最終更新日:2023.12.06
冬の朝はなかなか起きられない…という人も多いのではないでしょうか。「寒くて布団から出たくない」というだけでなく、冬は睡眠環境が悪くなって睡眠の質が低下しがちなことも、朝起きられない原因となります。
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜつつ、冬の睡眠の質が悪くなる原因や冬季うつ、睡眠の質を上げる方法などについて紹介します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
「布団やベッドに入ってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚める」。そのような不眠症状を感じる人が、冬場は増えると言われています。睡眠の質が悪くなると睡眠時間を長くすることでカバーしようとすることにもなり、朝すっきり起きることが難しくなります。
良質な眠りは免疫力の向上にもつながり、健康的な生活を送るためには欠かせない要素です。睡眠の質が低下してしっかり眠れないと、免疫力が低下して風邪や感染症にかかりやすくなることにも繋がります。
冬の睡眠の質を悪くするおもな要因を挙げていきましょう。
夏場は暑さによる寝苦しさの回避や熱中症対策のため、クーラーをつけて寝る人が多いでしょう。一方、冬場は寝る時にエアコンなどの暖房器具を使う人は少ないようです。
しかし室温が寒い環境では、体温調節のために寝姿勢や布団のかけ方を変えるなどの覚醒を伴う体動が発生することが増えます。また、寒い環境で就寝した場合、寝返りをうつことでさらに寒くなり、暖かい環境を作り出すのは困難となるでしょう。そうなると中途覚醒が増加し、睡眠の質が低下する原因となります。
室内温度と睡眠状態について調べた研究では、室温が寒い環境で眠った場合の深睡眠出現率が低下していたという結果が明らかになりました(※1)。
また、中途覚醒を増やす原因の一つの「夜間頻尿」があります。高知県で秋冬の室温が夜間頻尿症状に及ぼす影響について検証した実験では、就寝前の居間の室温が寒い場合、夜間頻尿症状が悪化することが示唆されました(※2)。
冬は室温と外気温の差が夏場よりも激しいため、自律神経がバランスを崩しやすくなります。自律神経は睡眠に深く関係していて、日中に働く交感神経から夕方以降のリラックスした時間に優位になる副交感神経へと切り替わることで、スムーズに就寝できます。そのため、自律神経が乱れると寝つきが悪くなり、睡眠全体の質が低下するのです。
女性に多い「冷え性」も、自律神経と関係しています。ある研究では、冷え性の人は非冷え性の人に比べて交感神経が優位であることが考えられる調査結果が出ています(※3)。
冬は“睡眠ホルモン”であるメラトニンの原料となる脳内物質「セロトニン」の分泌量が減少します。通常は、起きてすぐに朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌がスタート。日中はセロトニンの分泌が続きます。そして、夕方以降になるとメラトニンの分泌が始まります。
しかし、冬は日の光が弱く日照時間が短いため、体内時計のリセットもうまくいかず、セロトニンの分泌量も減少。するとメラトニンの分泌量も少なくなり、睡眠の質が低下するのです。
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
冬は、寝違えやこむら返りが起こりやすくなります。こむら返りとは足がつる症状で、気温が下がる明け方が起こりやすい時間帯です。冬にこむら返りや寝違えが起きやすい原因として、寒さによる血行不良や運動不足、水分・ミネラル不足などが考えられます。
※3:福岡知子, et al. "冷え症の生理学的メカニズムについて─ 健常成人男女の自律神経活動と熱産生による検討─." 日本臨床生理学会雑誌 52.2 (2022): 87-93.
冬に起きる睡眠トラブルは、不眠だけではありません。冬に抑うつ症状が表れる「冬季うつ病」も睡眠障害をもたらす大きな要因で、寝すぎてしまう過眠の症状を引き起こすケースがあります。
冬季うつ病は「季節性うつ病」の一つで、日照時間が短い冬に気分の落ち込みや社会性の低下といったうつ症状がみられます。うつ病では睡眠障害を併発することが多く、その多くは不眠症状です。しかし、冬季うつ病の患者には過眠の症状が多く表れるという特徴があります(※1)。
冬季うつ病の治療法としては、高照度の光を朝に照射することでメラトニンの促進リズムが前進して概日リズム(体内時計)の位相が前倒しになり、うつ症状が改善できるという仮説が提唱されています(※2)。
※2:金野倫子. "うつ・リズム・女性 (シンポジウム 1 「高齢社会と女性」,<特集> 第 42 回日本女性心身医学会学術集会報告)." 女性心身医学 18.3 (2014): 346-352.
それでは、冬にぐっすり安眠するために実践していただきたい、おすすめの快眠方法をご紹介します。簡単にとり入れられるものばかりですので、ぜひ明日からやってみてくださいね。
快眠できる温度は22℃~23℃、湿度は50%~60%とされています。寝る前に暖房と加湿器や濡れタオルなどで寝室の温度・湿度を快適な数値にすることで、心地良い眠りにつける可能性が高まるでしょう。
しかし、一晩中エアコンをつけて寝ると部屋が乾燥して喉をいため、風邪をひきやすくなります。乾燥による喉の痛みや肌のかさつきを防ぐためには、マスク着用での睡眠が効果的。シルクや綿で作られたマスクは、保湿性が高く肌に優しいのでおすすめです。
乾燥と電気代対策も兼ねて、極端に寒い日以外はエアコンをつけっぱなしにせずタイマーを活用するのもおすすめです。就寝後1時間半を目安にオフ、また起きる1時間前からオンになるよう設定することで、翌朝布団からも出やすくなります。
冬にベッドや布団に足を滑り込ませた瞬間、冷たさで一気に目が覚めた経験がありませんか?冬は寝具の冷質感が刺激となって入眠を妨げることが少なくありません。
せっかくの眠気を覚まさないためには、あんかや電気毛布類などで寝床を温めて快適な寝床気候に整えておけば、入眠を促す効果が得られると考えられます(※1)。あんかや電気毛布は、寝床に入ったら外へ出すようにしましょう。
冬は運動量が低下して、眠りを必要とするほど疲れがたまっていない場合があります。
ある調査では、冬に1日のうち1時間以上を屋外で過ごした人の割合は50.7%で、夏の70.8%に比べて有意に低いことが分かりました。冬は外出を毎日することによって、より良い睡眠につながる可能性があると考えられています(※2)。ウォーキングやジョギングなど、屋外でできる軽い運動を習慣にして快眠を目指しましょう。
睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となるのが「セロトニン」ですが、そのセロトニンを生成するのに欠かせないのが必須アミノ酸の「トリプトファン」です。トリプトファンを含む食べ物には、チーズやヨーグルトといった乳製品やナット・豆腐などの大豆製品、バナナ、卵などがあります。
※1:梁瀬度子. "睡眠と環境 季節による寝床気候と睡眠経過." The Annals of physiological anthropology 4.4 (1985): 331-333.
※2:山下舞琴,et al."冬の日照時間が短い地域に住む日本の高齢者における,冬と夏の睡眠の質に関連する要因."日本看護研究学会雑誌41.1(2018):1_19-1_28.
セロトニンを増やし睡眠の質を高める睡眠サプリで、ぐっすり熟睡体験 >>詳しく見る
今回は、冬の睡眠の質が低下する原因や冬季うつ、冬におすすめの快眠方法について詳しく解説しました。
風邪をひきやすい季節だからこそ、眠りの質を高めて免疫力アップを目指しましょう!
「足が冷えて眠れない」「靴下を履いて寝ている」という人は、こちらの記事もぜひ読んでみてくださいね。