最終更新日:2024.12.05
睡眠は、成長期の子供にとって大切な時間です。
しっかり眠ることが、子供の健やかな発達に繋がります。
しかし、一日の多くを眠って過ごす乳幼児期間が終わり、幼児期に入った子供の保護者の中には「うちの子は眠りすぎなのでは」と心配する人や、逆に「あまり寝ないけれど問題ないの?」と不安に思っている人など、子供の適切な睡眠時間が分からず頭を悩ませている人が少なくないようです。
質問サイトでも、子供の睡眠についての疑問が多く寄せられています。
幼児の一日の睡眠時間は、昼寝も必要なら、何時間と何時間必要なんですか? 昼寝ができないとか、仮眠くらいしかとれないのはよくないんですか?
引用元:Yahoo知恵袋
幼児にも睡眠サイクルがあると思いますが、理想の昼寝時間の長さはどれくらいですか?
引用元:Yahoo知恵袋
幼児の寝る時間、22時はやはり遅いですか??この4月から、子どもの寝る時間が週3日22時頃になりそうです。残りの4日は20時前後です。幼児期に22時就寝は、体に支障が出ますか?
引用元:Yahoo知恵袋
今回は、2歳から5歳頃の幼児にとって理想的な睡眠時間や、寝不足が子供の発達に与える悪影響などを、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら詳しく解説していきます。
小さなお子さんの睡眠に関する悩みや疑問を抱いている方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
米国睡眠医学会が推奨する子供の睡眠時間は、1歳~2歳は1日11~14時間、3歳~5歳は1日10~13時間(どちらも昼寝の時間を含む)です。
しかし、世界的にみると日本の乳幼児の総睡眠時間は短く、最も睡眠時間が長いニュージーランドに比べて、かなり睡眠時間が足りないことが分かります。
グラフで見て分かるように、日本の乳幼児の総睡眠時間は最も短く、一番睡眠時間が長いニュージーランドとはかなりの開きがあります。
米国睡眠医学会が推奨する1歳~2歳児の睡眠時間が11~14時間であることを考えると、日本の幼児は睡眠不足気味であると言えそうです。
睡眠不足は、子供たちの身体や心の発達にどのような悪影響を与えるのでしょうか?
幼児期の睡眠不足は、将来的な学力や成長にも関係していることが明らかになっています。
2歳半から6歳までの幼児を対象に睡眠時間と認知機能との関係を追跡した調査で、6歳になるまで10時間以下の短時間睡眠であった子供は、知能検査の成績が低いということが分かりました。
特に、3歳半以前における睡眠の短さが関係することが示唆される結果が出ています。
睡眠時間が短いと認知機能が低くなる理由として、眠っている間に行われる脳への記憶の定着が、睡眠時間が足りなかったり、睡眠の質が低下していたりすると十分に行われなくなることが関係していると考えられています。
睡眠には、体は休息しつつも脳は覚醒してその日に記憶したことを整理・固定する「レム睡眠」、脳を休ませながらも体を支える筋肉は働いている「ノンレム睡眠」の2種類があります。
寝ている間、私たちはレム睡眠とノンレム睡眠を約90分の間隔で交互に繰り返し、目覚めの時間が近付くと徐々にレム睡眠の割合が増えていきます。
私たちが入眠して最初に訪れるノンレム睡眠の深さが、記憶の整理と脳への定着を左右します。
その日に記憶・経験したことをしっかりと脳に刻み付けるためには、この最初のノンレム睡眠で深く眠ることが必要なのです。
しかし、幼児の生活パターンが夜型化すると記憶が整理・固定されません。
そのため、学習能力が低下するのです。
子供がすくすくと育つためには、成長ホルモンが十分に分泌されることが大切です。
成長ホルモンは、眠ってすぐに訪れるノンレム睡眠で多量に分泌されます。
しかし、寝つきが悪かったり睡眠の質が悪かったりすると、成長ホルモンの分泌量が減少。
その結果、身長が伸びにくくなったり、筋肉がつきにくくなったりして子供の身体的な発達に悪影響が出ます。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いや理想的な割合をわかりやすく解説! >>詳しく読む
睡眠不足によって幼児の肥満化が進むことが分かっています。
幼稚園と保育園に通園する3歳以上の幼児の親1867人を対象に行った調査で、過体重の子供は夜間の睡眠時間が10時間未満であることや、食事が不規則であること、テレビの視聴時間が1日2時間以上であることが明らかになりました(※1)。
睡眠時間が短いと太りやすくなる理由には、食欲抑制に関係するホルモン「レプチン」の減少と、逆に食欲を増進させるホルモン「グレリン」増加の問題が考えられます。
また、約8000人の3歳児を対象にした研究によって、幼児期の生活習慣はその後の肥満リスクに影響を及ぼすことが判明しました(※2)。
睡眠不足による小児肥満のリスクは幼児期だけの問題では終わらず、その後の人生にも大きな影響を及ぼすのです。
睡眠不足は、子供の運動能力にも影響を与えます。
ある実験で、1日の睡眠時間が8時間未満の幼児は、8時間以上眠っている幼児に比べて運動能力検査の点数が低いという結果が出ました。
その理由として、睡眠時間が8時間未満の子供は日中に眠気やだるさを感じたり、注意力や集中力が散漫になったり、発達の遅れで運動能力が低下している可能性が高いと考えられます(※3)。
睡眠不足は、幼児のメンタル面にも無関係ではありません。
就床時刻が22時以降の幼児と21時以前の幼児の行動を比較した結果、22時以降に眠る子供の方が攻撃的な行動が多い傾向にあることが分かりました(※4)。
また、3歳半児をもつ母親への調査結果を基に22時以降に就寝する子どもの性格や行動について分析したところ、「落ち着きがない」「ささいなことで怒りやすい」「大泣きしてなかなか泣き止まない」「言い出したら聞かない」といった感情のコントロールがきかない子供が多いことも明らかになっています(※5)。
これらのことから、睡眠時間の長さが幼児の性格形成や心の発達にも深く関連していると言えるでしょう。
※1:渡辺悦子, 李廷秀, and 川久保清. "幼児の過体重に関連する生活習慣とその重積の影響." 日循環器予防誌 46 (2011):165-173
※2:岡田(有竹)清夏. "乳幼児の睡眠と発達." 心理学評論 60.3(2017):216-229.
※4:古谷真樹, 山尾碧, and 田中秀樹. "幼児の夜ふかしと主養育者に対する睡眠教育の重要性." 小児保健研究 67.3 (2008): 504-512.
※5:瓜生淑子. "夜型生活の子どもの発達への影響:3歳児の生活実態調査の分析から." 奈良教育大学紀要, 人文・社会科学 55.1 (2006): 53-64.
近年は、小学校に入る前の幼児の就寝時間も遅くなっていることが明らかになっています。
その原因として考えられるのが、保護者の生活リズムの夜型化です。
保護者の生活時間帯が後ろ倒しになることで、幼児の生活リズムも夜型化していると考えられるでしょう。
幼児の保護者の中には、「小学校に入ってから生活リズムを整えればいい」と考えている人がいるかもしれませんが、幼児期に乱れた生活リズムは小学校に入ってもすぐには直りません。
子供たちの健やかな成長のためには、幼児期から生活リズムを整え、十分な睡眠時間を確保することが大切なのです。
子供の生活パターンが夜型化してしまった場合、元に戻すためには乱れた生活リズムを整えることが最も重要です。
幼児の体内時計を整えて寝つきを良くする方法をご紹介します。
夜になると眠くなるのは「メラトニン」という睡眠ホルモンが夕方から夜にかけて分泌されるためです。
メラトニンは、日中に分泌される「セロトニン」というホルモンが原料となって生成されますが、セロトニンをたくさん分泌するためには朝の太陽光を浴びることが大切です。
太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、セロトニンが多く分泌されるようになります。
セロトニンは精神の安定にも影響を与えるホルモンであり、セロトニンが不足すると抑うつ状態や感情コントロールが効きにくい不安定な状態になりがちです。
幼児の心を健やかに保つためにも、朝起きたらすぐに太陽光を浴びさせることを習慣化しましょう。
スマホやパソコンの画面から出ている光「ブルーライト」は、「今は日中だ」と脳に錯覚させてメラトニンの分泌を止めてしまいます。
また、スマホでの動画視聴などによって頭が覚醒し、興奮状態になりやすくなります。
自律神経が乱れる原因にもなるため、
就寝時間の2時間程度前から、スマホやパソコンの画面を見せないようにしましょう。
就寝時間が近付いてきたら暖色系のライトに切り替えるなどして、部屋をだんだん暗くしていくと寝付きやすくなります。
絵本を読んだり、おしゃべりをしたりして、子供が眠る前のひと時をのんびり一緒に過ごしませんか。
毎晩、寝る前に同じ行動をとることで、子供が「もうすぐ寝る時間だ」と認識して寝付きやすくなります。
入浴後に絵本を読む、照明を少し落とした部屋で子守唄や静かな音楽を聞かせるなど、子供がリラックスして眠気を感じやすくなるように誘導しましょう。
今回は、幼児の中でも特に生活の夜型化が心配されている2歳~5歳児の睡眠について、お届けしました。
幼児の中には、家族が起きているとはしゃいでしまい、興奮して寝ないという子もいます。
その場合は、家族全員の協力が必要です。
子供が寝つくまでリビングのテレビを消す、家中の明かりを消すなどして、子供がスムーズに眠れるような環境を作りましょう。
幼児の頃の睡眠習慣が、その後の人生にまで影響を及ぼすことがあります。
子供の将来のためにも、十分な睡眠時間の確保を目指したいですね。
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