最終更新日:2025.05.13
「小学生の理想的な睡眠時間ってどれくらい?」「最近夜更かしが増えてきたけど、学力や成長に影響はある?」
こんな疑問を抱える保護者の方は多いのではないでしょうか。
実際に、質問サイトでも小学生の睡眠時間についての疑問が、数多く寄せられています。
小学生二年生の男の子です。睡眠時間は何時間必要ですか?少ないと体の成長に影響ありますか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学生に必要な睡眠時間って何時間ですか?小学3年生で、9時ごろ寝て、7時に起きるのは寝すぎでしょうか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学一年生女児の睡眠時間について。8時に寝て6時半まで寝てるんですが寝過ぎですか?夜ふかしさせたほうがいいですか?
引用元:Yahoo知恵袋
共働きの増加、塾や習い事、YouTubeやスマホの普及…。
現代の子どもたちを取り巻く生活環境は複雑で、就寝時刻が遅くなる要因にあふれています。
しかし、睡眠不足は子どもの「脳」と「体」の成長に、確実に悪影響を与えます。
この記事では、小学生の平均的な就寝時間と理想の睡眠時間を明らかにしつつ、睡眠不足が与えるリスクや、家庭でできる具体的な改善策まで徹底解説します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
文部科学省の調査(※1)によれば、小学5・6年生の約半数が「夜10時以降」に就寝しています。
一見、「そこまで遅くないのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、次の章で紹介する“理想の睡眠時間”と比較すると、1〜2時間不足しているケースが目立ちます。
夜ふかしの背景には以下のような事情が絡んでいます。
・夕食や入浴が遅くなる共働き家庭
・習い事や塾で帰宅が21時過ぎに
・ベッドに入ってもスマホやタブレットで動画を見続ける
どの家庭にも事情があるからこそ、「睡眠の優先順位」をあらためて見直すことが求められています。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生が確保すべき睡眠時間を「9〜12時間」と推奨しています。
つまり、「朝7時起き」なら、21時前後には布団に入っていることが理想です。
これは現実とかけ離れているように見えますが、睡眠が子どもにもたらす効果を知ると、その重要性を実感できるはずです。
睡眠中、子どもの脳では「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が交互に繰り返されています。
このうち深いノンレム睡眠中には、日中に覚えた情報や経験が海馬で整理され、必要な記憶として定着していきます。
つまり、テスト勉強や新しい習い事の習得も、しっかり眠ることで効率がアップするのです。
加えて、浅いレム睡眠時には、感情の整理や創造性を高める脳活動も行われており、感情の安定や集中力の維持にも欠かせません。
この2つの睡眠がバランスよく繰り返されるには、ある程度の睡眠時間が必要というわけなのです。
たとえば6〜7時間程度の睡眠では、レム睡眠とノンレム睡眠の十分なサイクルを繰り返すことができず、記憶の定着や感情の安定に悪影響が出やすくなります。
こうした状態が慢性化すると、「寝ても疲れが取れない」「朝に機嫌が悪い」「学習意欲が続かない」といった形で表面化します。
睡眠不足=その日だけの不調、と思われがちですが、実際には1週間以上かけてリズムが乱れ、脳機能にも持続的な影響が出る可能性があるのです。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いや理想的な割合をわかりやすく解説! >>詳しく読む
「ちょっと寝不足なくらい、大したことない」と思っていませんか?
実は、睡眠不足は子どもの成長や学習能力、心の安定にまで影響を及ぼします。
ここでは、小学生の睡眠不足がもたらす3つの深刻なリスクについて解説します。
東北大学の研究では、夜更かし傾向が強い子どもほど、国語や算数といった基礎教科の成績が振るわない傾向が明らかになっています。
特に睡眠が不足すると、「集中力の低下」「記憶の定着不良」などの問題が起こりやすくなります。
勉強しても覚えられない、テストで実力を発揮できない…。
その原因が“寝不足”かもしれません。
子どもの身長を伸ばすうえで重要な「成長ホルモン」は、眠り始めて30〜90分後の“ノンレム睡眠(深い眠り)”の時間帯に最も活性化されます。
入眠が遅くなることでこのタイミングがズレたり、睡眠の質が低下したりすれば、成長ホルモンの分泌も減少し、身長の伸びに悪影響が及ぶ可能性があります。
睡眠不足は「グレリン(食欲を高めるホルモン)」の増加と「レプチン(食欲を抑えるホルモン)」の減少を引き起こします。
その結果、甘いものやスナックなどを過剰に摂取しやすくなり、小児肥満や生活習慣病のリスクを高めます。
実際に、小学1年から4年にかけて十分な睡眠をとった子どもは肥満発生リスクが最も低く、逆に睡眠不足の子どもは肥満のリスクが1.4倍上昇していたという報告もあります(※2)。
寝不足でイライラするのは大人だけではありません。
小学生も大人同様に、睡眠時間が足りないと怒りっぽくなることが調査によって明らかになっています。
睡眠習慣と子どものメンタルヘルスの関係を調べた研究で、睡眠不足を感じている子どもは、睡眠不足を感じていない子どもに比べて「急に怒ったり泣いたりすることがある」「ちょっとしたことでカッとなる」「自分をだめな人間だと思うことがある」と回答した割合が高いことが判明しました(※3)。
子どもの夜更かしや寝つきの悪さに、頭を悩ませていませんか?
生活習慣を少し見直すだけで、子どもの睡眠の質はぐっと改善します。
このパートでは、家庭で今日から始められる、効果的な「睡眠習慣づくり」のポイントを3つに絞って紹介します。
・夜21時以降はテレビ・スマホをOFF
・照明は暖色系の間接照明に切り替える
・絵本の読み聞かせや静かな音楽で入眠導入
毎晩決まった流れをつくることで、子どもの脳が「もうすぐ寝る時間だ」と自然に認識しやすくなります。
・起床後すぐにカーテンを開けて朝日を浴びる
・朝食には卵や納豆などタンパク質を取り入れる
体内時計は朝の光と栄養でリセットされます。夜の入眠をスムーズにするには、朝の行動が意外とカギになります。
・就寝1時間前に温かいミルクやバナナを
・GABAやラフマなど自然素材のサポートも検討
寝つきが悪い夜は、親が焦らず「眠れないね」と共感することが大切。
そのうえで、環境・食事・習慣のサポートを一つずつ整えていきましょう。
子どもの睡眠リズムを整えることは、家庭にとって簡単なことではありません。
習いごとや家庭の事情、子ども自身の個性など、現実には理想通りにいかないことも多いでしょう。
だからこそ、「完璧にしよう」と気負わず、今日からできることを一つずつ積み重ねていくことが何よりも大切です。
例えば、
・朝は少しでも太陽の光を浴びるようにさせる
・寝る前はスマホをオフにする
・眠る前の会話の時間を持つ
こうした些細な習慣が、やがて大きな変化を生み出します。
そしてもし、生活習慣の改善に限界を感じたときには、睡眠の質をサポートしてくれる自然由来のサプリメントなども、ひとつの選択肢として活用するのもよいでしょう。
眠りの質が高まることで、自律神経のバランスも整いやすくなります。
焦らず、少しずつ。子どもの健やかな眠りを、家庭全体で育んでいきましょう。
子どもの睡眠リズムを守るためには、親の睡眠が大切。眠りの質を上げる睡眠サプリ >>詳しく見る
※1:文部科学省. "平成 26 年度 「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」―睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査."
※2:駒田陽子. "知っておきたい子どもの睡眠." 睡眠口腔医学 3.2 (2017): 127-132.
※3:小学生における睡眠習慣の違いがメンタルヘルスと体力に及ぼす影響について/北海道大学大学院教育学研究院紀要 第126号2016年6月