最終更新日:2023.10.18
「毎日7時間以上の睡眠時間をとっているのに、しっかり眠れた気がしない」「ちゃんと眠ったはずなのに、昼間に眠くて仕方がない」。そんな悩みを抱えている人は、もしかすると「熟眠障害」かもしれません。
今回は、眠っても熟睡できない「熟眠障害」の原因や健康への影響、熟睡できるようになる改善方法について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながらお伝えします。朝起きても疲れがとれていない人や、日中に眠気で集中力が散漫になる人は、当てはまる症状がないかチェックしてみてくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
「熟眠障害」は、十分な睡眠時間を確保しているにも関わらず、しっかり眠れた気がしなかったり、朝起きた時に睡眠による疲労回復効果を感じられなかったりする症状です。
不眠症の症状の一つで、特に中高年以降で増加するとされています。
不眠症の他の症状である「入眠障害(寝つきが悪い)」や「中途覚醒(眠っている途中で何度も目が覚める)、「早朝覚醒(予定している時刻より2時間以上早く目覚めて、その後眠れない)」の場合は、睡眠時間が足りていない自覚があります。
しかし、熟眠障害の場合は「睡眠時間はちゃんと確保している」「朝まで眠れている」ため、睡眠による疲労回復効果や身体・脳の休息がとれていないという自覚症状がないことが少なくありません。
本人には不眠症であるという意識がないため、日中に強い眠気を感じても原因がわからず、対策として睡眠時間を必要以上に長くとって体内時計を狂わせることもあります。
熟眠障害の原因には、ストレスや加齢、睡眠中に症状が表れる病気などが関係しています。寝ても寝ても日中の眠気がとれないという人は、これらの項目に心当たりがありませんか?
ストレスがたまっていると、ストレスホルモン「コルチゾール」が分泌過剰となります。本来、コルチゾールは夜になると分泌量が低下しますが、ストレスで分泌量が増えると身体が覚醒状態のままとなって寝つけない状態に(入眠障害)。
寝つきが悪くなると眠りが浅くなり、寝ている途中や早すぎる時間に目覚めてしまいます(中途覚醒・早朝覚醒)。そうなると、しっかり眠れた気がしない「熟眠障害」につながるのです。
加齢とともに睡眠時間は短縮し、浅い眠りの時間が増えていきます。
そのため、若い頃よりも熟睡したと感じられる日が減少します。また、ある調査によると更年期女性は抑うつと不安を起因とした睡眠障害の割合が高く、特に熟眠障害を自覚する人は全体の41%にも上りました(※)。
中高年男性に多い「睡眠時無呼吸症候群」は、睡眠の質を低下させる代表的な疾患です。
眠っている間に呼吸が止まったり、浅くなったりを繰り返すことで眠りの質が低下し、熟眠感を得られなくなります。
中年以降の女性に症状が表れることが多い「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」も、熟眠障害を引き起こす要因です。
寝ようとしても「脚を動かしたい」という欲求に駆られるため、寝つきが悪くなり熟睡することが難しくなります。
部屋が暑すぎる・寒すぎる、乾燥しすぎているなど、寝室の温度や湿度が深い眠りを妨げる要因になることも少なくありません。また、寝具のサイズや素材、パジャマの材質や大きさが合っていない場合にも、ぐっすり眠れなくなるでしょう。
※:寺内公一. "更年期女性の不眠—その特性と対処法について—." 女性心身医学 22.3 (2017): 210-214.
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熟眠障害によって眠ったという満足感が得られない、つまり睡眠の質が低い日が続くと、様々な病気のリスクが上昇します。
熟眠障害は他の不眠症に比べて自覚症状に乏しいため、知らず知らずのうちに健康が蝕まれている可能性も…。
中高年(平均年齢59.4±10.1歳)の男女1850人を対象にした平均5.3年の追跡調査で、深い眠りである「徐波睡眠」(ノンレム睡眠ステージ3)の割合が少ない人ほど高血圧症を発症する確率が高いことが分かりました(※1)。
高血圧は動脈硬化を引き起こし、さらに動脈硬化によって脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、心筋梗塞などを発症させる要因となります。
熟睡できない状態が続くと、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌が低下し、逆に食欲を増進させるホルモンである「グレリン」が多く分泌されるようになります。
高脂質・高カロリーな食べ物への欲求を高めるグレリンの作用によって、太りやすい状態になってしまうのです。
うつ病と不眠症には深い関係性があります。不眠症の症状の中でも、うつ病の病相期では熟眠障害を訴える人が全体の89.9%にも上っていることが、調査によって明らかになっています(※2)。
ちゃんと睡眠時間を確保しているにも関わらず日中に強い眠気を感じる人は、熟眠障害かもしれません。熟睡するための不眠改善方法をご紹介します。
熟眠障害を改善する方法
睡眠の質を高めて深く眠り、朝スッキリ目を覚ます方法とは? >>詳しく見る
ここまで、熟眠障害の原因と健康への悪影響、改善方法について解説しました。
不眠の自覚がなくても、朝起きた時から疲労感やだるさを感じる人は熟眠障害の可能性があります。眠りによって心身の疲労回復効果が得られていないため、仕事中や授業中に強い眠気を感じることも多いでしょう。
もしも日常に支障をきたすほど強い眠気を感じるようであれば、専門医に相談することをおすすめします。