最終更新日:2023.07.20
夏休みに入った途端に「小学生の子どもが毎日のように夜更かしをして困っている」という保護者も多いのではないでしょうか?夏休みなどの長期休暇になると、子どもたちの生活リズムは乱れがちになりますよね。「夏休みだから」と大目に見るのか、それとも「普段通りの生活リズムを守らせる」のか。親としては悩ましいところです。
今回は、小学生が夏休みの夜更かし生活を続けた場合に起こり得る健康への影響について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら解説します。
夏休み、お子さんの睡眠時間や生活リズムの乱れについて悩んでいる保護者の皆さまは、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
小学生の子どもたちにとっては、待ちに待った夏休み。親とっては子どもと一緒に過ごす時間が増えて嬉しい反面、毎日の食事の用意や1日の過ごさせ方など、色々と考えなければならないことが増える期間ではないでしょうか。
中でも保護者を困らせるのは、子どもの夜更かし問題。高学年になるほど夜更かしの傾向が強くなり、小学6年生を対象に行った夏休みの生活行動に関する調査では、夏休み期間中の就寝時間は午後11時以降、起床時間は午前8時以降で睡眠時間が8時間未満の子どもが増加することが分かりました(※)。
小学生の子どもが夜更かしをするようになって“遅寝遅起き”の生活リズムになってしまうと、身体や心にどのような影響が出てくるのでしょうか。その具体例を挙げていきます。
起床時間・就寝時間が遅くなると自律神経が乱れやすくなります。自律神経は私たちの身体や心に大きな影響を与えるため、自律神経がちゃんと働かなくなると体のあちこちに不調が表れ、子どもたちの成長を妨げる要因となります。
自律神経のバランスが崩れることで体内時計が狂い、新学期が始まっても朝起きられなかったり、夜なかなか寝つけなくなったり、寝不足のために授業に集中できずぼんやりすることが増えて、学力低下や体調不良を招く可能性が出てくるのです。
就寝時間が遅くなる原因に、夜遅くまでスマートフォンやタブレットでゲームをしていることや、ダラダラと動画視聴をしていることが挙げられます。
スマホやタブレット、パソコンの画面から発せられるブルーライトは、眠りを促すホルモン「メラトニン」の分泌を止めるため、寝つきが悪くなるだけでなく、眠りの質を低くします。
睡眠の質が低下すると、眠っている間に分泌される成長ホルモンの量が減少。本来は育ち盛りであるはずの小学生の子どもの骨や筋肉の成長を阻害する大きな要因となります。
遅寝遅起きの生活をしていると、朝食を食べない日が増えます。朝ごはんを抜くと脳にエネルギーが届かないために、午前中は頭が働かないだけでなく、めまいや立ちくらみといった貧血のような症状に見舞われるほか、イライラすることが増加。
家庭では親に当たり散らしたり、学校でも友人に対して好ましくない態度をとったりして、人間関係にも影響を与えかねません。
※:松田芳子, et al. "児童の生活行動と疲労に関する研究: 通常の学校生活と夏休みの生活に関する調査より." 熊本大学教育学部紀要 自然科学 43 (1994): 163-172.
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年々、小学生の肥満傾向児の割合が増加傾向にあることが、文部科学省が公表した「令和2年度学校保健統計調査」により明らかになりました。
小学生の体重と肥満度について「授業がある時と夏季休業期間の生活習慣」を比較した調査では、肥満傾向にある子どもは夏季休業中さらに体重が増加する率が高くなるという結果が出ています。
肥満傾向にある子どもが夏休み中にさらに太る要因として、夜更かし習慣による睡眠時間の短縮や、起床時間が遅くなることで朝食を食べなくなることなどが考えられます。また、エアコンの効いた室内でジュースやアイス、スナック菓子などを食べながらテレビを見たりゲームをしたりする時間が増えたことも、肥満傾向の子どもが夏休み中にさらに太る原因として挙げられています(※1)。
調査によると、夏休み期間中は就寝時間が全体的に遅くなり、午後11時過ぎに寝る子どもが2倍に増加していました。朝食に関しては、授業がある期間中は全ての小学生のうち約90%が毎日朝食を食べていたのに対し、夏休み期間中は「時々食べない」と回答した肥満傾向にある子どもの割合が2倍に増加。さらに、朝食を食べなかった子どもは25.9%にのぼりました(※2)。
ある研究によると、子どもの頃に肥満である場合、大人になってから高血圧や糖尿病など様々な病気にかかるリスクや死亡率が上昇することが報告されています(※3)。将来、わが子が生活習慣病で苦しむのを防ぐためにも、夏休み中であっても生活リズムが崩れすぎないように注意してあげましょう。
※1:KOBAYASHI, Masako, and Takashi ETO. "小学生における肥満修項向増加の要因に関する研究." 東京大学大学院教育学研究科紀要 37 (1997).
※2:石原絵美理, and 小林正子. "小学生の肥満と生活習慣との関連性の検討―授業期間と夏季休業期間を比較して―." 日本健康相談活動学会誌 5.1 (2010): 66-76.
夏休み期間中は、花火大会やバーベキュー、親戚の集まりなど様々なイベントが目白押し!子どもだけでなく、大人も生活パターンを崩しがちな時期です。
体内時計を乱さないために有効なのが、1日24時間の生活リズムをある程度決めて“見える化”しておくこと。子どもだけでなく親も一緒に「生活パターン時計」を作り、それを目安に生活することで自律神経が整うでしょう。
自律神経が整うと、夏に低下しがちな睡眠の質も向上します。良質な睡眠は夏の疲労をとって夏バテを予防するだけでなく、子どもの学力をアップさせたり、健やかな成長につながったりと良いことばかりなのです。
早速、親子で一緒に作ってみませんか。
小学生の生活パターン時計の作り方
平日用だけでなく、保護者が休みの週末用など時間割の内容を少し変えた物を用意するのも良いでしょう。
1日を生活パターン時計に沿った時間割で過ごせたら「頑張ったねシール」などを貼るようにすると、子どもが達成感を感じて習慣化しやすくなるのでおすすめです。
夏休みに“遅寝遅起き”習慣が身に付いてしまうと、新学期が始まってもスムーズに元の生活リズムには戻れません。そうなると小学生の子どもに必要な長さの睡眠時間がとれず、身体やこころの成長に悪影響が出てきます。
理想は夏休みに入っても普段通りの生活リズムを崩さないことですが、自分が子どもだった頃を思い出すとあまりガミガミ言いたくない、という気持ちも。もしも夏休みの間に子どもの夜更かしが習慣化してしまった場合は、新学期が始まる1週間程度前から、徐々に元の生活リズムに戻していくようにしましょう。
生活リズムを元に戻す方法としておすすめなのは、起床してすぐに太陽光を浴びることです。朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、“幸福ホルモン”と呼ばれるセロトニンの分泌が始まります。セロトニンは自律神経を調整するほか、夕方になると睡眠を促すホルモン・メラトニンを分泌し始めるので、寝つきが良くなり睡眠の質も良くなるのです。
夏休みこそ、良い眠りを心掛けるようにしましょう!