最終更新日:2023.10.13
睡眠に関する代表的な悩みとして挙げられるのは、寝つきの悪さや眠りが浅いといった不眠症関連のものです。しかし、逆に眠りすぎる「過眠」の症状に悩まされる人も少なくありません。
そこで今回は、睡眠障害の中でも珍しい病気である過眠症の一つ「反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)」について、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、解説していきます。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
日中、生活に支障をきたすほど過剰な眠気を感じることが3カ月以上続く場合は、睡眠障害の一つである過眠症の可能性があります。過眠症の中でも、睡眠不足や睡眠を妨げる病気が原因ではない場合、「中枢性過眠症」である疑いが強いでしょう。
中枢性過眠症の中にもいくつかの病気があり、その中の一つが反復性過眠症です。反復性過眠症は「クライネ・レビン症候群」や「眠れる森の美女症候群」とも呼ばれ、有病率は人口100万人あたりに1~2人(※1)。世界でも600例ほどしか報告がないため、大変珍しい病気だと言えます。
中枢性過眠症の病気 | 主な症状 |
---|---|
反復性過眠症 (クライネ・レビン症候群) |
数日から数週間にわたって強い過眠症状が続き、それが年に数回以上繰り返される |
ナルコレプシー | 日中に耐えられないほど強い眠気に襲われ、場所や状況に関係なく眠ってしまう。感情が大きく変化すると全身の力が抜ける情動性脱力発作がある |
特発性過眠症 | 日中に強い眠気を感じるが、ナルコレプシーよりも程度は軽い。居眠りをした場合は、1時間以上眠ってしまうことが多い |
反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)の患者は、ほとんどが男性(68~78%)と青年(81%)であり、平均発症年齢は15歳です(※2)。
過眠の症状は年齢が上がるとともに頻度が減り、やがて消失する傾向にありますが、患者のうち約15%は発症から20年以上経過しても回復の兆候がないという報告もあります(※3)。
ぐっすり眠れない人急増中?それはセロトニン不足が原因かも… >>詳しく見る
反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)になると、強い眠気を感じる時期(傾眠期)が3日から3週間続き、その後全く症状がない時期(間欠期)を繰り返します。傾眠期には食事と排泄以外の時間はほとんど寝て過ごすのが特徴です。
過眠以外の症状として、認知障害(重度の無関心、混乱、鈍さ、健忘症)や現実感喪失(夢見状態、知覚の変化)、過食症、性欲過多(主に男性)、抑うつ(主に女性)、不安、幻覚があることが分かっています(※)。
反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)になる原因は、はっきりとは分かっていません。しかし、一部のクライネ・レビン症候群の患者の遺伝子に珍しい変異が発見されたため、遺伝との関連性が指摘されています(※1)。
また、中国でクライネ・レビン症候群の患者44人について、その臨床的特徴を分析したところ、感染症または発熱が発症の引き金として最も多いことが明らかになりました(※2)。
他の研究でも、ある14歳の少年がインフルエンザのような症状が続いた後にクライネ・レビン症候群を発症したことが判明しています(※3)。
反復性過眠症の治療については、患者数が少ないため、確立された治療法は見つかっていません。しかし、気分安定薬である炭酸リチウムの投与によって過眠発作の頻度や程度が軽減したことが、ある研究によって報告されています(※4)。
また、適切な睡眠習慣の実践やアルコールの摂取を控えること、感染症にかからないよう注意することによって、傾眠期の頻度や重症度が緩和されることが分かりました(※5)。
※4:小川朋子, et al. "炭酸リチウムが奏効した反復性過眠症の 1 例." 臨床神経学 50.10 (2010): 700-703.
不規則になりがちな毎日でも、睡眠の質を高めて深い眠りにつく方法 >>詳しく見る
今回は、非常に稀な過眠症の病気である反復性過眠症(クライネ・レビン症候群)について、お伝えしました。クライネ・レビン症候群は大変珍しい病気であり、その特徴的な症状のために社会生活に大きな困難が生じることが予想されます。
日中に耐えがたいほどの眠気を感じることが3日から3週間程度続き、その時期を過ぎると昼間に強い眠気を感じなくなる場合は、反復性過眠症である可能性もゼロではありません。気になる症状があるなら、まずは睡眠外来がある医療機関を受診して医師に相談しましょう。