最終更新日:2024.1.31
世界の中でも睡眠時間が短いことで知られる日本人。特に、40歳以上の女性は世界でもっとも睡眠時間が短いという、驚きの調査結果も!(※)
では、睡眠不足だと心身の健康にどのような影響があるのでしょうか?
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、睡眠不足の症状や影響、対策法などを詳しく解説します。
また、睡眠不足が蓄積する「睡眠負債」のセルフチェック法もお伝えしますので、睡眠不足が気になる人はチェックしてみてくださいね。
※:経済協力開発機構(OECD)2021年版調査より
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
何かと忙しい毎日を送る中で、つい削りがちなのが睡眠時間です。「たかが睡眠不足」と軽視しがちですが、睡眠不足は私たちの心身に様々な悪影響を及ぼすことが分かっています。
寝不足による代表的な症状をご紹介しますので、思い当たる症状がある人は睡眠時間が不足していないか、生活を振り返ってみましょう。
睡眠不足で気持ちが悪い・吐き気を感じるといった症状を感じたことがある人もいるのでは?その主な原因が、自律神経の乱れです。
自律神経には、日中に働いて消化を抑制する「交感神経」と、夕方以降に優位になって心身の緊張をやわらげたり、消化吸収を促進したりする「副交感神経」の2種類があります。
睡眠不足で自律神経が乱れていると、食べ物の消化・吸収が正常に進まないため、吐き気を感じる、気持ちが悪くなるといった症状が表れるのです。
自律神経の不調による様々な症状は「自律神経失調症」と呼ばれ、消化器官に関連するものとしては慢性胃炎や慢性胃炎、過敏性腸症候群、便秘などを引き起こします(※1)。
脳は、眠っている間にその日記憶した情報を整理・保存しています。しかし、睡眠時間が足りなかったり、睡眠の質が悪かったりすると、脳に記憶がちゃんと記録されません。それに伴って、記憶力の低下や、物忘れが激しくなるといった症状が表れます。
睡眠不足を感じている場合、睡眠時間が短いことに加えて、睡眠の質が低下しているかもしれません。質が悪い睡眠では十分な疲労回復効果が得られず、次の日に強い眠気やだるさを感じる可能性も。その結果、仕事や勉強などのパフォーマンスが低下します。
睡眠不足によって自律神経が乱れると、交感神経の働きが強くなって血圧の変動が激しくなり、めまいを引き起こしやすくなります(※2)。
睡眠不足が慢性化すると、メラトニンの分泌量が減少します。メラトニンには成長ホルモンの分泌を促進する作用があり、最も深い眠りの時間帯である「ノンレム睡眠N3(徐波睡眠)」のタイミングで分泌量が最大になるとされています。
メラトニンの分泌量が少ないと成長ホルモンの分泌量も低下し、新陳代謝が正常に行われません。新陳代謝が進まないことで肌荒れや吹き出物、肌の老化といった様々な悪影響が出てきます。
睡眠不足は、肥満を招きます。その原因は、睡眠不足が続くと食欲抑制ホルモン「レプチン」の分泌が減少し、逆に食欲増進ホルモン「グレリン」の分泌量が増加するためです。
しかも寝不足によって分泌されたグレリンは、高カロリー・高脂質な食べ物への欲求が強くなる傾向があります。さらに、睡眠不足の状態では成長ホルモンの分泌量も減少。代謝が低下して太りやすくなります。
睡眠不足が慢性化して肥満が進むと、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の発症率が高くなります。
善玉コレステロールの減少で血液がドロドロになり、血管に詰まりやすくなります。血管が詰まりやすくなると、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが上昇し、重篤な事態につながることが少なくありません。
睡眠不足はアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めると言われています。アルツハイマー型認知症の発症原因は、脳が活動した時に排出される老廃物「アミロイドβ」が脳内に沈着するため。
アミロイドβは通常、ノンレム睡眠の時に排出されますが、睡眠不足による眠りの質の低下で中途覚醒などの睡眠障害が生じると、アミロイドβが排出されずに脳内へ沈着。やがて、アルツハイマー型認知症を発症させます(※3)。
睡眠時間不足の状態では、交感神経の刺激によってアドレナリンが分泌されます。血中のアドレナリン濃度が高いと攻撃性が高く、思い込みが強くなり、他人との協調性が低くなることが調査により明らかになっています(※4)。
このことから、睡眠不足の時はイライラしやすく、攻撃的な傾向が強くなると言えるでしょう。
うつ病と睡眠不足には深い関連性があることが、様々な研究で明らかにされています。
例えば、平均年齢16歳の若者161人を対象に行ったレム睡眠と抑うつ状態についての分析では、レム睡眠の質の低下と断片化によって抑うつ状態が引き起こされることが示唆されました(※5)。
※1:東野英明. "自律神経異常に起因する疾病とその対策." 日本良導絡自律神経学会雑誌 51.3 (2006): 94-104.
※2:松永亨. "自律神経機能とめまい." 耳鼻咽喉科臨床 80.6 (1987): 865-878.
※3:橋本和典. "認知機能と睡眠障害の関連." 天理医学紀要 24.2 (2021): 118-122.
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
睡眠不足分の時間を“眠りの借金”として、毎日少しずつ蓄積したものが「睡眠負債」です。睡眠負債の解消には、不足した分と同じ長さの睡眠時間をとることが必要だと言われています。
週末に寝だめをすれば睡眠負債は解消できるのでしょうか?例えば月曜から金曜までの平日に睡眠時間が毎日1時間ずつ足りなかった場合、たまった睡眠負債は5時間。それを解消するためには、土曜・日曜で2時間半ずつ睡眠時間を増やせば、睡眠負債を返せることになります。
しかし、話はそう単純ではありません。平日と休日の起床時間に2時間以上のずれが生じると、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ・社会的ジェットラグ)」と呼ばれる体内時計の乱れが発生します。
ソーシャル・ジェットラグによって体内時計に狂いが生じると、起床・就寝時間にも影響が及んで睡眠の質が低下。乱れた体内時計はなかなか元には戻らず、さらに睡眠負債がたまっていくという悪循環に陥ってしまうのです。
睡眠負債は、自分ではたまっていることに気付きにくいのが特徴です。睡眠負債がたまっていないか、下記の項目で当てはまるものをチェックしてみましょう。
睡眠負債セルフチェック
いかがでしたか?該当する項目が多かった人は、睡眠負債がたまっている可能性大!睡眠不足を解消するために、生活習慣を見直して対処しませんか。
「日中、眠気で集中できない…」睡眠に悩む人必見!深いノンレム睡眠を増やし、眠りの質を改善する方法 >>詳しく見る
睡眠不足を解消して睡眠負債をなくすために必要なのは、十分な睡眠時間と質が高い眠りです。睡眠負債でたまった不足分の睡眠時間を確保できなかったとしても、眠りの質が良ければ睡眠負債は解消できるでしょう。
規則正しい生活リズムは、睡眠を促すメラトニンの元となるセロトニンの分泌量を増加させます。起床・就寝時間を一定にすると、夜は就寝時間が近付くにつれて自然に眠気を感じるようになるでしょう。食事や入浴もできるだけ同じ時間に行うことで、体内時計が正確になっていきます。
日中に強い眠気や倦怠感がある場合は、12時から午後3時の間に15分~30分程度の昼寝をするのがおすすめです。昼寝には夜の睡眠の3倍、効果があるとも言われています。
ただし、午後3時以降の昼寝や30分以上の昼寝は、夜に寝つきが悪くなる原因となるため避けましょう。
アロマには様々な効能があることが知られていますが、ベルガモットの精油には深い睡眠をもたらす効果があることが研究により明らかになりました。
研究では、ベルガモット精油の香りを吸入した場合は入眠までの時間が68%短縮し、総睡眠時間は45%延長。これは、市販されている睡眠導入剤・ブロチゾラムと同等の作用であるということが報告されています(※1)。
正しい生活リズムには腸内細菌の存在が欠かせないことが明らかになっているほか、腸内細菌は睡眠の質にも影響を与える可能性が示唆されています(※2)。腸内環境を整えれば睡眠の質が高くなり、睡眠負債の解消が期待できるといえるでしょう。
※1:村田雄介. "精油の香りが海馬と睡眠にもたらす好影響." におい・かおり環境学会誌 52.2 (2021): 118-124.
※2:入江潤一郎, and 伊藤裕. "睡眠と腸内細菌叢." 腸内細菌学雑誌 31.3 (2017): 143-150.
かつては「寝ないで頑張った」ことが武勇伝として語られる時代もありましたが、現在では睡眠の大切さが見直され、睡眠の質を高めるためのサプリやグッズ、アプリなどが提案されています。
睡眠不足による心身の不調を解消するためには、一時的ではなく長期的な生活習慣の改善を心掛けることが大切です。また、睡眠負債は、気付けば返済不可能なほど膨れ上がっていることも少なくありません。そんな睡眠負債を返すためには、睡眠の質を高めるサプリなどを上手に利用するのも1つの方法です。
質が高い睡眠で、毎日を快適に過ごしましょう。
セロトニンを増やす「ラフマ」とストレスを軽減させる「GABA」で、眠りの質を高める睡眠サプリ >>詳しく見る