最終更新日:2024.12.2
昼食後に眠気を感じて、午後の仕事や授業に集中できない…。そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
食後に眠たくなるのには、原因があります。
今回は、ランチを食べた後に眠くなる原因や眠気を防ぐ食事のポイント、眠気対策などについて、睡眠アドバイザーとしての知識を交えながら解説します。
食後、仕事や勉強に支障をきたすような強い眠気を感じることが多い人は、眠気対策の参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
食後に眠くなる主な原因として考えられるのが、以下の3つです。
血糖値スパイクとは、食後にだけ起こる血糖値の急激な上昇・下降です。
血糖値グラフがスパイクのような軌跡を描くことから、血糖値スパイクと呼ばれています。
血糖値スパイクで眠気が起こる仕組み
血糖値スパイクが起こると、血管内で有害物質の活性酸素が大量に発生し、血管を傷つけます。
傷ついた血管を修復するために血管の内側が厚くなり、血栓で血管が詰まりやすい状態に。
心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが上昇する要因となります。
オレキシンは、日中の睡眠覚醒リズムの調節を行い、欠乏すると日中の眠気増加や居眠りなどを引き起こす神経伝達物質です。
1998年に日本人研究者によって視床下部で発見されました(※)。
オレキシンは血糖値が上がると分泌量が低下し、脳を睡眠モードへ切り替えます。
食後は血糖値が上昇するため、オレキシンの分泌が抑制されて眠くなるのです。
食事性低血糖とも呼ばれ、高齢者に起こりやすい症状です。
食後に全身の血管が異常に拡張し、急激に血圧が下降することで生じます。
症状として、眠気のほかにめまいやふらつき、失神、倦怠感、吐き気などがあります。
自律神経失調症の人やパーキンソン病患者、高血圧の人がなりやすく、死亡リスクを高める要因の一つです。
特徴として、朝食後または昼食後に起こりやすいことが挙げられます(※)。
※大舘隼, et al. "高齢者の食後低血圧―見逃される低血圧―." 日本老年療法学会誌 3 (2024).
食後の眠気を引き起こす要因である血糖値スパイクは糖尿病の前段階であり、放置すると糖尿病に移行する可能性が高いといわれています。
■糖尿病とは
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが作用せず、血液中のブドウ糖が増加する病気です。
血糖が高いと血管が傷つきやすくなり、放置しておくと心臓病や腎不全、失明、足の切断など深刻な事態をもたらします。
糖尿病は自覚症状がほとんどない疾患です。
そのため、気付いた時にはかなり進行していることも少なくありません。
また、定期的に健康診断を受けて異常がない人でも、実は食後血糖値が高い「隠れ糖尿病」「糖尿病予備軍」の場合があります。
健診では食後10時間以上経過した状態で採血するため、「空腹時血糖値」しか分かりません。
つまり、採血をする頃には血糖値が正常値に戻ってしまうので糖尿病の兆候が見落とされてしまうのです。
午後の仕事や授業に支障をきたすほど食後の眠気がひどい人は、一度医師に相談してみましょう。
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昼食の食べ方を少し工夫するだけで、午後の強い眠気に対する予防効果が期待できます。
炭水化物は食後低血圧を起こしやすいことが分かっています。
食後低血圧が原因で食後に眠くなりやすい人は、朝食と昼食では炭水化物の摂取量を少なくして、夕食で補うようにしましょう(※1)。
食前の飲水が、食後低血圧の有益な治療法として注目されています。
また、レモン水を食前に飲むことで、レモン果汁に含まれるクエン酸の働きで食後の高血糖を予防できることが実験によって明らかになっています。(※2)
朝食を食べないと、朝食を食べた時に比べて昼食後に血糖値が上がりやすくなります。
食物繊維が豊富で栄養バランスのとれた朝食を摂ることが、ランチ後の血糖値スパイクを予防し、眠気を防ぎます(※3)。
※1:大舘隼, et al. "高齢者の食後低血圧―見逃される低血圧―." 日本老年療法学会誌 3 (2024).
※2: Yagi, Masayuki, et al. "レモン果汁と米飯の摂取が食後血糖値に及ぼす影響."
※3:Hayashi, S., Takabe, W., Ogura, M., Yagi, M., & Yonei, Y. 昼食後血糖に及ぼす朝食の影響.
食物繊維には、糖の吸収を緩やかにする作用があります。
そのため、最初に食物繊維豊富な野菜を食べる「ベジファースト」を意識することが、血糖値の急上昇予防につながります。
最初に野菜を食べて、肉や魚といったタンパク質のメインディッシュ、最後にパンやご飯などの炭水化物という順番で食べると、血糖値スパイクの発生を抑えられるでしょう。
食べるスピードが高いと、血糖値が上昇しやすくなります。
また、ゆっくり食べることで満腹感を得やすく、食べ過ぎを予防できます。1口につき20~30回の咀嚼を目標にしましょう。
食後すぐに運動すると、血液中のブドウ糖が筋肉で消費されて血糖値が低下します。
食後1時間~2時間の間で、ウォーキングやラジオ体操などの軽い運動を15分程度行いましょう。
筋肉がない人は、筋トレも合わせて行うと効果的です。
炭水化物を摂るなら、食物繊維が豊富な未精製のものを選びましょう。
食物繊維は糖の吸収を穏やかにして、血糖値の急激な上昇を予防します。
ライ麦パンや玄米など「黒いもの」に置き換えると、血糖値スパイクの予防に効果的です。
納豆やオクラ、山芋、なめこなどネバネバした粘り気がある食材は、糖の吸収を遅らせて血糖値の急上昇を抑制します。
和食はネバネバ食材を摂りやすいのでおすすめです。
食後のデザートとしてフルーツを食べるなら、柑橘類がおすすめです。
柑橘類に含まれる酢酸は、消化酵素であるα-アミラーゼの働きを抑制し、血糖値の上昇を緩やかにします。
ただし、果物には「果糖」と呼ばれる糖分が含まれています。
果糖は血糖値の高さに影響を及ぼすことはないとされていますが、中性脂肪に変化しやすい特徴があるため、食べすぎには注意しましょう。
食後の眠気は誰にでも起こるものであり、深刻に考える必要はないでしょう。
しかし、毎日のように仕事や勉強に支障をきたすほど強い眠気に襲われる場合や、十分な睡眠時間を確保しているのに眠い場合は、血糖値スパイクが原因かもしれません。
また、夜間の睡眠の質が低下している場合も、日中に強い眠気を感じやすくなります。
寝つきが悪い、眠りが浅いなどの症状がある場合は、眠りの質に注目してみましょう。
睡眠の質を高めるためには、生活習慣や食事内容の見直すことが欠かせません。
手間をかけずに良質な眠りを得たいなら、睡眠をサポートする成分が配合されたサプリメントを活用するのもおすすめです。
自分に合う方法で毎日の眠りを良質なものにして、ランチ後の眠気を予防しましょう!
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