最終更新日:2024.1.30
毎日の晩酌は、一日の疲れやストレスを忘れさせてくれる、癒しのひととき。中にはお酒を飲むと眠くなって、そのまま寝落ちしてしまう日が少なくないという人もいるかもしれません。逆に、お酒を飲むと目が冴えて眠れないという人もいるでしょう。
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、睡眠とお酒の関係について解説していきます。寝る前にお酒を飲む習慣があり、近ごろ夜中に覚醒することが増えて睡眠の質が低下していると感じている人は、ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
日本人の5人に1人は、何らかの不眠症状を抱えていると言われています。しかし、不眠症を改善するために専門の医療機関を受診したり、医師に相談したりする人はごく少数のようです。
2002年に実施された10カ国35,327人を対象に行った世界横断調査で、不眠を解消するための手段として「アルコールを飲む」と回答した日本人は30%にのぼり、10カ国中で最多でした。また、医療機関を受診している割合はスペインやドイツ、ブラジル、ベルギーでは40~50%でしたが、日本人は10%以下という結果に。
ちなみに、不眠対策としてカフェインを控えたと回答した人も日本人では少なく、約10%。スペインやドイツ、ベルギーが40~45%程度であることに比べると、随分少ない印象です(※1)。
また、2000年に行われた日本全国から無作為に選ばれた地域住民へのアンケートで、睡眠補助薬としてアルコールを週に1回以上摂取すると回答した人は男性が48.3%、女性は18.3%でした(※2)。
これからの調査結果からも分かるように、日本人にとって眠れない時にお酒を飲むことは珍しいことではありません。しかし、眠れないからと言って寝る前にアルコールを摂取するのは、実は不眠を悪化させる可能性が高いのです。
※1:大川匡子. "アジアにおける睡眠医療の現状と展望." 保健医療科学 61.1 (2012): 29-34.
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お酒を飲むと、すぐに眠くなる人がいます。その理由として、遺伝子タイプの違いが挙げられます。
アルコールは体内に入ると、肝臓で酵素によってアセトアルデヒドに分解されます。
この分解酵素はADH1Bと呼ばれ、日本人では約7%が働きの弱い「低活性型」に当てはまります。この低活性型の遺伝子をもつ人は翌日になってもお酒が残っていることが多く、アルコール依存症になりやすい傾向があります(※1)。
ADH1Bによって分解されたアセトアルデヒドには強い毒性がありますが、ALDH2という酵素の働きで無害な酢酸へと分解されます。
このALDH2の働きの強さが「お酒に強い」「お酒に弱い」を左右する要素であり、日本人の約40%程度はALDH2の働きが弱い「低活性型」、4%が全く働かない「不活性型」です(※2)。
ALDH2低活性型の人はビール1杯程度でも顔が赤くなり、不活性型の遺伝子をもつ人はお酒をまったく飲めない、もしくはわずかな量のお酒でも顔面紅潮や動悸、頭痛、そして眠気といった反応を起こします(※3)。
このことから、お酒を飲んで眠くなるのは「ADH1B低活性型」もしくは「ALDH2低活性型・不活性型」遺伝子タイプの人であると言えるでしょう。
※1:厚生労働省「e-ヘルスネット」1B型アルコール脱水素酵素
※2:林田真梨子, and 木下健司. "飲酒と健康: アルコール体質検査と飲酒の功罪." (2014): 2-10.
※3:吉原達也、笹栗俊之。「ALDH2遺伝子多型と臨床医学」(2012): 82-90.
眠れない夜に、お酒を飲んで寝た経験がある人もいるのではないでしょうか?確かに、適量のアルコールは一時的な鎮静作用によって寝つきを良くします。お酒を飲んで寝ると、睡眠時間の前半に深いノンレム睡眠の量が増えることも分かっています。
しかし、注目すべきは寝た後のこと。アルコールの鎮静作用で寝ついた後も、身体の中ではアルコールの代謝が行われています。
アルコールがアセトアルデヒドに分解されるのに必要な時間は3~4時間程度であり、睡眠中にアセトアルデヒドが生成されることになります。
アセトアルデヒドには覚醒作用があるため、睡眠後半の眠りが浅くなったり、中途覚醒し目が冴えてしまうことが増えたりして睡眠全体の質が低下します(※)。
アルコールの利尿作用によって寝ている間にトイレに行きたくなり、覚醒する回数が増えます。
悪影響はそれだけではありません。尿の回数が増えると体内の水分量が減少し、血液の粘度が高くなってドロドロに。ドロドロの血液は流れが悪く、心臓や脳の血管に血栓ができやすい状態となって、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気の発症リスクを上昇させます。
このように、寝る前の飲酒は覚醒回数を増やして睡眠の質を悪くするばかりでなく、命に関わる病気を誘発するデメリットがあるのです。
※:萱場桃子. "夏季の居住環境と睡眠に関する研究." (2014).
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寝る前のお酒を毎晩の習慣にすると、アルコールによる睡眠作用に体が慣れて、同じ量のお酒では寝つけなくなります。また、アセトアルデヒドの覚醒作用による中途覚醒や夢を見ることが増えて眠りが浅くなり、目覚めても睡眠による回復感が得られません(※)。
そうなると、日中も強い眠気を感じたり、集中力が続かなかったりといった睡眠不足による症状が表れます。
不眠による睡眠不足を解消するためにお酒の量を増やすと、アルコール依存症へと発展する危険性も。アルコール依存症はうつ病の合併率が高く、さらに不眠を悪化させる原因となっています。
また睡眠薬にも一時的な不眠解消効果はありますが、依存性と耐性があるため注意が必要です。睡眠薬を続けて使用することは避け、生活習慣や食生活の見直しとともに、依存性や耐性のない睡眠サプリメントの活用をおすすめします。
※1:内村直尚. "アルコール依存症に関連する睡眠障害." 精神神經學雜誌= Psychiatria et neurologia Japonica 112.8 (2010): 787-792.
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今回は、睡眠とお酒の関係について詳しく解説しました。
アルコールを摂取すれば寝つきが良くなるのは事実ですが、寝る前のお酒には、アルコール依存症へと発展する危険性も。次の日に影響を与えないためにも、お酒を飲むのは寝る時間の4時間前までにしておくことをおすすめします。
寝つきが悪くてついお酒に頼ってしまう人は、睡眠の質を高める生活習慣をとりいれるようにしましょう。