最終更新日:2024.12.16
近年、睡眠の大切さについて注目が集まっています。
寝不足が健康や美容にも与える悪影響についても、広く知られるようになりました。
健康のためには、自分にとって最適な睡眠時間の長さを知り、良質な眠りを確保することが欠かせません。
そこで今回は、理想的な睡眠時間の長さや、睡眠の質を高めるためのポイントなどについて、睡眠アドバイザーとしての知識を交えながら解説します。
自分にとってベストな長さの睡眠時間が分からず困っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
理想的な睡眠時間の長さとして昔から言われてきたのが、8時間です。
しかし、実は「8時間」という数字には明確な医学的根拠はないとされています。
アメリカの睡眠に関する研究機関「米国国立睡眠財団(National Sleep Foundation:NSF)」は、年齢別に推奨される睡眠時間の長さを公表しています。
年齢 | 推奨される睡眠時間の長さ |
---|---|
生後0ヵ月~3ヵ月 | 14時間~17時間 |
生後4ヵ月~11ヵ月 | 12時間~15時間 |
1歳~2歳 | 11時間~14時間 |
3歳~5歳 | 10時間~13時間 |
6歳~13歳 | 9時間~11時間 |
14歳~17歳 | 8時間~10時間 |
18歳~64歳 | 7時間~9時間 |
65歳以上 | 7時間~8時間 |
上記の理想的な睡眠時間の長さは、ホルモン分泌や脳の発達、免疫機能の最適化などが根拠となっています。
睡眠時間の長さは、季節によっても変動します。
冬は、睡眠時間が長くなる傾向があります。
その理由として挙げられるのが、日照時間の短さです。
冬は日照時間が短いため、体内時計が「夜が長い」と認識してメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が増加します。
すると、眠気を感じる時間が長くなって睡眠時間が長くなるのです。
その事実を裏付けるように、季節ごとの睡眠時間の長さについて調査したアンケートでは、冬が最も長く、夏が最も短いという結果が出ました。
季節と睡眠時間の長さに関するアンケート調査
【対象】
東北地方から九州地方の19都県に在住する15~89歳の一般人1388名
【結果】
春:6時間2分±58.9分
夏:5時間40分±63.6分
秋:6時間2分±58.3分
冬:6時間28分±56.9分
※高橋珠実, and 渡邉積. "睡眠の季節変動と睡眠効率を低下させる要因." スポーツ健康科学紀要 19 (2022): 7-14.
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健康のためには、しっかり眠ることが大切です。
しかし、寝すぎると逆に健康リスクが上昇する可能性があります。
睡眠時間の長さと死亡率の関連性について、東アジアに住む32万2721名の成人を対象に追跡調査を行ったところ、平均睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低いことが明らかになりました(※1)。
上記の調査では、10時間以上の睡眠をとっている人の死亡率が高く、特に女性のがん死亡リスクが高いという結果が報告されています(※1)。
また、別の調査では睡眠時間を9時間以上とっている70歳以上の人は、認知機能が低下するという研究結果が明らかになりました(※2)。
さらに、9時間以上の過剰な睡眠が心血管疾患やそのほかの慢性疾患による死亡リスクを上昇させるだけでなく、睡眠時間が9時間以上の女性は糖尿病によって死亡する可能性が高いことも判明しています(※3)。
健康リスクを高めるのは、長時間睡眠だけではありません。
短時間睡眠が習慣的に続いている場合も、様々な健康リスクが生じる可能性があります。
睡眠時間が短くなった時に起こる体の変化について調べる研究で、健康な人が一晩だけ睡眠時間を8時間から4時間に短縮しました。
その結果、食欲を抑制するホルモンであるレプチンの分泌が減少し、逆に食欲を高めるホルモンのグレリン分泌量が増加するという結果が出ました(※1)。
また、睡眠不足によってグレリンが分泌された場合は、高脂質・高カロリーな食べ物を好む傾向があることが分かっています。
グレリンによる食欲増進と高脂質・高カロリーな食べ物の摂取によって、太りやすくなるのです。
免疫細胞(T細胞やナチュラルキラー細胞)は、睡眠中に活性化されます。
しかし、睡眠時間が足りないと免疫細胞の働きが弱くなり、風邪や感染症にかかりやすくなります。
約47万人を対象にした調査で、睡眠時間が5~6時間未満の短時間睡眠者は、7~8時間寝ている人よりも約1.5倍、心血管疾患のリスクが増加していることが確認されました(※2)。
※1:後藤伸子. "糖代謝における睡眠の重要性." 慶應保健研究 37.1 (2019): 023-028.
※2:前村浩二. "睡眠・サーカディアンリズムと高血圧・循環器疾患." 心臓 48.3 (2016): 358-361.
7時間睡眠が健康のためには理想的であることが分かりました。
しかし、必要な睡眠時間の長さは個人によって大きな差があります。
例えば、長時間の睡眠時間が必要なロングスリーパーの人にとっては、成人に推奨される睡眠時間の長さ(7時間~9時間)では足りません。
健康的な生活を送るために必要な睡眠時間の長さとして、厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」としています。
また、厚生労働省健康局が公表した「健康づくりのための睡眠指針2014」では、睡眠時間について以下のように述べています。
第5条.年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を
・必要な睡眠時間は人それぞれ
・睡眠時間は加齢で徐々に短縮
・年をとると朝型化
・日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番
自分にとって最適な睡眠時間とは「日中にだるさや眠気を感じない程度の時間」と言えそうです。
十分な長さの睡眠時間を確保しても、睡眠リズムが乱れていたり、睡眠環境が悪かったりすると、良質な眠りは得られません。
厚生労働省が実施した「令和3年度 健康実態調査結果の報告」では、「睡眠時間のとれている度合い」についての設問もありました。
「睡眠のとれている度合い」についての設問に対する回答
・睡眠時間が足りなかった…約20%
・睡眠全体の質に満足できなかった…約35%
・夜間、睡眠途中に目が覚めて困った…約45%
この結果を見ると、睡眠時間を十分に確保出来ていても睡眠の質に満足できていない人が多いことが分かります。
睡眠時間の長さ=睡眠の質の高さとは限らないようです。
今回は、理想的な睡眠時間の長さや、長時間睡眠・短時間睡眠がもたらす健康リスクなどについて解説しました。
健康面における理想の睡眠時間は7時間前後ですが、それはあくまで目安です。
適切な睡眠時間は、人によって短時間から長時間まで大きな差があります。
日常生活に支障をきたさない程度の睡眠をとることを第一に最適な睡眠時間を確保しましょう。
また、睡眠による健康効果を高めるためには、睡眠の質も大切です。
たとえ7時間以上ベッドや布団の中で過ごしていても、寝つきが悪い、眠りが浅い、早すぎる時間に目が覚めることが多い場合は、睡眠の質が低下しているかもしれません。
その場合は、眠りの質を高める生活習慣や食生活を実践してみましょう。
また、良質な眠りをサポートする成分が配合された睡眠サプリを活用するのもおすすめです。
理想的な長さの睡眠時間と質の高い眠りで、生活習慣病のリスクを回避しましょう!