最終更新日:2023.12.27
寝すぎた日に、吐き気や胃の不快感といった気持ち悪さを感じたり、頭が痛くなったことがありませんか?
睡眠不足は身体に様々な悪影響を与えることが知られていますが、逆に長い時間寝すぎたことで気持ち悪くなったり頭痛が発生したりするのはなぜなのでしょうか。
今回は、睡眠アドバイザーとしての知識を織り交ぜながら、寝すぎて気持ちが悪くなる、頭が痛くなる原因や対処法をご紹介します。
この記事の執筆者
グリーンハウス株式会社
睡眠栄養指導士
小田 健史
健康食品業界で数々の商品開発や販促に12年以上携わる。
睡眠不足に悩まされ続けた自身の不眠体験から、一念発起して「睡眠栄養指導士」の資格を取得し、自らの知識と経験を基に機能性表示食品に登録された睡眠向上サプリ「睡眠体験」を開発。
現在、睡眠栄養指導士として多くの悩める方々へ睡眠の改善に関する情報を発信中!
<資格>
・一般社団法人 睡眠栄養指導士協会
睡眠栄養指導士® 中級
パーソナル睡眠アドバイザー®
・特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
健康管理士 一般指導員
目次
そもそも、何時間以上寝ると「寝すぎ」なのでしょうか?
適正な睡眠時間は個人差が大きいものの、目安として成人の場合は6~9時間程度です。
眠れる時間の長さは加齢とともに減少し、15歳前後では約8時間、25歳で約7時間、45歳では約6.5時間、65歳では約6時間と言われています(※)。
このことから、「寝すぎ」の目安は10時間以上だと考えられそうです。
自分にとって適切な長さの睡眠時間を得られているかは「睡眠による休養感が得られたか」「日中に強い眠気を感じないか」を目安にすると良いでしょう。
適切な睡眠時間以上に寝すぎてしまうのには、理由があります。寝すぎを引き起こす主な要因について解説していきましょう。
「睡眠負債」とは、睡眠不足が毎日少しずつ蓄積して慢性化し、心身に色々なダメージを与えている状態のことです。
睡眠負債をなくすためには、不足している時間と同じ長さの睡眠時間が必要とされています。平日の睡眠不足を週末に寝だめして補うために、寝すぎてしまう人が少なくないようです。
睡眠の質が低下すると、睡眠による休息効果を得られないために目覚めが悪くなり、二度寝や三度寝が増えます。それが寝すぎに繋がりますが、質が低い睡眠を何時間とっても眠りによる良い効果は得られません。その結果、疲労感や気持ち悪さを引き起こすのです。
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「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、寝ている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体内の酸素量が不足する疾患です。
睡眠時無呼吸症候群の人は眠りが浅く、睡眠途中で目覚めてしまうことが少なくありません。そのため、日中に強い眠気を感じたり、寝不足による疲労感を感じたりすることが多く、休日に寝すぎてしまうことが珍しくないでしょう。
体質によって、10時間以上の睡眠時間を必要とするのが「ロングスリーパー(長時間睡眠者)」です。
しかし、社会生活を営むうえで毎日10時間以上の睡眠時間を確保することは難しく、ロングスリーパーは慢性的な睡眠不足を抱えています。その不足分を補うために、週末になると12時間以上寝る人もいるようです。
寝すぎてしまう原因として、睡眠に関する病気が隠れている可能性があります。
睡眠時間が長くなる代表的な病気が「過眠症」です。過眠症の中でも、夜間の睡眠時間が10時間以上と特に長い傾向にあるのが「特発性過眠症」です。
通常のうつ病と睡眠には深い関係性があり、うつ病と不眠は切っても切り離せません。しかし、「非定型うつ病」では、逆に過眠症状が表れることが指摘されています。
非定型うつ病の患者は若い女性が多く、通常のうつ病とは症状や治療法が異なるのが特徴です。過眠のほか、過食の症状があります(※)。
※:大前晋. "非定型うつ病という概念―4 種の定義―." 精神神経学雑誌 112.1 (2010): 3-22.
薬の中には、副作用として眠気を感じさせるものが数多く存在します。眠くなる薬には、風邪や花粉症などの鼻炎治療に使われる抗ヒスタミン薬、抗うつ剤などがあります。
寝すぎてしまう原因が分かったところで、次に寝すぎるとなぜ気持ち悪くなるのかを解説しましょう。気持ち悪くなる理由は一つだけではなく、複数の要因が絡んでいる可能性も考えられます。
適切な睡眠時間以上に寝ると、体内時計に狂いが生じて自律神経が乱れる原因になります。自律神経は臓器の働きや血流など体の機能に影響を与えているため、自律神経がバランスを崩すと、吐き気をはじめとした不調を感じやすくなるのです。
新・国民病のトップ3にも挙げられている「機能性ディスペプシア」は、胃の痛みや不快感などの症状があるにもかかわらず、検査を行っても原因となる特定の疾患が発見されなかった場合に診断される病気です。
機能性ディスペプシアは、生活習慣の乱れやストレス、自律神経の乱れなど様々な要因が複雑に絡んで発症するとされています。機能性ディスペプシアになると腸の蠕動運動が弱くなり、通常よりも長い時間、胃の中に食べ物が停滞。胃酸の分泌量が増えて、胃もたれや気持ちの悪さを感じやすくなります。
平日と休日で起床時間が大幅にずれると、体内リズムが乱れて時差ぼけのような状態になります。これを「ソーシャル・ジェットラグ」(社会的時差ぼけ)」と呼び、睡眠に関連した問題を引き起こす大きな要因と考えられています。
ソーシャル・ジェットラグが一度発生すると、体内リズムが元に戻るまでには時間がかかります。体内リズムの乱れによって吐き気や頭痛といった症状が引き起こされることも珍しくありません。
疲れやすい、体がだるい、慢性的な疲労感など、低血圧の症状は様々です。
低血圧の中でも「起立性低血圧」の場合は、急に姿勢を変えることで吐き気やめまいが起こり、ひどい場合には失神する場合も。また、横たわっている時間が長いと、起立性低血圧の増悪につながることが分かっています(※)。
起立性調節障害(OD)は、自律神経の「交感神経」と「副交感神経」のバランスが崩れることで朝スムーズに目覚めることが困難になり、吐き気や頭痛、めまい、頭痛、腹痛など様々な症状をきたす病気です。
体の成長やホルモンが大きく変動する思春期前後の子どもに多く見られ、特に女子の発症率が高くなっています。
※:河野律子, et al. "起立性低血圧." 昭和医学会雑誌 71.6 (2011): 523-529.
寝すぎて気持ちが悪い時に避けた方が良い食品や、胃の不快感を和らげる方法をご紹介します。
避けた方が良い食品
胃の不快感を和らげる方法
気持ち悪くなる以外にも、寝すぎた時に発生する症状のひとつが頭痛で、その中でも多いとされるのが片頭痛です。
片頭痛は女性患者が大半を占めていて、その人数は男性の約3倍ともいわれています。
片頭痛の特徴は、ズキズキとした拍動性の激しい痛み。階段の昇り降りなど軽度の運動で悪化することが多く、痛みが数日間にわたって続くことも少なくありません。頭の痛みとともに表れる症状には、吐き気や嘔吐、めまい、光・音への過敏反応などがあります(※1)。
片頭痛が起こる理由の一つとして、血管内へのセロトニン放出による一時的な血管収縮と、その後のセロトニン減少による反動的な血管の拡張が原因であると長年考えられてきました。しかし、現在では三叉神経が何らかの刺激を受けて起こる三叉神経血管説が一般的になってきています(※2)。
睡眠と頭痛に関連する分子として注目されているのが「オレキシン」という脳内の神経伝達物質です。オレキシンは食欲や睡眠、エネルギー産生などの制御に関わる重要な物質であり、オレキシンの機能障害はナルコレプシーなどの過眠症を引き起こし、機能亢進は不眠症などに結びつくと考えられています。
ある調査によると、過眠症の代表的な疾患であるナルコレプシーと特発性過眠症の患者では、頭痛の経験頻度が健常対照者と比較して優位に高いことが分かりました。オレキシンは頭痛の発症にも関係していて、オレキシンの分泌量低下が片頭痛発生のトリガーとなり、発作を惹起しやすくなっている可能性が指摘されています(※3)。
ほかに片頭痛の原因として挙げられるのが、睡眠-覚醒リズムや睡眠の深さを表す「睡眠ステージ」などの生体リズムの変化や、過睡眠・睡眠不足、不規則な睡眠時間などです。不規則な睡眠時間によって、頭痛が悪化する可能性が上昇するとされています(※4)。
平日の睡眠不足を補うために、休日は寝だめをする人も多いのではないでしょうか?しかし、平日と休日で起床時間と睡眠時間に2時間以上の差がある場合も片頭痛が起こりやすいことが明らかになっています。
目覚めた時に頭が痛くならないようにするためには、平日の睡眠不足や休日の睡眠過多を避けて、生活リズムを一定にすることが大切なのです(※5)。
※1,2:端詰勝敬, and 都田淳. "頭痛." 心身医学 56.8 (2016): 833-838.
※3:竹島多賀夫. "片頭痛と睡眠." 神経治療学 39.4 (2022): 564-568.
※4,5:清水俊彦. "慢性頭痛への無理解が引き起こす種々の悲嘆と脳過敏症候群." グリーフケア= Grief care 5 (2016): 23-39.
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寝すぎによって起こる頭痛には、片頭痛以外に「緊張型頭痛」と呼ばれる頭痛があります。緊張型頭痛は筋肉の緊張によって引き起こされ、頭をキリキリと締め付けられるような痛みが特徴です。
寝すぎて頭痛がする時におすすめの対処法をご紹介します。
「片頭痛」と「緊張型頭痛」では、症状を和らげる方法がほぼ正反対であるため、頭痛がどちらのタイプなのかを見極めて対処することが重要です。
頭に脈打つような痛みを感じて、吐き気や実際に嘔吐してしまう場合は「片頭痛」の可能性が高いでしょう。
頭の周囲を輪っかで締め付けられるような痛みを感じる場合は「緊張型頭痛」かもしれません。緊張型頭痛の場合は、吐き気を感じても実際に嘔吐することはありません。緊張型頭痛の場合は、下記の対処法が有効です。
今回は、寝すぎる原因や、気持ちが悪くなったり頭が痛くなったりする理由などについてご紹介しました。
また、寝すぎは健康上のリスクを高めることにもつながります。ある調査で、8時間以上の長時間睡眠をとる人は、7~8時間睡眠の人に比べて心血管病の危険因子である高血圧やメタボリックシンドロームの有病率が高くなることが明らかになっています(※1)。
寝すぎを予防するためには、日頃から規則正しい生活を送り、体内時計を狂わせないようにすることが大切です。
体内時計を整える方法としておすすめなのが、朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることです。朝日を浴びると体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌が始まります。セロトニンが日中に十分な量分泌されると、夜間の睡眠の質が向上し、寝すぎを防止できるでしょう。
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睡眠の質を高めるためには、カフェインの摂取もできるだけ控えたいところ。カフェインの摂取量が1日400㎎(ドリップコーヒーでコーヒーカップ4杯分程度)を超えると、夜に眠りにくくなるとされています(※2)。
睡眠の質を高める生活習慣や食生活を実践して、寝すぎによる吐き気や頭痛、その他の健康上のリスクを予防しましょう。