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夜中に目が覚める「中途覚醒」の原因と治し方を解説

最終更新日:2024.2.20

夜中に目が覚める「中途覚醒」の原因と治し方を解説

夜中、寝ている途中で何度も目覚めてしまう「中途覚醒」は、睡眠障害の中でも特に多い症状です。

睡眠時間を長く確保したつもりでも、夜中に目が覚めることで実際に眠った時間は短くなり睡眠不足となってしまうだけでなく、睡眠の質の低下によって疲れがとれなかったり日中に強い眠気を生じさせたりして、仕事や勉強などに悪影響を及ぼすことがあります。

今回は、睡眠アドバイザーとしての知識と私自身の経験を織り交ぜながら、中途覚醒の原因や治し方などについてお伝えします。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

睡眠栄養指導士

小田 健史

健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!

<資格>
一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
 睡眠栄養指導士® 中級
 パーソナル睡眠アドバイザー®
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
 健康管理士 一般指導員

中途覚醒とは

中途覚醒は不眠症の一つで、症状には2つの特徴があります。

中途覚醒の症状

  1. 眠りが浅く、睡眠の途中で何度も目が覚める
  2. 一度目が覚めるとなかなか寝付けず、寝付けても眠りが浅い

夜中に目が覚めることは珍しいことではありません。

しかし、寝ている途中に覚醒してその後再入眠できないことが週に3回以上ある場合や、熟睡できないことで日中に異常な眠気を感じるなどの不調を感じるようであれば、中途覚醒が慢性化している可能性が高いでしょう。

「中途覚醒」の症状

中途覚醒により睡眠効率が低下

寝床に入っている時間のうち、実際に眠っていた時間の割合を「睡眠効率」といいます。

寝つきが良く、途中で目が覚めなかった場合の睡眠効率は100%に近くなりますが、中途覚醒することにより効率は低下してしまいます。

中途覚醒に悩む人は多い

不眠症の症状には、中途覚醒のほかに「入眠障害」(寝つきが悪い)、「早朝覚醒」(早朝に目が覚めて二度寝ができない)、「熟眠障害」(眠りが浅く、熟睡感が得られない)があり、4つのタイプに分けられます。

令和5年1月に公表された「令和4年度 健康実態調査結果の報告」では、睡眠時間に関する問いに対して「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」と回答した人の数が最多となり、中途覚醒に悩む人がいかに多いかが分かる結果となりました。

睡眠時間のとれている度合い

その事実を裏付けるかのように、質問サイトにも中途覚醒に悩む人からの相談が数多く寄せられています。

一週間ほど前から中途覚醒が続いてます。

寝てから3時間弱で起きてしまい、少し時間を開けてもう一度寝る感じです。

※Yahoo!知恵袋より一部引用

最近中途覚醒をしてしまうのですが原因ってなんですか?

眠りについてから2、3時間後に1回起き、そこから2時間毎に目が覚めたりします。

※Yahoo!知恵袋より一部引用
パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

小田

私自身も、疲れているはずなのに睡眠途中で2、3時間おきに目が覚めて、全く熟睡感を得られなかった経験が何度かあります。

翌日は午前中から強い眠気に襲われ、仕事にも集中できず困りました。

夜中に目が覚めるのはなぜ?中途覚醒の原因

夜中に目が覚めるのはなぜ?中途覚醒の原因

中途覚醒はなぜ起こるのでしょうか?夜中に何度も目が覚めてしまう主な原因として、以下があげられます。

  • ストレス
  • 生活習慣の乱れ
  • 加齢
  • いびき
  • 就寝前のお酒
  • 病気
  • 睡眠環境が悪い

それぞれの内容について詳しく解説いたします。

ストレス

中途覚醒が起こる要因の中でも、特に影響を与えるのがストレスです。

ストレスにより「セロトニン」の分泌量が減少

ストレスがたまると、私たちの体の中では“幸せホルモン”と呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が低下します。

良質な眠りに欠かせない眠気を誘う“睡眠ホルモン”のメラトニンは、セロトニンから生成されます。

そのため、セロトニンが不足しているとメラトニンの分泌量も減少し、眠りの質が悪くなって夜中に目が覚めやすくなるのです。

セロトニンとメラトニン

セロトニンの減少は自律神経の乱れにもつながる

セロトニンは、自律神経の「交感神経」と「副交感神経」がスムーズに切り替わるようにサポートする役割を担っています。

  • 自律神経とは?

  • 自分の意思とは関係なく、血圧や呼吸、代謝、消化などさまざまな機能を調整する神経系のこと

    1. 交感神経
      日中の活動的な時間帯に働く。心拍数を増やし、血圧を上昇させる。身体を緊張状態にする
    2. 副交感神経
      夕方から夜間にかけて優位になる。心拍数を減らし、血圧を低下させる。身体をリラックスさせる

セロトニンが不足すると、就寝時刻が近付いても交感神経が優位な状態が続きます。

その結果、寝つきが悪くなって睡眠全体の質が低下。眠りも浅くなり、夜中に目が覚めることにつながります。

ストレスにより「コルチゾール」が過剰分泌

ストレスによって中途覚醒が起こる原因は、セロトニン不足だけではありません。“ストレスホルモン”の異名をもつ「コルチゾール」の過剰分泌も関係しています。

コルチゾールは血糖値や血圧の調整、代謝促進などに作用するホルモンです。睡眠時には分泌が抑制され、目覚める直前に多く分泌されます。

しかしストレスがたまっている場合、睡眠中もコルチゾールの分泌が止まりません。すると身体は常にストレスと戦っている緊張状態となり、熟睡できず中途覚醒が引き起こされるのです。

コルチゾールの過剰分泌によって睡眠不足が続くだけでなく、慢性化すると脳の海馬が委縮する恐れも。海馬が委縮すると、物忘れが激しくなったり、うつ状態になったりといった症状が表れます。

ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る

生活リズムの乱れ

セロトニンは目に光を浴びると分泌がスタートする性質があり、体内時計をリセットする役割も果たします。

起きてすぐに朝日を浴びるのが効果的ですが、起床時間がバラバラになるとこの働きが不十分になります。

また食事などのタイミングが不規則になることもセロトニンの分泌量を低下させ、体内時計が乱れる原因となります。

加齢

中途覚醒の平均時間は年齢が10歳上がるごとに9.7分増加し、20代で30分前後、40代で50分前後、60代で70分前後となることがカナダのトロント大学などの研究により分かりました(※1)。

睡眠効率も、若年者は通常90%以上となるのと比較して、65歳以上では80%以下にまで低下する傾向があります(※2)。

就寝時間は加齢とともに前倒しになる傾向があり、長時間の昼寝や運動不足といった要因も影響を与えることにより、夜間の睡眠リズムが乱れて眠りの質が低下。中途覚醒の増加をもたらすのです。

加齢による中途覚醒

トイレのために目が覚める「夜間頻尿」

加齢による頻尿も、中途覚醒を増やす大きな原因です。

寝ている途中でトイレのために目が覚める「夜間頻尿」は40代の人の約4割、50代で約6割、70代以上では約9割の人に発生し、加齢とともに割合が増加。

60代男性の約4割、女性の約3割、70代男性の約6割、女性の約5割、80歳以上では男性の約8割、女性の約7割が夜中に2回以上排尿のために目が覚めていることが明らかになっています(※3)。

いびき

いびきにより呼吸が不安定になり息苦しくなることに加え、その音によって目が覚めてしまうこともあります。

就寝前の喫煙

タバコによるニコチンの摂取によって睡眠効果が低下することや、不眠症の症状が表れることが研究で明らかになっています(※4)。

就寝前のお酒

アルコールを摂取すると一時的に寝つきは良くなりますが、眠りそのものは浅くなって目覚めも悪くなります。そして毎晩飲み続けると耐性がついて、寝つきも悪くなっていきます。

またアルコールの摂取量が増えると悪夢を見ることが多くなり、中途覚醒が増えます(※5)。

寝る前のお酒が原因の中途覚醒

病気

病気の中には、中途覚醒を起こしやすくするものがあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠に関連する疾患の中でも、特に睡眠の質を低下させることで知られているのが「睡眠時無呼吸症候群」。

睡眠中に無呼吸になることで眠りが浅くなるほか、息苦しさのために何度も目覚めて睡眠時間が断続的になる傾向があります。

さらに、睡眠時無呼吸症候群の症状がある人の47.8%に夜間頻尿がみられるとの報告もあります(※6)。

胸腔内圧の低下が心臓へ戻る血液量を増やし、その負荷を軽減するために尿を増やす心房性ナトリウム利尿ペプチドを放出することや、低酸素状態が膀胱の内圧を上昇させることが原因と考えられています。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

脚にムズムズとした感覚や虫が這うような感覚が出現し、「脚を動かしたい」という感覚に襲われる「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」は、夕方から夜間にかけて症状が悪化するとされています。

症状のために寝つきが悪くなるだけでなく、眠れたとしても浅い睡眠となって睡眠の質が低下し、夜中に目が覚める原因に。

睡眠環境が悪い

睡眠をとる部屋が暑すぎる・寒すぎる、湿度が高すぎる・乾燥しているなど睡眠に適していない環境で寝ると、夜中に目が覚めやすくなります。

また、明るすぎる部屋や外からの音が聞こえやすい部屋も睡眠には適していません。

※1 出典:Mark I Boulos, Trevor Jairam, Tetyana Kendzerska, James Im, Anastasia Mekhael, Brian J Murray. Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis April 2019 The Lancet Respiratory Medicine.

※2 出典:三島和夫. "高齢者の睡眠と睡眠障害." 保健医療科学= Journal of the National Institute of Public Health 64.1 (2015): 27-32.

※3 出典:本間之夫, 柿崎秀宏, 後藤百万, 武井実根雄, 山西友典, 林邦彦, 排尿に関する疫学的研究 日本排尿機能学会誌 14 (2), 266-277, 2003

※4 出典:Jaehne A, Loessl B, Bárkai Z, Riemann D, Hornyak M. Effects of nicotine on sleep during consumption, withdrawal and replacement therapy. Sleep Med Rev. 2009 Oct;13(5):363-77. doi: 10.1016/j.smrv.2008.12.003. Epub 2009 Apr 2. PMID: 19345124.

※5 出典:アルコール依存症に関連する睡眠障害/精神経誌 (2010) 112巻8号

※6 出典:Hajduk, Istvan A., et al. "Prevalence and predictors of nocturia in obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome-a retrospective study." Sleep 26.1 (2003): 61-64.

「夜中に何回も目が覚める…」睡眠に悩む人必見!深いノンレム睡眠を増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る

中途覚醒の治し方

中途覚醒の治し方

熟睡を妨げる中途覚醒。すぐにでも不眠症状を改善するために、高い効果が期待できる対策をご紹介します。

  • 朝起きたらすぐに太陽の光を浴びる
  • 起床・就寝の時間を一定にする
  • 適度な運動を行う
  • 寝床ではスマホを見ない・触らない
  • ストレスを解消する
  • 夜中のトイレの回数を増やさないようにする
  • セロトニンを増やす食品を摂取する
  • 腸内環境を整える

それぞれの対策について詳しく解説いたします。

朝起きたらすぐに太陽の光を浴びる

目覚めてすぐに日光を浴びることで、セロトニンの分泌がスタートします。

曇りや雨の日は光の量が少なくなりますが、それでも光が当たる場所で過ごすとセロトニンの分泌が促されます。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

小田

休日は起きてもカーテンをなかなか開けないという人が多いかもしれませんが、睡眠の質を高めて中途覚醒を解消するためにも、「起きたらまずカーテンを開ける」ことを毎朝のルーティンにしましょう。

起床・就寝の時間を一定にする

規則正しい生活を送ることで、セロトニンの分泌量が増加して良質な眠りをもたらします。

可能であれば、朝食・昼食・夕食も同じ時間に摂るようにしましょう。

適度な運動を行う

一定のリズムで体を動かすことは、セロトニンの分泌を促す効果があります。

中でもおすすめなのが、一定のスピードで歩くウオーキングです。高齢者を対象に行った調査で、1日に歩く歩数が多いほど睡眠効率が高くなるという結果が報告されています(※)。

寝床ではスマホを見ない・触らない

スマートフォンの画面から発せられるブルーライトは、脳に「今は日中だ」と勘違いさせてメラトニンの分泌を止めてしまいます。

また、スマホから得た情報によって脳が興奮し、寝つきを悪くして眠りの質を低下させ、中途覚醒の原因に。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

小田

夜中に目が覚めると、つい「今何時だろう?」とスマホを手にしてしまいますよね。時間を確認したついでに、ついニュースやSNSまでチェックしてしまうと目が冴えて寝られなくなります。

就寝の2時間前を目安に、スマホから離れましょう。

ストレスを解消する

ストレスの蓄積と睡眠不足の悪循環を断つために、こまめなストレス解消を行いましょう。

睡眠前の軽いストレッチやヨガには、呼吸を深くしてリラックス効果を高める作用も。眠りを誘うラベンダーなどのアロマオイルを焚くのも良いでしょう。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

小田

私が試して効果を感じたストレス解消法は、寝る前に簡単なヨガポーズをとることです。

難しいポーズは体が興奮して寝られなくなりますが、簡単にできるポーズであれば体に負担がかからず、呼吸が深くなってリラックスできました。

夜中のトイレの回数を増やさないようにする

夜間のアルコールやカフェインの摂取は睡眠の質を低下させるだけでなく、利尿作用によって夜中に目が覚める原因となるので飲みすぎに注意しましょう。

また、日中に溜まった下半身の水分を排出するため、夕方以降に散歩やストレッチといった軽い運動を行ったり足を高くした状態で横になったりするのも、夜間頻尿対策に効果的とされています。

パーソナル睡眠アドバイザー 健康管理士一般指導員 小田健史

小田

実は私、お酒が大好きなんです。アルコールと睡眠の関係について知るまでは、寝る直前まで飲むことが少なくありませんでした。

でも、寝る前の飲酒を控えるようになってからは、夜中に目覚めることが少なくなりました。

セロトニンを増やす食品を摂取する

質が高い眠りをもたらす、睡眠ホルモンのメラトニン。

メラトニンの原料となるのはセロトニンですが、そのセロトニンを生成するために欠かせないのがトリプトファンです。

トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、体内では作り出せません。そのため、食品からの摂取が必要です。

トリプトファンが多く含まれる食べ物を適量取り入れ、栄養バランスがとれた食生活を心掛けましょう。

  • トリプトファンが豊富に含まれる食べ物

    • ・チーズ
    • ・ヨーグルト
    • ・牛・豚・鶏のレバー
    • ・大豆
    • ・ナッツ
    • ・バナナ

腸内環境を整える

腸内環境を改善することで、ストレス負荷による不安や抑うつ症状が緩和されることが研究によって明らかにされています(※2)。

便秘も睡眠の質を低下させる大きな原因です。中途覚醒を改善するためにも、腸内環境を整える生活習慣や食生活を実践しましょう。

※1 出典:Kimura, Noriyuki, et al. "Association between objectively measured walking steps and sleep in community-dwelling older adults: a prospective cohort study." Plos one 15.12 (2020): e0243910.

※2 出典:高山喜晴. "精神的ストレスによる腸管上皮の糖鎖パターンの変化 「脳・腸・腸内細菌相関」 のメカニズムの解明に向けて." 化学と生物 57.8 (2019): 459-460.

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睡眠で大切なのは長さよりも“質”

今回は、不眠症状の中でも時に発生頻度が高い「中途覚醒」について解説しました。

早い時間に就寝したとしても、中途覚醒が繰り返された場合は熟睡できません。全体的に眠りが浅く、翌日の昼に強い眠気を感じることが多くなるでしょう。

睡眠で大切なのは長さよりも“質”

睡眠の質は、長さよりも質が肝心だと言われています。

睡眠は、一晩のうちに脳を休ませて成長ホルモンを分泌する「ノンレム睡眠」と、身体を休ませて脳は活動する「レム睡眠」の交替が繰り返し行われています。

その交替サイクルが規則正しければ、質が高い睡眠となるのです。

しかし夜中に何度も目が覚めた場合、睡眠のサイクルが乱れます。すると、眠りによる十分な疲労回復が行われなかったり、内臓代謝に影響を及ぼしたりして、生活習慣病の発症リスクを高める可能性もあるでしょう。

「朝までしっかり熟睡できない」「夜中に目覚めて翌日がつらい」など中途覚醒の症状が続いている人は生活習慣の見直しを行い、長期間改善しない場合は睡眠専門医や医療機関へ一度相談してみることをおすすめします。

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