最終更新日:2024.2.20
ひと口に「小学生」といっても、小学生は6歳の1年生から12歳の6年生まで年齢の幅が広く、学年によって体格差もかなりあります。
そのため、小学1年生・2年生の低学年の子どもと小学5年生・6年生の高学年の子どもとでは理想的な睡眠時間に開きがあるのです。
保護者の方の中には「うちの子どもには何時間の睡眠が必要なの?」と、子どもの睡眠時間について頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか。
実際に、質問サイトでも小学生の睡眠時間についての疑問が、数多く寄せられています。
小学生二年生の男の子です。睡眠時間は何時間必要ですか?少ないと体の成長に影響ありますか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学生に必要な睡眠時間って何時間ですか?小学3年生で、9時ごろ寝て、7時に起きるのは寝すぎでしょうか?
引用元:Yahoo知恵袋
小学一年生女児の睡眠時間について。8時に寝て6時半まで寝てるんですが寝過ぎですか?夜ふかしさせたほうがいいですか?
引用元:Yahoo知恵袋
今回は、幼稚園から小学校へ入学したばかりの1年生から、中学校受験や入学を控えた小学6年生まで、それぞれの年齢に応じた理想的な睡眠時間や、眠りと学力の関係、睡眠が成長期の子どもの身体と心に与える影響まで、睡眠アドバイザーとしての知識を基に詳しくお伝えします。
「小学生の子どもを何時に寝かしつけたら良いのか分からない」「子どもの睡眠時間が短いけれど身体に悪い影響がないか心配」と、小学生の睡眠について悩みや疑問を抱いている保護者の方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
総務省が行った「令和3年社会生活基本調査」によると、10歳以上(小学4年生)の小学生全体の平日の平均就寝時間は21時50分。小学6年生だけを見ると22時03分で、15分程度遅くなっています。
小学生(10歳以上)の平日の平均就寝時間 | |||
---|---|---|---|
全体 | 男子 | 女子 | |
10歳以上(小学4年生)の小学生全体 | 21:50 | 21:51 | 21:48 |
小学6年生 | 22:03 | 22:07 | 21:58 |
※「令和3年社会生活基本調査」を基に作成
次に、10歳以上の小学生全体と小学6年生の平日の平均起床時間を見てみましょう。
小学生(10歳以上)の平日の平均起床時間 | |||
---|---|---|---|
全体 | 男子 | 女子 | |
10歳以上(小学4年生)の小学生全体 | 6:36 | 6:35 | 6:37 |
小学6年生 | 6:39 | 6:39 | 6:39 |
※「令和3年社会生活基本調査」を基に作成
これらのデータを基に計算すると、10歳以上の小学生の平均睡眠時間は8時間46分、小学6年生は8時間36分となります。
ちなみに、別の調査で明らかになった小学1年生全体の平均就寝時間は、21時48分。平均起床時間は6時54分で、平均睡眠時間は9時間6分でした(※)。
このことから、学年が上がるとともに子どもの睡眠時間は短くなる傾向があるということが分かります。
子どもの睡眠時間が短くなる原因は、保護者の夕食や就寝時刻が遅いことや、夜間の外出が多い、テレビの視聴時間が長いなど家族のライフスタイルが大きな影響を与えていると 考えても良いでしょう。
※;学業成績の規定要因における発達的変化/教育実践総合センター研究紀要 第17巻15-21(2008-03-31)
米国睡眠医学会は、6歳~12歳の子どもがとるべき睡眠時間として、24時間あたり9~12時間だと推奨しています。
ということは、小学1年生から6年生にとって理想的な睡眠時間は9~12時間程度であるにもかかわらず、小学4年生以上の子どもは必要な睡眠時間が得られていない可能性が高いといえるでしょう。
しかし、睡眠時間が長ければ長いほど良いかと言えば、一概にそうとは言えないことが分かる調査結果が出ています。
神奈川県で小学5年生199人を対象に睡眠習慣・食事習慣と学力の関係について調べたところ、平均的な時間に就寝・起床している子どもの方が、平均よりも就寝時間が遅い子どもや平均よりも起床時間が早い子どもに比べて、漢字テストと計算テストで高い得点を獲得しました(※)。
このことから、寝る時間を早くして睡眠時間を長く伸ばすよりも、平均的な時間に就寝・起床する方が学力の向上には良い影響を与えることが期待できるといえそうです。
※:小学生の睡眠習慣および食事習慣と学力との関連・小学生の睡眠・食事習慣と学力の関連/了德寺大学研究紀要 第6号37-50(2012)
小学5年生・6年生の高学年になると、中学受験のために塾に通い始めたり、家でも睡眠時間を削って勉強時間を確保したりしている子どもが増えてきます。
また、学校のクラブ活動や地域のスポーツチームへの参加、習い事などで帰宅が遅くなり、それにともなって夕食や入浴、就寝時刻が遅い時間にずれこむ子も多いのではないでしょうか?
しかし、成長期の子どもにとって睡眠不足の日が続くことは、心身の健やかな成長を阻害しかねない危険性でいっぱいなのです。
寝不足が小学生の身体や心、学力に与える恐ろしいダメージについてお伝えします。
小学生にとってしっかり眠ることが大切な理由の一つに、脳への記憶の定着があります。
眠りの状態には2種類あり、1つは体を休ませながらも脳は覚醒してその日に記憶したことを整理・固定する「レム睡眠」、もう1つは体を支える筋肉は働いていても脳は休息状態となる「ノンレム睡眠」です。
睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠が約90分の間隔で交互に訪れ、覚醒時間が近付くに従ってレム睡眠の割合が増えていきます。
入眠して最初に訪れるのはノンレム睡眠で、最も深い眠りに落ちる時間帯です。
その日に覚えたことを脳にしっかりと記憶を刻み付けるためには、最初のノンレム睡眠でどれだけ深く眠れるかが重要だと言われています。
しかし、生活リズムが乱れていたり、夜更けまでゲームをしていて寝つきが悪かったりすると、眠りが浅くなって記憶の整理・固定が不十分な状態に。これこそが、睡眠不足が学力低下を招く原因なのです。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いや理想的な割合をわかりやすく解説! >>詳しく読む
睡眠不足と学力低下の関係性が分かるデータをご紹介します。
「平成8年社会基本調査」では、10歳以上の小学生全体の平均睡眠時間は9時間3分、小学6年生は8時間55分となっています。
「令和3年社会基本調査」では、10歳以上の小学生全体の平均睡眠時間は8時間46分、小学6年生は8時間36分でそれぞれ短くなっていることが分かりました。
小学生の平均睡眠時間の変化 | ||
---|---|---|
平成8年 社会基本調査 |
令和3年 社会基本調査 |
|
10歳以上(小学4年生)の小学生全体 | 9時間3分 | 8時間46分 |
小学6年生 | 8時間55分 | 8時間36分 |
子どもの睡眠時間短縮に比例するかのように、2019年に実施された「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の結果から、小学校理科の平均得点が低下していることが明らかになっています。
また、2018年に高校1年生を対象にOECDが実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)」では、読解力の正答率が低下していました(※)。
どちらも国際的には上位に位置しているものの、睡眠時間が短くなるとともに子どもたちの学習力が下がっていることは懸念されるべき事実です。
※令和3年度 文部科学白書
遅い就寝時刻や短い睡眠時間によって、小児肥満が引き起される可能性の高いことが分かる調査結果が、報告されています。
小学1年生~3年生の子どもをもつ保護者を対象に、子どもの睡眠や食事といった基本的な生活習慣について調べた結果、肥満傾向にある子どもは睡眠パターンが不規則で就寝時間が遅く、睡眠時間も短い傾向にあることが分かりました。
就寝時刻が遅くなると小児肥満のリスクが高くなる理由には、夜更かしすると深夜に空腹感を感じて夜食を食べることや、食欲抑制に関係するホルモン「レプチン」の減少と、逆に食欲を増進させるホルモン「グレリン」増加の問題が考えられます。
また、睡眠時間が不足する自律神経が乱れ、糖代謝の低下や脂肪の分解機能不全を招いて太りやすくなるのです。
睡眠不足は、身長の伸びにも大きな影響を与えます。
身長を伸ばすためには「成長ホルモン」の存在が欠かせません。成長ホルモンが分泌されるのは、深い眠りであるノンレム睡眠の時です。
しかし、短い睡眠時間や質が低い睡眠のせいで成長ホルモンの分泌量が低下すると、身長が伸びにくくなる可能性が高くなります。
成長ホルモンには筋肉量を増やしたり、日中にダメージを受けた組織を回復したりする作用もあるため、寝不足の状態が続くと身長だけでなく身体全体に悪影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
和歌山県内の小学生1603名を対象にした調査で、小学生の体力と寝不足に深い関わりがあることが分かる結果が報告されています。
調査によると、1日の睡眠時間が6時間未満、6時間以上8時間未満、8時間以上の児童を比べると、睡眠時間が長くなるほど体力テストの得点が高いという結果が出ました(※)。
※:小学生の生活習慣が体力に及ぼす影響について/和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 No.20 2010
睡眠習慣と子どものメンタルヘルスの関係を調べた研究により、睡眠不足を感じている子どもは、睡眠不足を感じていない子どもに比べて「急に怒ったり泣いたりすることがある」「ちょっとしたことでカッとなる」「自分をだめな人間だと思うことがある」と回答した割合が高いことが判明しました。
また、休日の睡眠時間が9時間未満の子どもは、9時間以上の睡眠をとっている子どもよりも「何もする気にならない」「急に怒ったり泣いたりする」「何かやろうとしてもすぐにやめてしまう」「緊張していてリラックスできない」と答えた割合が高くなっています(※)。
このことから、睡眠習慣によって子どものメンタルヘルスが大きな影響を受ける可能性が高いことがうかがい知れます。
※:小学生における睡眠習慣の違いがメンタルヘルスと体力に及ぼす影響について/北海道大学大学院教育学研究院紀要 第126号2016年6月
睡眠不足が小学生の身体や心の成長を阻むだけでなく、学力低下の要因となることがお分かりいただけたでしょうか。
すぐにでも子どもの睡眠対策を行いたいところですが、夜遅くまでゲームをしていてなかなか寝なかったり、親の帰宅時間が遅いために子どもの就寝時間まで遅くなったり、など子どもの睡眠時間が短くなる理由は家庭によってさまざまです。
子どもに十分な睡眠時間をとらせるために、家庭ではどのような対策をすれば良いのでしょうか?
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、眠りをもたらす作用があるホルモン「メラトニン」の分泌を止めて、寝つきを悪くします。
また、動画やSNSなどスマホから得る情報も脳を興奮させて眠れなくなる原因に。就寝前の1~2時間前からスマホを使わせないようにしましょう。
学校から帰って夕方に仮眠をとり、夜に勉強するという小学生もいるでしょう。しかし、午後3時以降の仮眠は夜に寝つけなくなったり、睡眠の質を低下させたりします。
生活リズムが乱れる原因にもなるため、夕方に仮眠習慣がある子どもは注意が必要です。
スムーズに眠るためには、身体の深部体温が下がることが大切です。
寝る約2時間前にお風呂に入り、40度程度のぬるめのお湯に10分~15分程度浸かって体温を上昇させると、その後体温が下がっていく過程で眠気を感じるようになります。
就寝時間が遅い子どもは、朝ごはんを食べない傾向にあることが分かっています。
朝ごはんを食べないと、集中力が散漫になったり、体力が低下したりと悪影響が。朝ごはんを毎日食べることで、自律神経が整って生活リズムも安定します。
寝付きが悪い、眠れない…入眠障害の原因と寝付きを良くする対処法 >>詳しく読む
今回は、小学生の理想の睡眠時間についてお届けしました。
小学生は年齢に幅があり、学年によって成長度合いも大きく異なります。
しかし、どの年齢の子どもでも睡眠時間をしっかり確保することが、学力向上や身体・心の成長に欠かせないことは変わりありません。
近年は、小学校に入る前の幼児の就寝時間も遅くなっていることが明らかになっています。
夜10時以降に就寝する乳幼児の割合が3歳児では1980年は22%でしたが、2000年には52%と約2倍になり、5歳児・6歳児は10%から40%と、なんと4倍に!(※)
幼児の保護者の中には、「小学校に入ってから生活リズムを整えればいい」と考えている人がいるかもしれません。
しかし、幼児期に乱れた生活リズムは小学校に入ってもすぐには直りません。小学生の健やかな成長のためには、幼児期から生活リズムを整え、十分な睡眠時間を確保することが大切なのです。
※:小学生の睡眠習慣および食事習慣と学力との関連・小学生の睡眠・食事習慣と学力の関連/了德寺大学研究紀要 第6号37-50(2012)
子どもの睡眠リズムを守るためには、親の睡眠が大切。眠りの質を上げる睡眠サプリ >>詳しく見る