最終更新日:2024.12.05
ひと口に「小学生」といっても、小学生は6歳の1年生から12歳の6年生まで年齢に大きな差があります。
学年によって体格差もかなりあるため、小学1年生・2年生の低学年の子どもと小学5年生・6年生の高学年の子どもとでは、理想的な睡眠時間に開きがあるのです。
保護者の方の中には「うちの子どもには何時間の睡眠が必要なの?」と、子どもの睡眠時間について頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
実際に、質問サイトでも小学生の睡眠時間についての疑問が、数多く寄せられています。
小学生二年生の男の子です。睡眠時間は何時間必要ですか?少ないと体の成長に影響ありますか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学生に必要な睡眠時間って何時間ですか?小学3年生で、9時ごろ寝て、7時に起きるのは寝すぎでしょうか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学一年生女児の睡眠時間について。8時に寝て6時半まで寝てるんですが寝過ぎですか?夜ふかしさせたほうがいいですか?
引用元:Yahoo知恵袋
そこで今回は、幼稚園から小学校へ入学したばかりの1年生から、中学校受験や入学を控えた小学6年生まで、それぞれの年齢に応じた理想的な睡眠時間や、眠りと学力の関係、睡眠が成長期の子どもの身体と心に与える影響まで、睡眠アドバイザーとしての知識を基に詳しくお伝えします。
「小学生の子どもを何時に寝かしつけたら良いのか分からない」「子どもの睡眠時間が短いけれど身体に悪い影響がないか心配」と、小学生の睡眠について悩みや疑問を抱いている保護者の方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
米国睡眠医学会は、6歳~12歳の子どもがとるべき睡眠時間として、24時間あたり9~12時間と推奨しています。
しかし、睡眠時間が長ければ長いほど良いかと言えば、一概にそうとは言えないことが分かる調査結果が出ています。
神奈川県で小学5年生199人を対象に睡眠習慣・食事習慣と学力の関係について調べたところ、平均的な時間に就寝・起床している子どもの方が、平均よりも就寝時間が遅い子どもや平均よりも起床時間が早い子どもに比べて、漢字テストと計算テストで高い得点を獲得しました(※)。
このことから、寝る時間を早くして睡眠時間を長く伸ばすよりも、平均的な時間に就寝・起床する方が学力の向上には良い影響を与えることが期待できるといえそうです。
※:小学生の睡眠習慣および食事習慣と学力との関連・小学生の睡眠・食事習慣と学力の関連/了德寺大学研究紀要 第6号37-50(2012)
小学5年生・6年生の高学年になると、中学受験のために塾に通い始めたり、家でも睡眠時間を削って勉強時間を確保したりしている子どもが増えてきます。
しかし、成長期の子どもにとって睡眠不足の日が続くことは、心身の健やかな成長を阻害しかねない危険性でいっぱいなのです。
眠りの状態には2種類あり、1つは体を休ませながらも脳は覚醒してその日に記憶したことを整理・固定する「レム睡眠」、もう1つは体を支える筋肉は働いていても脳は休息状態となる「ノンレム睡眠」です。
睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠が約90分の間隔で交互に訪れ、覚醒時間が近付くに従ってレム睡眠の割合が増えていきます。
入眠して最初に訪れるのはノンレム睡眠で、最も深い眠りに落ちる時間帯です。
その日に覚えたことを脳にしっかりと記憶を刻み付けるためには、最初のノンレム睡眠でどれだけ深く眠れるかが重要だと言われています。
しかし、生活リズムが乱れていたり、夜更けまでゲームをしていて寝つきが悪かったりすると、眠りが浅くなって記憶の整理・固定が不十分な状態に。
これこそが、睡眠不足が学力低下を招く原因なのです。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いや理想的な割合をわかりやすく解説! >>詳しく読む
2019年に実施された「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」では、子どもの睡眠時間短縮に比例するかのように、小学校理科の平均得点が低下していることが明らかになりました(※)。
また、2018年に高校1年生を対象にOECDが実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)」では、読解力の正答率が低下していたことが分かっています(※)。
※令和3年度 文部科学白書
就寝時刻が遅かったり、睡眠時間が短かかったりすることで肥満する可能性が高くなることが分かっています。
寝る時間が遅くなると、食欲抑制に関係するホルモン「レプチン」の分泌量が減少し、逆に食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌量が増加します。
それだけでも肥満のリスクが高まるのに加え、睡眠不足によって分泌されたグレリンの影響による食欲では、高カロリー・高脂質な食べ物を欲するため、ますます太りやすくなるのです。
また、寝不足の状態では自律神経が乱れやすく、糖代謝の低下や脂肪の分解機能不全を招きます。
睡眠時間が足りないと、そういった“太りやすくなる条件”が整ってしまうため、肥満を招く可能性が上昇するのです。
身長を伸ばすためには「成長ホルモン」の存在が欠かせません。成長ホルモンが分泌されるのは、深い眠りであるノンレム睡眠の時です。
しかし、短い睡眠時間や質が低い睡眠のせいで成長ホルモンの分泌量が低下すると、身長が伸びにくくなる可能性が高くなります。
成長ホルモンには筋肉量を増やしたり、日中にダメージを受けた組織を回復したりする作用もあるため、寝不足の状態が続くと身長だけでなく身体全体に悪影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
寝不足でイライラするのは大人だけではありません。
小学生も大人同様に、睡眠時間が足りないと怒りっぽくなることが調査によって明らかになっています。
睡眠習慣と子どものメンタルヘルスの関係を調べた研究で、睡眠不足を感じている子どもは、睡眠不足を感じていない子どもに比べて「急に怒ったり泣いたりすることがある」「ちょっとしたことでカッとなる」「自分をだめな人間だと思うことがある」と回答した割合が高いことが判明しました。
睡眠不足は、子供たちの自尊心にも影響を与えます。
北海道の小学5・6年生を対象に、自尊感情と睡眠習慣についてアンケート調査したところ、睡眠不足を自覚している児童は「自分はまったくダメな人間だと思う時がある」と回答した割合が高く、休日の睡眠時間が9時間未満の小学生はメンタルヘルスがネガティブであることが報告されています(※2)。
これらの結果から、睡眠不足は子供たちのメンタルヘルスにも大きな影響を及ぼすと言えるでしょう。
※:小学生における睡眠習慣の違いがメンタルヘルスと体力に及ぼす影響について/北海道大学大学院教育学研究院紀要 第126号2016年6月
※2:笹澤吉明, et al. 小学生への睡眠介入が自尊感情を改善させるか. Diss. 琉球大学, 2020.
小学生の子どもにとって十分な睡眠時間をとらせるために、保護者はどのような点に気をつければ良いのでしょうか?
次に紹介するのは、子供がスムーズに眠れるようになる方法です。
実践しやすいものから、試してみませんか。
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、眠りをもたらす作用があるホルモン「メラトニン」の分泌を止めて、寝つきを悪くします。
また、動画やSNSなどスマホから得る情報も脳を興奮させて眠れなくなる原因に。就寝前の1~2時間前からスマホを使わせないようにしましょう。
子どもたちの中には、学校から帰って夕方に仮眠をとり、夜に勉強するという子もいるでしょう。
しかし、午後3時以降の仮眠は夜に寝つけなくなったり、睡眠の質を低下させたりする原因になります。
生活リズムが乱れる原因にもなるため、夕方に仮眠習慣がある子どもは注意が必要です。
スムーズな入眠の条件として、就寝時刻に向けて身体の深部体温が下がっていくことが大切です。
体を芯まで温めるために、シャワーではなく湯船につかる習慣を心掛けましょう。
寝る約2時間前にお風呂に入り、40℃程度のぬるめのお湯に10分~15分程度浸かって体温を上昇させると、その後体温が下がっていく過程で眠気を感じるようになります。
就寝時間が遅い子供は朝起きるのに時間がかかり、バタバタと登校の準備をしがちです。
そのため、朝食を食べない日が多くなります。
朝ごはんを食べないと、集中力が散漫になって授業に集中できなかったり、体力が低下して疲れやすくなったりします。
また、自律神経が乱れる原因にも。
朝食を毎日きちんと食べることで自律神経が整い、睡眠の質も良くなるでしょう。
今回は、小学生の理想の睡眠時間について解説しました。
小学生は年齢に幅があり、学年によって成長度合いも大きく異なります。
しかし、どの年齢の子どもでも学力向上や身体・心の成長のために、十分な睡眠時間の確保が大切であることに変わりありません。
近年は、小学校に入る前の幼児の就寝時間も遅くなっていることが明らかになっています。
夜10時以降に就寝する乳幼児の割合が3歳児では1980年は22%でしたが、2000年には52%と約2倍になり、5歳児・6歳児は10%から40%と、なんと4倍に!(※)
幼児の保護者の中には、「小学校に入ってから生活リズムを整えればいい」と考えている人がいるかもしれません。
しかし、幼児期に乱れた生活リズムは小学校に入ってもすぐには直りません。
小学生の健やかな成長のためには、幼児期から生活リズムを整え、十分な睡眠時間を確保することが大切なのです。
この機会に、親子で睡眠の大切さについて話し合ってみませんか。
※:小学生の睡眠習慣および食事習慣と学力との関連・小学生の睡眠・食事習慣と学力の関連/了德寺大学研究紀要 第6号37-50(2012)
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