発症リスクを高めるほか、食後に強い眠気を催す原因の一つです。
低カロリーで低糖質ながらもタンパク質が豊富な卵は、夜食にぴったりな食べ物です。
寝る前に食べると、睡眠中の筋肉修復効果が期待できます。
固ゆでよりも、消化しやすい半熟卵がおすすめです。
ハチミツには様々な健康効果が期待できることが分かっています。
その作用は睡眠に対しても例外ではなく、ハチミツをなめて寝ると睡眠の質が良くなる可能性が高いことが分かっています。
眠りの質を高めるハチミツの摂り方は、就寝時間の30分~1時間程度前に大さじ1杯のハチミツをなめることです。
この際、ハチミツだけでは甘いと感じる人は、ホットミルクに溶かして飲むのがおすすめです。
牛乳に含まれるトリプトファンとはちみつのグルコースを同時に摂取すれば、脳におけるトリプトファンの利用効率が高まり、より高い快眠効果が得られる可能性があります。
※ハチミツは1歳未満の乳幼児が食べないように注意してください。
カモミールはリラックス効果が高いハーブティーで、特に睡眠を促進する効果があることが知られています。
カモミールに含まれるフラボノイド成分が神経を鎮め、眠りやすくします。
今回は、空腹で眠れなくなる理由や、お腹が空いて寝られないときにおすすめの食品などについて解説しました。
お腹が空いた状態では寝付けないだけでなく、空腹感で眠りが浅くなって翌日の活動に影響が出る場合も。
お腹が空いて眠れない時は無理に我慢せず、今回ご紹介した食べ物で空腹感を満たしてから眠ってくださいね。
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