最終更新日:2023.10.26
女性ホルモンの変動は、女性の身体に色々な影響を及ぼします。特に更年期はホルモンバランスの変動が大きく、様々な症状によって不快感を覚える人が少なくありません。そんな更年期障害の中でも、特に悩まされる人が多いとされるのが不眠症状。寝つきの悪さや眠りの浅さで、満足できる睡眠がとれていない人もいるのではないでしょうか?
今回は、更年期と不眠の関係や症状を緩和するための方法などを、睡眠アドバイザーとしての知識を盛り込みながら解説します。更年期障害の不眠で悩んでいる人は、参考にしてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
横尾 奈都
眠りのお悩みは人それぞれです。仕事や趣味を充実させるために、もっと睡眠のパフォーマンスを上げたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
睡眠には多くの要因が絡んでいますので、このやり方が万人にとって正解だ!というものはありません。さまざまな情報からあなたに合うもの、可能性があることを見つけていただくお手伝いができれば幸いです。
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
更年期の症状は、閉経に伴って女性ホルモンの1つである卵胞ホルモンエストロゲン」の分泌量減少が原因で起こります。「エストロゲンは生殖機能だけでなく、骨の量や強度を高めたり、肌の美しさを保ったり、脂質代謝をコントロールしたりと体中のあらゆる機能に影響を与える重要なホルモンです。
40代半ばを超えるとエストロゲンは徐々に分泌量が低下しはじめ、体内のホルモンバランスが不安定な状態になります。そうなると、エストロゲンによって保たれていた健康的な状態が崩れ、更年期障害と呼ばれる症状を引き起こすのです。
更年期障害の症状は、多岐にわたります。その中でも主な症状として挙げられるのが、次の8つです。
女性ホルモンのエストロゲンには、睡眠を促す作用があります。そのため、更年期に入りエストロゲンが減少すると寝つけない・眠りが浅いなどの不眠症状が表れるようになります。また、エストロゲンの減少は「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の不足にもつながります。セロトニンは「睡眠ホルモン」と呼ばれる「メラトニン」を分泌する原料となるため、メラトニンも不足することになりさらに睡眠の質が低下します。
不眠症状の中でも特に多いのが、更年期障害の多汗やほてりによって夜中に目が覚める中途覚醒です。また、ライフステージの変化にともなうストレスや不安も不眠を引き起こす要因として指摘されています(※)。
さらに、ストレスを緩和させる作用があるアミノ酸「GABA(ギャバ)」も減少するため、気分の変動が激しくなって不眠傾向に拍車がかかります。それによって、入眠までに時間がかかるようになったり、睡眠途中で何度も目が覚めたりして睡眠の質が低下するのです。
エストロゲンが減少すると、自律神経の調整が上手くいきません。自律神経は身体の様々な機能を調整しているため、バランスが崩れることによって急に顔がほてる「ホットフラッシュ」や、急な発汗、多汗などの症状が表れます。
エストロゲンは、心血管を保護する役割も担っています。動悸や息切れの原因として、エストロゲンの分泌低下や自律神経の乱れによる影響が考えられていますが、明確な理由は分かっていません。重篤な病気が隠れている可能性もゼロではないため、あまりに動悸や息切れの症状が激しい場合は医療機関の受診を検討しましょう。
エストロゲンが減少すると、肌表面の毛細血管まで血液が巡りにくくなります。その結果、肌への栄養や水分が行き渡らなくなり、ハリやツヤが失われて肌荒れを引き起こしやすくなるでしょう。
自律神経の乱れは血行にも影響を及ぼし、冷え性に悩まされるようになります。ます。血行不良で末端へ血液が行きにくくなると、指先やつま先などが冷えやすくなり、寝る時もなかなか温まりません。そのため、寝つきも悪くなります。
更年期の頭痛には、頭の片側だけが痛む「片頭痛」と、頭全体が輪っかで締め付けられるように痛む「緊張型頭痛」の2種類があります。
片頭痛の原因にはエストロゲンの減少が関係していると考えられていて、閉経前の期間に悩まされる人が多数です。一方、緊張型頭痛は血行不良が原因の1つですが、更年期によるホルモンバランスの変動が影響しているかは明らかになっていません。
些細なことでイライラしたり、理由もなく落ち込んで憂うつな気分になったりと、気分の浮き沈みが激しくなるのも更年期障害に見られる症状の1つです。
エストロゲンの減少による「幸せホルモン」セロトニンの不足といったホルモンバランスの変化に加えて、家庭や社会的立場の変化による喪失感や将来への不安感など、様々な要因が絡み合うことで心理状態が不安定になることが増え、抑うつ状態になりやすくなります。
エストロゲン減少による自律神経の乱れは、疲労感を与えます。そこに不眠や情緒不安定といった要素が積み重なることで、余計に疲労感を感じやすくなります。
※:香坂雅子. "女性の睡眠と健康." J. Natl. Inst. Public Health 64.1 (2015): 34.
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更年期障害はいつから始まり、いつまで続くのでしょうか?
日本産科婦人科学会は、更年期の年齢について「閉経前の5年間と閉経後の10年間とを併せた10年間」としています。日本人の閉経平均年齢は約50歳であるため、45歳~55歳頃が更年期にあたると考えられるでしょう。しかし、早い人では30歳後半から更年期に差し掛かることもあり、一概に「何歳からが更年期」とは言えません。
閉経のサインとして挙げられるのが、月経不順です。順調だった月経の周期が変動したり、始まったと思ったら長く続いたり…。そのような月経不順を経て、月経のない状態が12カ月以上続いた場合が閉経とされています。
更年期障害の症状を和らげる方法として、ホルモン補充療法や漢方薬の服用などがありますが、ここでは症状を緩和する効果が期待できる栄養素を含んだ食べ物を紹介します。
大豆に含まれる成分「大豆イソフラボン」は、エストロゲンに似た働きをします。大豆イソフラボンの1日摂取目安量は70~75mgで、1パック200gの豆乳であれば2パック分です。
大豆イソフラボンには、骨粗しょう症や更年期障害を改善する効果が報告されていますが、摂取しすぎると子宮内膜症などを引き起こす可能性が指摘されています。毎日の目安量を基準に、適量の摂取を心がけるようにしましょう。
発酵食品には乳酸菌が含まれていて、腸内環境を整えます。腸内環境が良いと自律神経が整いやすくなるため、自律神経の乱れが原因で起こる更年期障害の症状改善が期待できます。大豆イソフラボンが含まれる納豆や、カルシウム豊富なヨーグルトが特におすすめです。
イワシをはじめとした青魚には、必須脂肪酸の「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれています。オメガ3脂肪酸は「n-3系多価不飽和脂肪酸」とも呼ばれ、血液をサラサラにしたり脳の認知機能を維持したりするDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、血中脂肪を下げるα-リノレン酸などがあります。
オメガ3脂肪酸は顔のほてり(ホットフラッシュ)を抑えるほか、心臓疾患や脳卒中の発症リスクを下げる作用があるとされています。オメガ3脂肪酸は体内で生成できないため、食品やサプリメントからの摂取が必要です。
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エストロゲンが減少すると、骨密度が低下して骨粗しょう症を発症しやすくなります。骨粗しょう症を予防するためにも、カルシウムが豊富な牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を食べるように心掛けましょう。
カルシウムは、ビタミンDと同時に摂ることで吸収効率が高まります。
赤身の肉や魚には、亜鉛が多く含有されています。亜鉛は細胞の生成や正常な味覚を維持する作用があるほか、性ホルモンの合成にも関わっています。そのため、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの分泌を促すために、積極的に摂取したい栄養素です。
赤身の肉や魚は、更年期で落ちやすくなった筋肉を保持するために必要なタンパク質も豊富に含んでいます。
不眠対策として、メラトニンの原料であるセロトニンや、必須アミノ酸のトリプトファンを多く含有している食品を食べるようにしましょう。
バナナには、セロトニンとトリプトファンの両方が含まれています。ヨーグルトと一緒に摂れば、乳酸菌・カルシウム・セロトニン・トリプトファンといった更年期の女性に必要な栄養素が手軽に摂れるので、おすすめです。
更年期障害の症状は個人差が大きいため、人によって悩みが異なります。つらい症状に「ずっと続くのだろうか」と不安を感じ、眠れなくなることもあるでしょう。
最近は、良質な睡眠をサポートする成分を配合した睡眠サプリメントや、青魚のオイルを配合したサプリメントなど、更年期障害の緩和に役立つ商品が豊富に販売されています。更年期を終えた後の毎日を思い切り楽しむためにも、自分に一番合う対策法で更年期を乗り切りましょう!