最終更新日:2024.2.5
「すぐに起きる」「夢ばかり見る」「長めに寝たのに、仕事中に強い眠気を感じる」。毎日の睡眠に満足できていない人は、睡眠時間だけではなく眠りが浅いことが原因かもしれません。
今回は睡眠アドバイザーとしての知識を交えながら、眠りが浅い理由と、深い眠りにつく方法として簡単に実践できるライフスタイルの改善策をご紹介したいと思います。睡眠の質に満足できていない方は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
よく眠れたことを「深く眠れた」と表現しますが、なぜ眠りは「浅い」「深い」で言い表されるのでしょうか?
その理由として、「レム睡眠」「ノンレム睡眠」と呼ばれる90分ごとのサイクルで繰り返す眠りの状態が挙げられます。
よく「浅い眠り」と表現されるのが「レム睡眠」で、「レム」とは、英語で「眼球が素早く動く」(Rapid Eye Movement)という意味です。これは、レム睡眠時には眼球が活発であることが由来となっています。
レム睡眠時は、体はリラックスして疲労を回復していますが、脳は働いて記憶の整理や定着を行っています。体は休んでいても脳は覚醒しているため、いわゆる「金縛り」を体験するのはレム睡眠による影響がほとんどです。
脳を休ませて深い睡眠状態になるのが「ノンレム睡眠」。ノンレム睡眠時には成長ホルモンなどが分泌され、体内の機能を整えます。
最近はレム睡眠とノンレム睡眠の両方で夢を見る事が分かっていますが、ノンレム睡眠中に見た夢は記憶に残りにくいのに対して、レム睡眠中に見た夢は覚えていることが多いとされています。眠りが浅い時に「夢ばかり見る」と感じやすいのはそのためです。
このレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返し、目覚めに向かって次第に深いノンレム睡眠から浅いノンレム睡眠が増えていきます。明け方にかけてレム睡眠の割合が徐々に増し、覚醒するのです。
三島和夫. 眠りのメカニズム. e-ヘルスネット
「図4: 夜間睡眠パターン 厚生労働省 (2021)」を基に作成
入眠してから最初の約90分間に訪れるのが、ノンレム睡眠の中でも「N3」や「ステージ4」、「徐波睡眠」と呼ばれる深い睡眠状態です。ノンレム睡眠の深さこそが眠りの質を左右するとも言われ、「眠りのゴールデンタイム」という異名も。
「眠りのゴールデンタイム」でスムーズに深いノンレム睡眠に入り、その後もノンレム睡眠の割合を増やすことができれば満足度が高い睡眠時間を得られますが、寝つきが悪いなどの理由で深いノンレム睡眠に入れなかった場合は、疲労回復が実感できるような質の高い睡眠時間とはならないでしょう。
「日中、眠気で集中できない…」睡眠に悩む人必見!深いノンレム睡眠を増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る
浅い眠りや睡眠不足が続いている人には、以下のような影響があらわれます。
眠りが浅い人の特徴
浅い眠りや睡眠不足が続いている時、体の内部では健康を損なう状態への変化がじわじわと起きています。
睡眠中は成長ホルモンなどが分泌され、免疫力アップや傷ついた箇所を修復。また、疲労回復やストレス緩和、その日あった出来事や吸収した知識などを整理し、脳に固定化しています。
そのため浅い眠りや睡眠不足が続くと疲れやストレスが蓄積し、記憶力の低下にも繋がるのです。
眠りが浅くなる原因として、自律神経やホルモンの影響が挙げられます。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。
日中は心拍数を増やしたり、血圧を上昇させたりと身体の動きを活性化させる交感神経が優位に働き、夕方以降は心拍数を減少させたり、血圧を低下させたりして身体をリラックスモードにする副交感神経が活発になります。この2つの自律神経がバランス良く切り替わることで、身体状態が健康に保たれているのです。
しかし、ストレスや悩みを抱えていたり、緊張状態が続いていたりすると、夜になっても交感神経が優位な状態が持続。交感神経の興奮作用で寝つきが悪くなると、たとえ眠れたとしても最初の深いノンレム睡眠まで到達できず、その夜の眠り全体が浅くなって睡眠の質が悪くなります。
40代半ばから50代前半の女性に多いのが、更年期が原因の不眠です。厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、更年期女性の約半数が不眠や就寝に関する悩みを抱えているとされています。
更年期症状である自律神経の乱れに加えて、女性ホルモンの分泌量低下も原因となります。女性ホルモンの「エストロゲン」には睡眠を調整する働きもあるため、エストロゲンが減ると眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったりするのです。
眠りが浅くなる原因には、“幸せホルモン”と呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が深く関わっています。
ストレスや生活習慣の乱れによってセロトニンの分泌が減少すると、身体的には顔面の筋緊張低下によって顔のしまりがなくなる、背中が丸くなる、などの影響が表れます。精神的な影響としては、気分が滅入る、ストレスによってイライラ感や攻撃性、衝動性が高まるということが報告されています。
日中に分泌されたセロトニンは、夕方以降に脳の松果体という部分で生成される睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となります。ぐっすり眠るためには、日中にセロトニンをしっかり分泌することが必要不可欠なのです。
また、セロトニンは睡眠・覚醒レベルの調節や自律神経の調節にも作用。そのため、分泌量が低下すると良い睡眠がとれなくなり、昼夜に順応した覚醒レベルが調整できなくなります(※)。
※:小西正良, and 吉田愛実. "セロトニン分泌に影響を及ぼす生活習慣と環境." 大阪河崎リハビリテーション大学紀要,(5) (2011): 11-20.
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
深い睡眠が心身にもたらす好影響には、以下のようなものがあります。
深い睡眠(ノンレム睡眠)へスムーズに入眠できると、メラトニンが多量に分泌されます。メラトニンには、強い抗酸化作用や成長ホルモンの分泌を促す作用があります。
「よく寝た」と実感できるような睡眠では、このメラトニンがスムーズに分泌されるのです。
メラトニンの分泌が増えるのに伴い、女性ホルモンの1つである「エストロゲン」も多く分泌されるため、深く眠れた日の朝は肌や髪もツヤツヤに。逆に、睡眠不足が続くとエストロゲンの分泌が減って肌荒れの原因となります。
寝不足が続くと食欲をつかさどるホルモン「レプチン」の分泌量が低下し、逆に食欲を増加させるホルモン「グレリン」が多く分泌されるように。そこに睡眠不足のイライラが重なると、間食や1度の食事量が増加するほか、糖分や脂肪分が多い高カロリーな食べ物を欲するようになります。
逆に、深い眠りは糖代謝などを正常に保つ効果があるため、肥満予防になると言われています。
ストレスを感じると、副腎皮質ホルモン「コルチゾール」が多量に分泌されます。睡眠不足が続くとコルチゾールが増え、ストレスが蓄積しうつ病などを引き起こす可能性も上昇。また、ノンレム睡眠に脳では記憶や感情が整理され、不快な出来事や体験の記憶を削除しています。
深く眠れない日が続くと記憶の整理が上手くいかず、記憶力低下の原因に。ストレス解消のためにも深く眠ることが大切です。
厚生労働省 e-ヘルスネット
「睡眠と生活習慣病との深い関係」
浅い眠りを改善し深い睡眠ノンレム睡眠の割合を増やすコツは、体内時計と自律神経を整えるとともに、睡眠ホルモン「メラトニン」の材料となるセロトニンの分泌を増やすことです。
セロトニンは、朝日を浴びると活発に分泌されるようになります。朝の日光には乱れた体内時計をリセットする効果もあるため、起床したらまずカーテンを開けて太陽光をとり入れましょう。
人は、朝に太陽光を浴びてから約15時間後に眠くなるようになっています。朝の散歩は適度な運動にもなって、気持ちもリフレッシュします。散歩の時間は、15分程度でも効果大!朝日を浴びた後には、しっかり朝食を摂るようにしてください。
一定のリズムで行う運動はセロトニンの生成を活性化します。散歩の時は、同じリズムで歩くことを意識してみましょう。食事の時に一定のリズムで噛むようにするのも効果的です。
昼食は、正午~午後2時頃に摂るのがおすすめです。この時間帯は、新しい脂肪細胞を作り出すタンパク質のBMAL1(ビーマルワン)の量が減るため、太りにくいと考えられています。
また、昼食の時間を毎日一定にすることで体内時計が整い、睡眠の質も向上。休日も同じ時間帯に食事を摂ることを心掛けると、体内時計が乱れにくくなります。
眠りを深くしてぐっすり快眠するためには、規則正しい生活を送ることが大切です。
平日と休日で就寝時間や起床時間が2時間以上ずれると、体内時計が乱れて眠りが浅くなる要因に。生活サイクルを一定に保つためにも、休日の前だからといって夜更かしはせず、生活リズムを大きく変えないことが快眠への近道です。
寝る2~3時間前に38℃前後のぬるめの湯船に浸かることで、副交感神経が優位になり入眠がスムーズに。
体温より少し高い程度のお湯に30分程度浸かると、体温は0.5℃程度上がります。入浴後、体の中心部の体温(深部体温)が低下するとスムーズに眠れるようになります。お風呂場のライトを暖色系にすると、リラックス効果大!
寝室の温度や湿度、明るさ、騒音、寝具も眠りを浅くする要因となります。
中でも温湿度による影響は大きく、寝具と人体と間にできる空間の温湿度を指す「寝床内気候」は、睡眠の質に大きな影響を与える要素です。寝床内気候の快適な範囲は32℃前後、湿度は50%前後とされています(※1)。
精油を使用するアロマテラピーにはリラックス効果やストレスを軽減する効果があり、生活にとり入れている人が少なくありません。ある実験では、オレンジスイート精油に多く含まれる成分・リモネンは、セロトニン分泌を増加させることを示唆しています(※2)。
また、別の実験ではレモンオイルが抗不安作用や抗うつ薬のような作用を有していることが示唆されました(※3)。
※1:水野一枝. "環境温湿度と睡眠." 睡眠口腔医学 2.2 (2016): 89-93.
※2:惠良友彦, et al. "抑うつ状態に対するアロマセラピーを用いた介入研究の現状と課題." 福岡県立大学看護学研究紀要 17 (2020): 5-15.
セロトニンを増やす成分やリラックス成分が配合されている睡眠サプリの活用もおすすめです。睡眠薬とは異なり依存性もなく、ゆるやかに深い眠りへと導いて睡眠の質を高めてくれるでしょう。
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る
眠りが浅く朝までぐっすり眠れない日が続くと、疲労感やストレスがどんどん蓄積していきます。たまった睡眠不足は「睡眠負債」と呼ばれ、糖尿病や高血圧、うつ病といった様々な病気や肥満の原因となる可能性があります。
夜中に目が覚めることが増えたり、イライラすることが多くなったり、体重増加が気になっている人は、眠りが浅くなっていないかチェックしてみてください。
ストレスや加齢によるホルモンバランスの変化でも、睡眠の質は低下します。日中、あまり太陽光を浴びなかったり、運動量が少なかったりと眠りに深さがなくなる原因はさまざま。
今回ご紹介した生活習慣は簡単ですぐに実践できるものばかりです。中でも、起床してすぐや日中に太陽光を浴びることは、深い睡眠を得るためには欠かせません。軽い運動ともに、毎日の生活にとり入れてみてくださいね。
毎日を一定のリズムで規則正しく過ごすことが、満足度が高い睡眠への近道。起床時間や昼食時間、就寝時間まで平日・休日ともに大きな変動が無いように過ごしたいですね。深い睡眠でココロも体もしっかり休ませて、スッキリとした朝を迎えましょう!